トランプ次期大統領の「ディール外交」とは? 日本に求められる交渉術のコツは「~~したほうがお得ですよ」【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は第2次トランプ政権で必要となる交渉術について解説します。

トランプ次期大統領とうまくやっていくには?

日本には各地に米軍基地がありますが、それが日本の平和と安全を担保しています。米国は日本にとって唯一の軍事同盟国であり、関係悪化は日本の安全保障にとって死活的な問題。日本としては誰が米国大統領であっても、安定した関係が求められます。

2025年1月、トランプ政権が再び発足しますが、トランプ次期大統領とうまくやっていくにはどういったことが日本には必要なのでしょうか。

バイデン大統領は人権や民主主義を重視していたが、トランプ氏は米国第一主義

ここで重要なのは、バイデン大統領と同じように接していては、トランプ次期大統領のもとでは良い日米関係は築けない可能性があるということです。

バイデン大統領は、人権や民主主義、法の支配や自由といった考え方を重視し、実際に中国・新疆ウイグル自治区における強制労働を人権侵害と非難。また、ロシアによるウクライナ侵攻によって民主主義や法の支配が脅かされているとし、ウクライナへの大規模な軍事支援を継続しています。これらは、バイデン大統領が理念を非常に大切にしていたからです。

しかし、トランプ次期大統領の考え方は大きく異なります。

トランプ次期大統領は人権や民主主義、法の支配や自由といった考え方には優先順位を置かず、米国第一主義のもと、外国の紛争には関与しない考え。米国の利益をいかに守り創出するか、米国の利益を相手から最大限引き出そうとするビジネス的な考えをしています。

「ディール外交」とも呼ばれますが、自分がこうしたのだからあなたも見返りに何かを提示しなさいという、損得勘定で動く性質があります。

理念よりも、米国にどんな利益があるかを伝えるのが得策

日本としては、「自由や民主主義を守ろう」「独裁的な動きには対峙しなければならない」といった話をトランプ次期大統領に対して出さないほうがいいでしょう。

「日本周辺の安全保障環境が厳しくなっている」と伝えても、「ではまずはあなたが率先してやればどうですか」と返ってくる可能性が高いので、理念的なことを全面に出すことは控えたほうが得策です。

日本に求められるのは、日米関係を維持・発展させることが。どれだけ米国の利益になるのかを提示することです。上述のとおり、トランプ次期大統領は米国の利益が圧倒的な優先事項ですので、米国の国益を確保するという観点から日米同盟が如何に重要か、トランプ的に言えば便利かを具体的に説明することが得策です。

例えば、今日、日本製鉄によるUSスチール買収が大きな話題になっていますが「日本企業が米国企業を買収すればこれだけ新たな雇用が米国で創出される」など、テクニカルかつ実利的に対応していくことが重要になります。

この記事のポイント

①人権や民主主義を重視するバイデン氏とは異なり、トランプ氏は米国の利益を優先する米国第一主義

②日本に求められるのは、米関係を維持、発展させることがどれだけ米国の利益になるのかを提示すること

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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