「対岸の火事ではない!」中東紛争の勃発から1年。今後の行方次第で、日本の私たちの生活におよぶ不都合とは【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、勃発から1年が経過した中東の紛争について学びます。

自衛を理由に、パレスチナを攻撃し続けるイスラエル

2024年10月7日で中東紛争が激化してから1年となりました。2023年10月7日、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム主義組織ハマスが、イスラエルへ奇襲攻撃を仕掛けたことがきっかけで、双方の衝突がエスカレートしていきました。

しかし、両者の軍事力の差は歴然としており、イスラエルはハマス殲滅(せんめつ)を目的とした強力な軍事力を行使し、ガザ地区では罪のない市民が次々に巻き込まれ、この1年でパレスチナ側の死者数は4万人を超えています。

当然、アラブ諸国を中心に、国際社会ではイスラエルを非難する声が広がっていますが、米国はイスラエル支持の姿勢を崩さず、それをよいことに、イスラエルはあくまでも自衛だとして攻撃の手を緩める気配を一切見せません。

長年イスラエルに占領されてきたパレスチナ

イランがイスラエルを直接攻撃。紛争の影響は中東全体に

イスラエル・パレスチナ間の紛争は、ハマスとの共闘を宣言するレバノンやイエメン、シリアやイラクに点在する親イラン武装勢力が、反イスラエル闘争をエスカレートさせて以降、レバノンのヒズボラがイスラエル北部を攻撃し、イエメンのフーシ派がイスラエル領内にドローンやミサイルを発射したりすることで、中東全体に影響が拡大するようになりました。

4月1日にはシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館領事部の建物にイスラエルが発射したミサイルが着弾。イランは、革命防衛隊の司令官や軍事顧問ら13人が死亡したことへの報復として、初のイスラエルへの直接攻撃に踏み切り、ドローンや巡航ミサイルなど300発あまりをイスラエルに向けて発射しました。

しかし、それでもイスラエルはイランへの強硬姿勢を崩さず、イスラエルは7月30日、レバノンの首都ベイルート南郊を空爆してヒズボラの幹部フアド・シュルク氏を殺害したことを発表。その翌日にはイランの首都テヘランを訪問していたハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が殺害され、イスラエルの関与が強く指摘されています。

そして、イスラエルは9月28日、レバノンにあるヒズボラの施設などに80発あまりの爆弾を投下し、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師を殺害したと発表。その後、イランは再びイスラエルへの直接攻撃に踏み切りました。

中東の石油資源に頼る日本にとって、対岸の火事ではない

現在のところ、イスラエルがイランとの間で紛争を平和的に解決する姿勢を示すことはないと考えられ、両国の全面戦争のリスクが懸念されています。

仮にイスラエルがイランの石油施設を攻撃し、それによって中東の安全保障環境がさらに悪化すれば、ペルシャ湾から日本に向けて航行する石油タンカーの安全が阻害され、石油の値段が高騰し、我々の日常生活にも大きな影響が出てくる可能性があります。日本は石油の9割を中東に依存しており、この問題は我々にとって決して対岸の火事ではないのです。

この記事のポイント

①2023年10月。ガザ地区を実行支配するイスラム主義組織ハマスが、イスラエルへ奇襲攻撃を仕掛けたことがきっかけで衝突が始まった

②イランがイスラエルへの直接攻撃に踏み切るなど、中東全体に影響が拡大し続けている

③イスラエルがイランの石油施設を攻撃するようなことがあれば、石油価格は高騰し、日本も大きな影響が出る

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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