パパはプロレスラー!636gの低体重で生まれた娘を愛し、育児参加するKUDO選手に聞いた

 

隣の芝生は青い……。パパの、育児参加はどれくらいなのだろう?

子育てを始めてみると、おむつ替えから授乳、寝かしつけと、子どもから目を離せず忙しく時間が過ぎていきます。簡単な家事や、子どもの世話を夫がやってくれたらいいのに……。ついママたちの不満も募ってしまいます。

そんな中、普通のサラリーマンとは違う変わった職業のパパは、どのように育児参加をしているのでしょうか。勤務時間に縛られない職業の場合は、子どもと一緒にいられる時間が通常の会社員よりも長いかもしれません。

今回は、DDTプロレスリングという人気プロレス団体に所属しているレスラーのKUDOさんが、そんな疑問に答えてくれました!

DDTプロレスリング所属プロレスラーのKUDOさん

取材場所となったのは、新宿歌舞伎町にある居酒屋「エビスコ酒場」。ここはDDTプロレスリングが経営している飲食店。KUDOさんは、レスラーのほか、DDTプロレスリングの飲食業部門をまとめる株式会社DDTフーズ代表取締役社長でもあります。普段は、エビスコ酒場の店長として、店でも働いています。

Tシャツ姿のラフな服装で現れたKUDOさん。半袖から出ている腕は筋骨隆々。まさにレスラーという風貌です。一般人は想像ができないレスラーの生活ってどういう感じなのでしょうか。現在、3歳になる女の子を子育て中のKUDOさん。普段はどのように育児に参加されているか、お話をお聞きしました。

レスラーってどんな職業ですか?

試合中のKUDOさん

普段は、プロレスをしながら店をやっています。レスラーとしては、今年の4月から少し休業しています。

子どもの頃からプロレスが好きでした。でも、自分がレスラーになれるとは思っていなかったんですね。大学に入ってからキックボクシングをやっていたんですが、レスラーになれたのは、うちの高木さん(注:高木三四郎・DDTプロレスリング代表取締役社長)のおかげです。

みなさん、レスラーってどういう生活をしているのか疑問に持っているかもしれないですね。レスラーや団体にもよりますが、基本は週末に試合が多いです。だいたい月に8試合くらい。平日に試合がある場合も入れると、毎週試合している感じですね。

レスラーは常に鍛えているイメージがあるかもしれないですが、これも個人によります。 僕は、トレーニングしにジムに行くのが日課です

レスラーだけではなく、飲食店で働いているのは、プロレスだけでは食べていけないからなんです。レスラーって、一生できるスポーツではないんです。高木社長が、レスラーの将来のことを考えて店を出そうと言ってくれたのがきっかけです。2009年にオープンした「エビスコ酒場」は、オープン時から働いているので、ちょうど10年目になります。飲食部門のDDTフーズの社長になったのも、その流れです。

飲食店で働くようになっても、レスラーとしては変わらないです。

636グラムで生まれた娘

家族写真(KUDOさん提供)。

結婚したのは10年前くらい。子どもが生まれたタイミングは“待っていた”という感じです。ずっと子供が欲しくて、なかなかできなくて不妊治療してできました。

娘の出生時の体重は636グラム。超低出生体重児(出生時の体重が1000グラム未満)として生まれてきました。娘は、出産予定日が5月だったのに1月に生まれたんです。書類上の誕生日は1月ですが、成長を見る時は、お腹にいるはずだった期間も加えた5月生まれと同じなんです。3歳くらいまでは、修正した誕生月(修正月齢)の方で、成長をみるように医師から言われていました。出産時は、いろいろなリスクを言われていたのですが、今は、もう普通に過ごしています。

小さな足の指(KUDOさん提供)
入院期間が長かったため、抱っこできた時が嬉しかったそう。(KUDOさん提供)。

妻は妊娠中も、地元の病院から大きい病院に転院したり、入退院を繰り返していました。妊娠がわかった時は、僕も試合中に膝をけがしてしまい、一年くらい欠場していました。家のことも自分でやらなければならないし、ちょうど良いタイミングでの妊娠だったのかなって思いました。

