「産後ケア施設」とは? してもらえること、日帰り or 宿泊、料金など・・・主なサービス内容や運営スタイルの違いを解説

「産後ケア施設」とは、どのような施設を指すのでしょうか? 主な種類や運営スタイル、施設でできることなどを紹介します。産後ケアが必要とされている理由や、産後ケア施設を利用するメリット・注意点も把握しておきましょう。

産後ケア施設とは

出産後に利用できる「産後ケア施設」は、国や自治体の指針もあり増加してきています。まずは、産後ケア施設とは何なのか、必要とされる理由と併せて確認しましょう。

出産後の母子ケアを行う施設を指す

産後ケア施設は名前の通り、出産後のケアを行う施設です。出産後のケアとは、母体と新生児・乳児がともに快適に過ごせるよう、サポートすることを指します。

産後ケア施設には自治体運営のセンター・医療機関・民間会社などがあり、どの施設も母体と新生児・乳児のケアが目的です。

出産後の体力や新生児・乳児の世話に不安があるときや、周囲のサポートがない場合には産後ケア施設を利用することで負担を減らせるでしょう。

出典:世田谷区立産後ケアセンターについて|世田谷区立産後ケアセンター(公益社団法人日本助産師会運営委託)

産後ケアが必要とされる理由

産後ケアが必要とされる主な理由は、母体の回復促進や育児サポートのためです。

近年は親子のみが一緒に暮らす核家族化が進んでおり、夫婦の両親・義両親が遠方に住んでいることも少なくありません。出産直後の育児サポートができる家族が少なく、休養が難しい家庭もあります。

周囲のサポートが得られない場合は、産後ケアを積極的に利用することで母親の負担が減らせます。また、早期の仕事復帰を目指すケースや、体調の回復を優先したいなどさまざまな理由で産後ケアが必要とされているのです。

出典:産後ケアについて | 一般社団法人 日本産後ケア協会

産後ケア施設でできること

産後ケア施設では、さまざまなサービスが受けられます。何ができるのか、具体的な内容を確認しましょう。ただし、施設によって提供しているサービスは変わるため、自分が受けたいサービスがあるか確認しておくことが大切です。

母親の心身サポート

産後ケア施設では、母体の心身をサポートするためのサービスが受けられます。

産後の身体的な回復を促すため、育児・家事の一部をスタッフに任せて休養できるようなサービスも豊富です。子どもの一時預かりやランチ・ディナーの提供、ゆっくり休むための部屋とベッドなど、施設によってサービス内容は異なります。

また、育児の悩みを相談できるケースや、沐浴・授乳指導を行う施設もあり、育児に関する相談をしたいときにも活用できるでしょう。

新生児・乳児のケア

新生児や乳児のケアも、産後ケア施設で対応しています。一時預かり沐浴、スタッフがミルクを与えるなど、サービス内容は施設によってさまざまです。子どもを専門のスタッフに預けている間、母親はゆっくりと休養できます。

自治体の産後ケア施設は生後1年未満を想定しているところが多いですが、民間には子どもの年齢制限をしていないケースもあるため、事情によって使い分けが可能です。

発達の相談や、育児で気になる点を母親が相談できるサービスを行っている施設もあります。

産後ケア施設の種類

産後ケア施設には、自治体が関与しているものと民間が運営しているものがあります。それぞれどのような特徴があるのか、種類ごとに見ていきましょう。

自治体が関与する施設

産後ケア施設の多くは、自治体が関与しています。自治体運営の産後ケアセンターだけでなく、医療機関の空きベッドやホテルの空室を使用した形態などもあり、自治体によって運営スタイルはさまざまです。

中には、自治体と民間会社が連携して運営している施設もあります。

自治体は産後ケア事業を行っており、自治体が関与している施設や対象となるプランを設けている施設では利用料金の補助が受けられることが特徴です。

また、自治体が関与している施設やプランの場合、子どもの月齢や母親が産後ケアを必要としているかなど利用条件が設定されています。

出典:産後ケア事業|東京都北区

民間運営の施設・ホテル

民間会社や民間の医療機関でも、産後ケア施設が運営されています。料金やサポート内容は施設によってばらつきがあり、自治体の利用条件に該当しない人でも利用できることが特徴です。

