鳥取の郷土料理「いただき」を「きんぴらごぼう」からリメイクしてみた! チーズ入り、カレー風味…その他のバリエーションも紹介

大きないなり寿司のようにみえますが、そうではありません。油揚げの中に生米と野菜を詰め、だし汁で炊き上げたのが、鳥取県に伝わる郷土料理「いただき」です。食材への感謝の想いが感じられる、特徴的な調理法や味わいをみていきましょう。

米がたいへん貴重だった時代から受け継がれ、食への感謝の想いが込められた料理が鳥取県の伝統料理「いただき」です。使う具材や、味付け、作り方には、代々受け継がれてきた温かみがあります。ご家庭でも作りやすい料理なので、詳しくご覧になって、ぜひ作ってみてください。

いただきの特徴

いただきは、鳥取県西部の米子市を中心に伝わる郷土料理です。一見するといなり寿司に似ていますが、酢飯ではなく、生米を詰めてから出汁で炊く特徴があります。

油揚げの旨味と、出汁をたっぷり吸ったご飯が絶妙にマッチし、深い味わいの家庭の味として親しまれています。

歴史と由来

いただきは、江戸時代から鳥取県の家庭で作られ、特に農村地域で広く親しまれてきました。

言い伝えでは、福井県の精進料理を食べたお寺の住職が地元に持ち帰ったのが始まりとされています。

炊飯器がない時代、少ない燃料で効率的に米を炊く方法として考案されたともいわれています。祭りやハレの日の定番料理として、今も地域の伝統として受け継がれています。

名前の由来

「いただき」という名前の由来には諸説あります。

最も有力なのは、「いただきます」という食事の挨拶に由来するという説です。米が貴重な時代、感謝の気持ちを表す言葉がそのまま料理名として定着したとされています。

また、油揚げに詰めたご飯が山頂(いただき)のように見えることから、この地域の秀峰「大山(だいせん)」に見立てて名付けられたという説もあります。

鳥取の名峰・大山(だいせん)

さらに、「恵みをいただく」という行為そのものを表現したという説や、地域の人々が食材を分け合う「いただき物」から生まれる料理だったという説も伝えられています。

これらの説はいずれも、食事への感謝の気持ちが込められた名付けであることがうかがえます。

お家で作る基本の「いただき」

鳥取県内のスーパーでは、すでに開いた油揚げが販売されていることもあるくらい、今も家庭で作られている料理です。

慣れてきたら、お好みの具材や味付けにアレンジすることもできます。

きんぴらで作るいただきレシピ

作り置きのきんぴらを使って、いただきを作ってみましょう。必要な材料と調味料を確認しながら、作り方をご覧ください。

・材料

(4人分)

油揚げ 6~8枚
米 1合
きんぴらごぼう 80~100g

しょうゆ 大さじ3
みりん 大さじ2
だし昆布 1枚
水 350ml

・作り方

【1】米は洗って30分ほど浸水させてください。

油揚げは熱湯をかけて油抜きし、半分に切ります。キッチンペーパーに挟み、麺棒で押しつぶすと、開きやすくなります。

きんぴらごぼうは、粗みじん切りに刻みます。

【2】きんぴらごぼうと、水切りした米を混ぜ合わせます。

【3】開いた油揚げの中に、【2】を詰めます。

炊くと米が膨らんで破裂することもあるので、余裕をもたせて詰め、爪楊枝で油揚げを閉じます。

【4】炊飯器で炊く場合は、通常の炊飯モードで炊くことができます。

鍋で炊く場合は、まず鍋にだし昆布を敷き、その上に【3】の油揚げを並べます。

【5】水と調味料を加えて火をつけます。

沸騰するまでは強火で、沸騰したら蓋をして弱火で13分ほど加熱します。

【6】時間がきたら油揚げの上下を返し、さらに5分ほど加熱します。火を強めて残りの水分を飛ばしながら炊き上げます。

鍋底に水分が残る程度になったら、火を止めます。
鍋底に水分が残る程度になったら、火を止めます。

【7】水分が少なくなったら火を止め、蓋をして15分ほど蒸らします。

蒸らすことで、残りの水分は油揚げが吸い取ります。
蒸らすことで、残りの水分は油揚げが吸い取ります。

【8】爪楊枝を外して完成です。

・上手に炊くコツ

炊くときは「いただき」が重ならないように並べることで均一に火が通ります。

米がふっくらと炊けているか、最後に味見をして仕上げてください。

いただきのバリエーション

いただきは、古くから地域で愛されてきた料理で、地域や家庭ごとに独自の味わいがあります。

地域による違いと特色

鳥取県内でも、地域によって味付けや具材に違いがあります。

米子エリアでは鶏肉や野菜が入れることが多く、味付けはやや甘めの味付けです。

一方、倉吉エリアではシンプルに米のみで作ることもあります。山間部では山菜、海側では赤貝を入れるなど、地域の特色が生きています。

鳥取市内のラーメン店や蕎麦屋では、サイドメニューとしていただきを提供する店舗もありますよ。ラーメンのスープと一緒に食べると相性抜群で、蕎麦との組合わせでも趣のある味わいが楽しめます。

季節による違いと旬の食材

季節の食材を取り入れることで、さまざまな味わいを楽しむことができます。

春 たけのこや、菜の花を加えます。
夏 枝豆やとうもろこしを混ぜたいただきが人気です。
秋 きのこ類や栗を入れて、風情豊かな味を楽しみます。
冬 牡蠣やカニの身を入れて豪華な一品に仕上げることができます。

現代風アレンジレシピ

伝統の味を現代風にアレンジすることもできます。

・チーズ入りいただき

プロセスチーズやパルメザンチーズをご飯と一緒に混ぜ込むことで、コクのある味わいに仕上がります。油揚げとチーズの相性は抜群で、子どもから大人まで人気のアレンジメニューです。

・カレー風味のいただき

カレー粉を生米と具材に加えることで、スパイシーな香りと風味が楽しめます。ココナッツミルクを加えれば、エスニックな味わいの新感覚いただきに仕上がります。

・ヘルシーいただき

白米の代わりに雑穀米や玄米を使用することで、食物繊維やミネラルが豊富な健康的ないただきができます。もちもちとした食感と香ばしさが特徴で、ヘルシー志向の方におすすめです。

最近では、冷凍でいただきを販売するオンラインショップも増えています。お取り寄せで手軽に楽しむのもよいでしょう。

鳥取県ではおふくろの味

鳥取の郷土料理いただきは、伝統的でありながらアレンジの幅が広い料理です。きんぴらを使えば工程も調理時間も短縮でき、手軽に作れます。お子さん向けに甘めの味付けにするのもおすすめです。ぜひ一度、鳥取県で愛されるこのおふくろの味を楽しんでみてください。

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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

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