1回目の今回は「声かけの前に確認したい5つのこと」をお伝えします。
声かけだけを見直せばいいわけではない
「ついキツイい口調になる」「子どもが言うことを聞かない」など、声かけについてのお悩みをいただくことはよくあります。声かけを変換するのももちろん大切なことなんですが、私から大人のみなさんに聞かせていただきたい5つの質問があります。
1.「大人が上、子どもが下」と思っていませんか?
大人が子どもを育ててあげているという支配関係では決してなく、子どもも人格を持った一人の人間です。だからこそ、対等に見るというまなざしが大切。どの子どももそれぞれのペースで子どもらしく自らを発達させています。そんな子どもの育ちを助ける時に大切なのが子どもを尊重すること。尊重してもらった経験は、子どもの自尊感情や自己肯定感などの目には見えない力になり、成長を大きく後押しするのです。
2.「うちの子はこうだから」と決めつけていませんか?
子どもは今まさに「自分」を創り、周りの人からの言葉やかかわりで自己イメージを形成中。そんな時だからこそ、バイアスを持たずに常に新しい目を向けてあげたいですね。例えば、落ち着きがない様子が見えた時も「今は落ち着きがない行動が多いかもしれない」と判断を曖昧かつ保留にするのがおすすめです。いつも新しい目で子どもを見て、温かくポジティブなまなざしと言葉をかけたいですね。
3.「自分のことは後回し」にしていませんか?
子ども優先で、自分をいたわることを忘れてしまいがち。育ちをより良く助ける前提ですが、大人が「自分」を満たすことに後ろめたさを感じなくてもいいのです。大人が満たされていて幸せだと、それは必ず子どもに伝わり、子どもの心も満たされます。子どもの年齢が低いうちは特に慢性的な寝不足が続くことも多く、命を維持することにエネルギーが使われ、感情のコントロールに使うエネルギーが足りなくなります。結果、怒鳴ってしまうなどで自己嫌悪に陥ることもあります。
4.「一人の時間なんてない!」と思っていませんか?
親になると、「母」「父」というアイデンティティが自分の大半をしめ、「自分」というアイデンティティと向き合う時間が減ります。しかし、「自分」を満たすことで心に「余白」が生まれるからこそ、自分を大切にする時間は必要なんです。大人が自分を大切にしたり、自分自身のご機嫌取りをしたりする姿を見ることで、子どもは「自分のことを大切に」と生きるために必要なスキルを吸収します。それが目には見えない「生きる力」の一部になります。
5.イライラしちゃダメ!と思っていませんか?
イライラする、余裕がないと感じた時、大切なのは「気づくこと」。自分自身のイライラを俯瞰で見ることです。そのためには、自分なりのバロメーターがあると気づきやすくなります。例えば私の場合「私はやっているのに」などと「のに」が湧いた時が要注意。そんな時は、自分の好きなことで心をいつもより満たし、余裕を作るようにしています。うまくいかない時もありますが、私たち大人もトライ&エラーを繰り返して、子どもと一緒に成長していきましょう。
まずは自分を満たして子どもに向き合いましょう
「子どものため」と思うが故、自分自身を追い込んでしまい、余計に余裕がなくなってしまうなんてことがありますよね。自分をいたわる時間を持つことは、子どものためにもなることなので、後ろめたさを感じることなく、自分自身の機嫌取りをしていきましょう。そして、心に余裕を持って子どもと向き合い、声かけをしていくのがおすすめです。次では、具体的な声かけについてお話していきますね。
今注目の集まるモンテッソーリ教育の声かけ変換本。朝・昼・夜それぞれのシチュエーションごとにイラストを交え、具体的な声かけ例を分かりやすく紹介しています。この本で学んだことをアウトプットするワークブックのページにも注目。
記事監修
モンテッソーリ教師あきえ
幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。オンラインコミュニティ“Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。
取材・構成/本間 綾