「イヤイヤ期」と並んで多くの人が悩みを抱える「第二次反抗期」
モンテッソーリ教育では、子どもは「自立・自律」に向かって日々成長しており、その期間は24年間と言われています。そして、その成長を上の表のように捉えていて、赤い期間は成長のエネルギーが強く、青の期間は比較的穏やかとされています。赤い期間の中でも最もエネルギーが強いとされるのは、イヤイヤ期の頃の3歳と思春期真っ只中の15歳頃(個人差があります)。
どの子どもにもこの先訪れる15歳の第二次反抗期に向けて、親子間で今からやっておくべきことをモンテッソーリ教師のあきえ先生に伺いました。
思春期ってどんな時期?
10代になると第二次性徴が始まり、性ホルモンの分泌が活発化して、男児はひげが生えたり声が低くなったりし、女児は身体が丸みをおびたり月経がはじまったりし、これが18歳頃まで続きます。
そして、人間が人間として得られる判断力や自制心を司るのが、脳の部位のひとつ、「前頭前野」であり、成熟には25年ほどかかると言われています。
「前頭前野」の反応をきちんと調整する部分を「扁桃体」と言います。「扁桃体」は性ホルモンの影響で活性化するため、うまくブレーキを利かせることができず、キレやすくなったり、イライラしたりするのです。そして、危険を冒してでもやってみたくなる、リスキーなことがワクワクするなどの報酬系を司っているところでもあるので、「だめ」と思っていることをしたくなることがあります。
さらに、成長ホルモンの分泌により、身体が重だるくなり、朝が起きられなかったり、夜寝られなかったりもします。そのため、思春期には「最近反抗的な態度をとる」とか「児童期の頃はできていたことができなくなった」と、感じる場面があるかもしれません。
親子の信頼関係をより強くする3つの習慣
思春期だからといって子どもの成長は大きく変わるものではなく、「自立・自律」に向けて発達していきます。
しかし、思春期の子どもは身体だけでなく、心も発達し、今までのペースよりも速いペースで自立したくて仕方がなくなる時期。それを自分自身でもうまくコントロールすることができず、アンバランスさが出て、不安定になりやすい時期です。
そんな時期を見据えて、今からできる3つの習慣についてお話をします。
習慣① 「そう思ったんだね」と受け止めながら話を聞く
簡単なようで難しくもある「話を聞く」ということ。この場合の「聞く」は、「Hear(聞く)」ではなく、意識的に聴く「Listen(聴く)」です。
年齢が上がれば上がるほど、どんなことでも話してくれるわけではないですよね。小さい頃は親にしか話せなかったことも、思春期になると、他の人にも話せるのに選んで親にはなしてくれていることもあるので、しっかり話を聞いてみてください。
その時に注意したいのは、否定はせずに寄り添うということ。親に話をしたことがいい体験として終われるよう意識することをおすすめします。
- 「〇〇ちゃんが△△ちゃんのことを無視してて、まじでありえない! ムカつく!」
- 「算数が難しくて全然わからないからやりたくない! もう学校なって行きたくない」
↓
- 「●●ちゃんはそう思ったんだね。どうすればいいんだろう?」
このようにネガティブな内容のことを話してきたとしても、「そんなこと言うんじゃない」「それはだめ」などと否定せずに、まずは寄り添ってあげた上で、一緒に考えるのがいいですね。
- 「お兄ちゃんなんて大嫌い! いなくなればいいのに!」
↓
- 「あなたはそう思ったのね。お兄ちゃんはあなたにアドバイスをしようと思って言ったんじゃないかなとお母さんは思うんだけど違うかな?」
- 「あなたはそう思ったのね。でも、その言い方はお母さんとあなたの関係だからいいけど、他の人に言うのはよくないよ」
このように極端なことを言っているとしたら、まずは認めた上で、「言う場所を選ぶこと」について話をするようにしましょう。
習慣② 「がんばっているね」「ありがとうね」と声をかけ、子どもを認める
思春期の子どもは一時的に自己肯定感が低くなり、「Who am I?(私は誰なんだ?)」という感情が強くなる傾向にあります。そのため、当たり前のことや小さなことをひとつずつ認めてあげるようにしましょう。
- 「学校に休まずに行っているのはいいことだね」
- 「サッカー、毎日がんばってるね!」
- 「この間、●●(妹)の相談を聞いてあげたんだって? ありがとうね」
自分がまわりからどう思われているかとても気になり、がんばらないと自分のことを認めることができない時期でもあります。ちょっとしたことで「認める」ということを意識してあげると、子どもの自己肯定感がアップします。
習慣③「どう思う?」を意識して 対話をする
自分でできるように手伝うのがモンテッソーリ教育ですが、児童期になると答えを教えるのではなく、自分で考えることを手伝います。
そして、思春期になると、一緒に考えられるように手伝ってほしいと子どもは願うようになります。
そのため、何でも親が決めてただそれに従わせるのではなく、親子で話し合いながら一緒に答えを導き出していくような対話をしてみるのがおすすめです。
- 親「スマホの使い方について、●●くんはどう思う?」
- 息子「好きな時間に好きな場所で使いたい」
- 親「そうなのね。でも、お母さんは家の中ではリビングだけ、夜は20時までにして欲しいんだけど、どう思う?」
- 息子「20時は早すぎる。21時に友達から連絡が来たらどうすればいい?」
- 親「そうね、そういうこともあるかもしれないね。じゃあ、平日は20時、週末は21時にするのはどう?」
このように、お互いの意見を出し合って、なんでそう思うのかを聞いたり、こちらの気持ちを話したり、積極的な対話をすることがおすすめです。
相手が子どもだからといって、一方的に「こうしなさい」と言うのではなく、パートナーや友達と話し合う時のように、建設的な話し合いができるといいですね。
いつかは来る思春期のために今から始めよう!
あきえ先生の言う「3つの習慣」は、当たり前のようなことですが、意外とできていないことが多いですよね。今は乳幼児期や児童期のご家庭では、リアルタイムのことではないと思いがちですが、この3つの習慣はいつから始めてもOK! ぜひ、これを機に始めてみてはいかがですか?
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記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
あきえ先生主宰オンラインスクール「Montessori Parents」
取材/本間綾