欠場中の間は、病院に毎日行っていました。妻は最終的には絶対安静になっていました。心拍が弱まって早く出産することになったみたいで、全然予期していたことではなかったんです。膝のリハビリのトレーニング中に何度も電話がかかってきて、急いで病院に行ったら生まれていました。

出産後は、娘はNICU(新生児集中治療室)に入院していました。父になる不安よりも前に、子どもが将来、耳が聞こえないかもというリスクなどがあったため、そちらの心配の方が上でした。マイナスからスタートしているので、毎日、(それがクリアされると)いいことしか感じなかったですね。入院中は、子どもに会いたくて毎日、病院に通っていました。

動かないパパをイクメンにするにはどうすればいい?

娘を抱っこするKUDOさん。(KUDOさん提供)

イクメンのパパの話を聞くと凄いって感心しています。

幼稚園に通うようになって、娘の三つ編みを普通にやるパパとかいるのを知って驚きました。僕はできないんで……。僕は割り切って奥さんのサポートに回っています。

3歳で幼稚園に通うようになるまで、自宅育児は大変でした。僕は午前中に家にいられることも多かったので、子供と過ごしたり、妻のサポートができたので良かったと思っています。

うちの場合は、家事の分担は自然。洗濯とか洗い物とか自分でやって、料理ももちろんできるだけやりますし、掃除は妻がしたり、なんとなく自然にやっていますね。

もちろん、レスラーなので、育児よりもジムに行かなきゃいけないとか、男性同士の付き合いを優先して飲み会に行っちゃったりとかあるんですけど(笑)DDTの団体自体では、同じくらいの子どもがいるレスラーと、子どもの話はしますね。

レスラー仲間で大家さん(注:大家健・KUDOさんと同じDDTプロレスリング系列のガンバレ☆プロレスというプロレス団体の代表兼レスラー、エビスコ酒場の店員)というのがいるのですが、家のことを全然やっていないんですよ。子どもと遊ぶくらいしかやっていないですね。誘われたらすぐ飲みに行っちゃうし、遊びに行っちゃう。彼の奥さんが「もう無理だ」って言って、実家に帰っちゃったこともあるらしいんです。

こういう男性が動くようになるには、パパに子どもを預けちゃえばいいんじゃないんですか(笑)。旦那さんに子どもを預けて、旅行とかに行っちゃうとか。

育児の大変さを男性にわからせるためには、本当、子どもをパパに預けちゃうのがいいと思いますね。パパもママがいないとなんとかするしかないんで。

パパの職業はレスラーという葛藤

娘修正1歳の時(KUDOさん提供)

娘はお父さんがプロレスラーという職業なのは知っています。レスラーという職業を理解してきたのは、最近だと思います。

僕は、プロレスラーはずっとできる仕事ではないので、娘を試合に連れて行くようにしています。生で試合を見ると、音が怖いという子供もいるようですが、うちの子は全然怖がりませんでしたね。

今年から幼稚園に通うようになって、父母会に行って自己紹介をすると「えー」って驚かれたりはします。でもレスラーだからって、怖がられたりとかはないですね(笑)

幼稚園の送迎にも行くようにしているので、まわりでは僕がレスラーだということを知っている人もいます。なかには試合を見に来てくれたママさんもいました。

試合中のKUDOさん

「子供はレスラーにするんですか? 」という質問を受けることもあります。でもレスラーにはなってもらいたくないですね。子どもに、スパルタな練習をさせるような運動をさせたいという気持ちも、全然ないんです。生まれた時が636gという超低出産だったので、元気で育ってくれれば充分という気持ちが強いです。

逆に自分が親になってみてわかったのですが、親の偉大さを感じました。自分の親は僕のレスラーという仕事を許していないですからね。なんとなく、なし崩し的に(レスラーを)やっているので。(レスラーという職業を許してくれた)親への感謝はありますね。