きめ細かなサポートを実施するリゾート施設風の施設も多く、できる限りサービスを活用して休養したいと考える人に向いています。

ホテル内で運営しているパターンもあり、ホテルに宿泊しながら専門家の産後ケアを受けることも可能です。自治体の補助を受けられるかどうかは、施設によります。

出典:帝国ホテル大阪にて産後ケアホテル「Mamma Levata 大阪」をグランドオープン | ブリジアン株式会社のプレスリリース

産後ケア施設の運営スタイル

施設によって、運営スタイルには違いがあります。どのようなタイプがあるのか、主な種類を紹介します。産後ケア施設を利用するときは、運営スタイルの違いもチェックしておきましょう。

日帰りタイプ

産後ケア施設には、日帰りで利用できる施設があります。自治体の補助が利用できる場合、利用料金は3,000円程度が主流です。

日帰りタイプの施設では、部屋の貸し出しや子どもの一時預かり、新生児・乳児の沐浴などのケアに加えて、ランチの提供やマッサージを行うところもあります。

宿泊を伴わないため気軽に利用でき、料金も抑えられる点が魅力です。基本的には、日中の利用が想定されています。

出典:産後1日デイケア(日帰り型) – 東京都江東区 東峯サライ【公式】江東区木場駅徒歩2分 診療所併設型産前産後ケアセンター

宿泊タイプ

宿泊タイプの産後ケア施設は、日中だけでなく夜間の育児・家事の負担も軽減できます。夜間授乳のサポートや、夕食・朝食付きの施設もあり、じっくり体を休めたい人に適した施設です。

自治体の補助を利用できる場合、1泊3,000円〜1万円程度が主流です。補助がない場合は、専門のサービスが受けられる分、一般のホテルより高額に設定されているケースが多いでしょう。

自治体の施設と、民間のリゾート施設では提供されているサービス内容が異なることも多いため、料金やサービス内容を比較した上で利用する施設を検討することをおすすめします。

出典:産後ケア宿泊型事業 – 高槻市ホームページ

訪問タイプ

訪問タイプの産後ケアは、アウトリーチとも呼ばれます。自宅に専門家が訪問し、ケアを受けられる点が特徴です。

乳幼児を連れての外出が難しいケースでも、訪問タイプであれば無理なく産後ケアが受けられます。

サービス内容としては、産後の母体ケアに関する相談や、沐浴・授乳指導などが中心です。自治体の補助がある場合の利用料金は、1,000〜3,000円程度が主流となります。

出典:神戸市:訪問型産後ケア事業のご案内

産後ケア施設を利用するメリットと注意点

出産後の女性が産後ケア施設を利用する場合、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか?  産後ケアを受けるメリットと、利用の際の注意点をどちらも把握しておくと、産後の負担を軽減しやすくなります。

【メリット】母体が回復し負担が軽減される

出産直後は母体へのダメージもあり、体調が回復するまでに時間がかかります。新生児の世話にも慣れておらず、心身ともに疲れやすい時期です。自宅に育児を手伝ってくれる親族がいたとしても、専門家ではないため不安を感じることもあるでしょう。

産後ケア施設を利用すると、母体の回復のためにさまざまなサービスを受けられます。状況によっては子どもを預け、体調の回復に専念できるでしょう。

ゆっくり休養することで心身が休まり、体調の早期回復が期待できる点が産後ケア施設を利用するメリットです。

【注意点】料金や利用条件は施設によって異なる

産後ケア施設には、自治体が関与する施設と民間のみで運営されている施設があります。

自治体が関与する施設では、補助によって利用料金が大幅に安くなるのが特徴です。しかし、自治体や施設ごとに利用条件が設定され、条件を満たしていないと判断される場合は利用できません。

民間施設は利用条件が定められていないところも多く、柔軟に活用できる点が特徴です。しかし、補助が受けられないプランでは利用料金が高額になりやすく、料金面で利用できる施設が限られてきます。

出産後は慌ただしくなるため、妊娠中に施設の情報を集めておき予約を入れるなど、事前の準備もしておくほうがよいでしょう。

出典:【産後ケア事業】産後のお母さんを応援します | 世田谷区公式ホームページ

産後ケア施設の活用で育児がしやすくなる

産後ケア施設は、出産後の母子をサポートしてくれる施設です。利用によって、出産による母体のダメージ回復を促進し、育児をスムーズに進める狙いがあります。

母体の休養以外に、育児指導や相談などさまざまな面で母子の助けになってくれるでしょう。自治体の補助によって低料金で利用できる施設も多いため、出産前に調べておくと産後の体調・育児不安が解消できるはずです。

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構成・文/HugKum編集部

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