イスラエルとパレスチナの戦闘が続きパレスチナ市民に大きな犠牲が出ている
昨年10月7日以降、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実行支配するイスラム主義組織ハマスなどとの戦闘が続いていますが、イスラエル側の攻撃により、パレスチナ側の死亡者数は4万人に上っています。イスラエルによる攻撃で多くの罪のないパレスチナ市民が犠牲になっていることに、同じアラブ系であるイスラム諸国の間では反イスラエル感情が強まり、ハマスを支援してきたイラン、イランから支援を受けるレバノンやイエメン、シリアやイラクなどに点在する武装勢力は反イスラエル闘争をエスカレートさせ、戦況が拡大しています。
戦闘が激化し、各所で主要人物が殺害されている
イスラエルとレバノン南部を拠点とする親イランの武装勢力ヒズボラとの戦闘が激化するなか、イスラエルは4月30日、レバノンの首都ベイルート南郊を空爆し、ヒズボラの最高幹部を殺害しました。この攻撃について、イスラエルは7月27日にイスラエルが占領するゴラン高原で発生したロケット砲攻撃で、子どもを中心に12人が殺害されたことへの報復と発表し、この攻撃は30日に死亡した最高幹部が指揮したと説明しています。
また、イスラム組織ハマスは7月31日、イランのペゼシュキアン新大統領の就任式に出席するためテヘランを訪問していたハマス最高幹部イスマイル・ハニヤ氏がイスラエルによる攻撃で殺害されたと発表しました。ハニヤ氏はテヘラン市内にある退役軍人が関連する建物に滞在し、深夜にミサイルによって攻撃を受けたとされます。ハマス最高幹部が殺害されたことで、今後はイラン側が報復措置を実行し、それに対してイスラエルがさらなる攻撃に出るなどし、紛争が中東全体を覆うようになることが懸念されますが、私たちはこれについて理解しておくべき点があります。
奇襲攻撃によってイスラエル側に多数の犠牲者が出たことで、自衛の権利を発動
今日中東で起こっている紛争では、イスラエルによる容赦のない攻撃で犠牲者が4万人に上り、それによってイスラエルへの風当たりが国際社会で強まっていますが、その発端はハマス側が10月7日にイスラエル領内に向けて奇襲攻撃を行い、イスラエル側に多数の犠牲者が出たからです。これによってイスラエルは国家の安全が脅かされたとの判断で攻撃を開始することになったのです。
ネタニヤフ政権は当初から自衛の権利を主張していますが、これまでの行為は過剰防衛であることは否定できません。
しかし、10月7日のハマス側による攻撃がなければ、これまでのような悲惨な紛争は回避することができたでしょう。戦禍を見るとどうしてもイスラエルへの批判的な声が強まるのは自然な流れですが、イスラエル側の視点に立って物事を考え、紛争を客観的な視点に立って考える、理解することも重要になります。
この記事のPOINT
①イスラエルによる攻撃で多くの罪のないパレスチナ市民が犠牲になっていることに、同じアラブ系であるイスラム諸国の間では反イスラエル感情が強まっている
②イスラエルの攻撃によりパレスチナに4万人の犠牲者が出ているが、契機は10月7日のハマス側からの奇襲攻撃で、イスラエル側に多数の死者が出たことである。
③現状は、イスラエルへの批判的な声が多いが、客観的な視点で考える必要がある。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。