今、娘がなにかした時に「レスラーの子どもだから」って言われてしまうのでないかという事を、ちょっと気にしています。子どもって、言語で意思表現がまだうまくできない時は、お友達におもちゃを貸さないとか、いじわるをしちゃう時があるじゃないですか。

娘のそういう場面を見た時、「レスラーの子どもだから」って言われてしまうんじゃないかっていう心配はありますね。でも成長によって、それは徐々になくなっていくと思っています。「レスラーの子どもだから」っていうレッテルで悪い子に思われたくないので、いい子に育ってもらいたいです。

娘は、健康でいてくれたらそれだけで十分です。

抱っこスクワットでトレーニング

KUDOさん提供。

子どもが生まれるまで、赤ちゃんを抱っこしたこともなかったですし、元々子どもが好きだということもなかったんです。でも新生児の頃も、抱っことか全然大丈夫でしたね。子どもが入院をして、触れない期間が長かったので、触れたのが嬉しかったです。

興行などで家を離れることが多かったので、僕がいる時は僕が娘とお風呂に入っています。子どもと入るとお風呂で遊んでしまって、なかなか出てくれないので大変ですが……。二人の子どもなので、育児はお互いがやれる方がやっていますね。

元々、僕は女の子と遊んだことがなかったので、女児との接し方ってよくわからなかったんです。男の子だと一緒に遊べるからいいなって思っていましたが、実際に生まれてみると、普通に娘と遊んでいます。

最近は、娘から物をねだられる感じですね(笑)。「一緒にコンビニ行こう」ってよく言われます。ほかには、お人形遊びを一緒にしたり、積み木を使ったり。子どもの遊びって終わりがないんですよね。ぶっちゃけ、普通に仕事をしている方が楽かもって思うときもあります。

娘が寝ない時は、娘を抱っこしてスクワットをすると寝てくれるんです。子ども抱っこスクワットよくやってました。子どもを抱っこするにしても、重いとか全部トレーニングになると思っています! そう思うだけで、苦じゃなくなるんですよ。普通のパパはトレーニングしないかもしれませんが(笑)。

イクメンという言葉に惑わされるな!

KUDOさん。

育児って大変だと思います。

僕は、妻のサポートしているだけなんで、育児のいいとこ取りなんです。本当に大変なのは妻なので、感謝していますね。丸一日子どもと一緒にいたら、気が狂いそうになったりもするじゃないですか。それを世の中のママたちは毎日やっているので、凄いと思います。

育児をしている時に、僕は完全に割り切っていて、「ママにはなれない」と自覚しています。徹底してサポートを頑張ろうって思っています。

育児中は大変なことが多いので、夫婦もすれ違いができてしまうと思うんです。世間でいうイクメンと比べられるのは嫌ですよね…(苦笑)。でも夫に多くを求めない。ママが大変なのは、みていてわかっていると思うので。僕自身は全然、イクメンだとは思っていないです。

世の中のイクメンという言葉に騙されるなって言いたいですね(笑)。たいていのパパは、育児に積極的ではない方が多いんじゃないでしょうか。本当、パパってよくわかっていないんですよ。僕も(奥さんから)説明されるんですよ、幼稚園の何々があるよって。でも全然覚えていないんですよ。パパに期待しすぎちゃダメですね。逆に、あまりイクメンではないパパでも、心の中では「ママが凄い」って思っているはずなので、大丈夫ですよ。

取材協力:DDTプロレスリング https://www.ddtpro.com/

KUDO(くどう)

DDTプロレスリング所属のプロレスラー。ブログでは、プロレスの話題のほか、娘との日常がつづられており、プロレスファン以外からも支持を得ている。DDTプロレスリングは7月15日(月)に東京・大田区総合体育館で興行予定。詳細は、DDTプロレスリング公式サイトまで。DDTグループの生中継&過去の試合はこちら。DDT UNIVERSE(月額900円で初月無料) https://www.ddtpro.com/

編集部おすすめ

関連記事