「リーマンショック」を分かりやすく解説
リーマンショックとは、いったいどのような出来事なのでしょうか? なぜリーマンショックが起こったのか、きっかけや原因について探っていきましょう。
きっかけは「リーマン・ブラザーズ」の経営破綻
2008年9月15日、アメリカの投資銀行である「リーマン・ブラザーズ」が経営破綻しています。
リーマン・ブラザーズは、当時のレートで、約64兆円(負債総額6,130億ドル)という巨額な負債を出しました。アメリカでは大手の投資銀行であったものの、巨額の負債によって経営が困難になったのです。
リーマン・ブラザーズの経営破綻が金融危機の大きなきっかけとなったため、その後に起きた経済的な問題を総称して、「リーマンショック」と呼んでいます。

「サブプライムローン」が原因といわれる
リーマン・ブラザーズが倒産するきっかけとなったのは、サブプライムローンの破綻といわれています。
「サブプライムローン」とは、アメリカの低所得者向け住宅ローンです。信用力が低い低所得者であってもローンが組めるサービスは、急速に普及していきました。
しかし、アメリカの景気が悪くなり、土地の価格が上がらなくなると、サブプライムローンに問題が起こり始めます。
金利を上げる政策が行われ、低所得者の多くがローンを支払えなくなったためです。
リーマン・ブラザーズは、信用力が低い代わりに金利が高いサブプライムローンを組み込んだ投資商品を大量に証券化しており、運用失敗のために負債がかさんでいったといわれています。
リーマン・ブラザーズの倒産後に起きたこと

リーマン・ブラザーズの経営破綻の後、何が起こったのでしょうか? 金融危機の全容を知るためにも、経営破綻の後に起きた出来事を知る必要があります。
金融機関への不信
リーマン・ブラザーズが経営破綻するまで、大手金融機関は信頼性が高く、何かあったとしても倒産しないのではないかと考えられていました。
しかし、大きな負債の発覚後、政府の救済もなく経営破綻に至ったため、金融機関に対する信頼は揺らいでいきます。
他にも経営状態が悪く倒産間近の金融機関があるのではないかと、金融機関同士が疑い始めたことにより、取引の停止や遅れが発生し始めたのです。
金融機関同士の不信感は投資家・企業にも伝染し、株の売却や取引への参入を取りやめるなど、影響が広がっていきました。
世界的な金融危機に発展
リーマン・ブラザーズの経営破綻は、世界的な金融危機のきっかけとなりました。
ヨーロッパの例では、イギリス・ドイツ・フランス・スイスなどの大手銀行が経営不振に陥っています。ヨーロッパ各国の銀行もサブプライムローン関連の証券に多額の投資をしており、リーマン・ブラザーズのように影響を受けてしまったのです。
さらに、2009年にギリシャが債務不履行危機に陥ったこともあり、ヨーロッパ全体に経済の不安が広がっていきます。
また、アメリカやヨーロッパの投資家が、リスクの高い投資商品に不安を感じたことで、金融危機は新興国にも広がっていきました。
出典:世界経済の潮流 2008年 II|内閣府 政策統括官室(経済財政分析担当)
:第4章 欧州の金融危機|公益財団法人 日本証券経済研究所
リーマンショックによる日本への影響

世界的な金融危機は、日本にも大きな影響を及ぼしています。リーマンショックによって、日本で何が起こったのか、確認しましょう。
株価の暴落
リーマン・ブラザーズの経営破綻自体はアメリカで起きた問題ですが、日本でも株価が暴落しています。
日経平均株価は、リーマンショックが起きる前の2008年6月に1万4,000円を超える株価を記録していましたが、2009年3月には7,000円ほどに下がり、ほぼ半分ほどに下落しました。
外国人投資家が日本の株を売却したことや、アメリカの経済状況が悪化したことで、日本企業への影響を危惧した投資家が多かったことも影響していると考えられます。
企業の倒産や経営不振が増加
日本では、アメリカと取引をしている企業だけでなく、リーマン・ブラザーズに関連する企業もリーマンショックの影響を受けています。
例えば、リーマン・ブラザーズの日本法人は、アメリカの本社が経営破綻したことで、同時期に倒産しました。
その後、アメリカの経済状況が悪化したことに伴い、企業の倒産や経営不振が増えていきます。2008年の上場企業の倒産は、戦後最大の33件を記録しました。
経営不振による派遣切りが増加
リーマンショックによって、日本でも製造業を中心に業績が悪化しました。日本の製造業は、海外への輸出で利益を得ていた企業が多く、世界的な金融危機によって海外の需要が減ってしまったことが主な要因です。
業績が悪化し、経営不振に陥った企業は、従業員の解雇を考え始めます。その中で、契約が打ち切られることが多かったのが、派遣社員・契約社員といった有期雇用の労働者です。
中でも派遣社員は、派遣先企業が契約を途中で打ち切ったとしても違法性がなく、多くの派遣社員が契約を打ち切られる事態が発生しました。派遣社員が契約を打ち切られる現象は「派遣切り」と呼ばれ、社会問題にも発展しています。
出典:第1節 世界的な金融危機と国内金融 – 内閣府
:企業倒産で振り返る「平成」30年(前編)~バブル崩壊、金融危機、リーマン・ショックに揺れた日本経済~ | 東京商工リサーチ
リーマンショック以外の金融危機
リーマンショック以外にも、経済や金融市場に大きな影響を与えた社会的事象があります。これまでにどのような金融危機・経済危機があったのか、主な出来事を見ていきましょう。

世界恐慌
世界恐慌は、1929年に起きた世界的な金融危機です。世界恐慌はリーマンショックと同じように、アメリカでの出来事がきっかけとなって発生しています。
1929年10月24日、ニューヨーク証券取引市場で、株価の大暴落が起きました。経済への不安や、それまでに株価が上がりすぎていたことが要因といわれています。
その後、10月28日、10月29日にも株価は下がっていき、株価の暴落を不安視した市民は、預金を引き出すため一斉に銀行へ押し寄せました。多くの市民が銀行から預金を引き出したことで銀行が倒産し、銀行に資金を借りられなくなった企業にも影響が及び、労働者の解雇へとつながっていきます。
アメリカで起きた問題は世界へと発展し、日本でも輸出の減少によって経済不安が広がっていきました。
チャイナショック
「チャイナショック」は、中国がきっかけとなって世界の金融市場に影響を及ぼす現象のことです。近年では、2015年8月に起きた世界的な株安が「チャイナショック」と呼ばれています。
2015年8月に起きた株価の下落は、中国が通貨の価値を引き下げたことが主な要因です。自国の通貨の価値を引き下げることは「通貨切り下げ」と呼ばれています。
当時の日経平均株価は2015年6月に2万円を超えていましたが、中国の通貨切り下げが起きた2015年8月以降に株価が下落し、2016年2月には1万5,000円を下回っています。
出典:(2015年8月)【マンスリー】 | 三井住友DSアセットマネジメント
コロナショック
2020年には、新型コロナウイルスの影響によって、金融市場に大きな混乱が発生しています。株価が下がり始めたのは、2020年2月下旬のことです。
2020年2月中旬、日経平均株価は2万3,000円を超えていましたが、2月下旬から3月にかけて株が売られたことによって、3月中旬には1万7,000円を下回っています。
その後、株価は回復しているものの、新型コロナウイルスは世界に大きな影響を与え、長期間市民の行動や企業活動に制限が設けられました。
出典:コロナショック 株価急落に個人投資家ら悲鳴 – 日本経済新聞
リーマンショックの原因や影響を理解しよう
リーマンショックは、2008年にリーマン・ブラザーズの経営破綻がきっかけとなって起こった金融危機です。その影響は世界に広がり、日本でも株価の暴落や企業の倒産など、さまざまな問題が発生しました。
世界では、リーマンショック以外にも、さまざまな経済危機・金融危機が発生しています。リーマンショックと併せて、把握しておきましょう。最近では、新型コロナウイルスの影響によって発生した、コロナショックがよく知られています。
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構成・文/HugKum編集部