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子ども部屋作りにおける基本の考え方は、“今”何を使っているか
――大木さんが子ども部屋作りの中で、大事にしていること、基本の考えや軸を教えてください。
大木さん(以下敬称略):子どもの“今”をすごく大事にしています。「今、何を使っているか」「優先順位は何か」ということをいちばんに考えて子ども部屋を作るべきだと思います。遊び盛りの子なのか、中学受験をする子なのか、など時期によってそれは変わりますよね。
子ども部屋というのは基本的に子どものものだし、子ども自身が感性を育んでいく大事な場所になります。なので、親は選択肢を与えてあげるだけで、収納方法やインテリアテイスト等も含めて「最後の決断は子どもに委ねる」とゆるく決めておくと、楽に部屋作りができると思います。
――最後に選ぶのは子ども、というふうにしておけば、散らかってきたり、親がイメージした部屋じゃなくなってきたりしたとしても、子どもが選んだ、という納得感が得られるんですね。
大木:子どもには子どもの考えがあるし、それが育つのが子ども部屋だと思います。親が“こうしたい”部屋は、リビングなどの共通スペースで実現すればよくて、子ども部屋はあくまでも子どもに任せる、と考えれば、管理する部屋の数も減るから親も楽ですよ。
子ども部屋=子どもが自分で管理する部屋
――お子さんに「子ども部屋」を設けたのはいつ頃ですか?
大木:息子たちが3歳と1歳のときに今の家を建て、将来2つに分けられるような広い部屋を、将来の子ども部屋として、リビングと同じフロアに作ったんです。そのときから「ここは将来は君たちの部屋だよ」と意識づける話をしていました。
子ども部屋を作るといっても、当時は2個室に仕切っておらず、就学するときに机を置いたり、寝る部屋にしたり、おもちゃを置いたり、とざっくりエリア分けや意味づけをしていた感じです。

――子ども部屋を与えるメリットはどんなところだと思いますか?
大木:我が家は、子どもの発達をみながら、子ども部屋(という役割を持つ部屋)を与えて、遊ぶ場所、おもちゃを置く場所、寝る場所という役割を持たせていました。リビングにおもちゃを持ってきても、子ども部屋に戻す場所を作って習慣化したんです。そうするとリビングは散らからないし、息子たちもこの部屋は自分たちの場所、という自覚を幼い頃から持てたようですね。
お引っ越しや家を建てる際に、多くの方は将来の子ども部屋となる場所を作ると思います。おもちゃの収納スペースを設けてみたり、子どもの洋服を集めてみたりして、小さな頃から「ここはあなたのお部屋だよ」と声かけしておけば、自立心が育まれ、この部屋の管理者は自分だという責任感が芽生えると思います。
上の子の生活スタイルに引っ張られながらも成長とともに個室感を増強
――大木さんのお子さんが幼少期から現在に至るまで、ステージごと、年齢や卒入学のステージごとなど、部屋のスタイルの変化を教えてください。
大木:子どもが複数いる場合、どうしても上の子の生活スタイルが先に変化していくので、下の子はそのタイミングに引っ張られ、上の子に合わせるようになりがちです。
息子2人、大木家の子ども部屋の変遷
家を建てたとき…子の成長につれて壁を作り2部屋に分ける想定で、大きな1部屋のまま2人で使用。
幼稚園生ぐらいまで…1部屋を寝る場所と遊ぶ場所でざっくりエリア分け。
小学生…リビング学習。寝る場所、遊ぶ場所、勉強机(教科書の置き場や作品の飾り棚)、とざっくりエリア分け。
小学校5年生・3年生…二段ベッドを導入し、寝る場所をパワーアップ。学ぶ場所と寝る場所という区分けを強く意識するようになる。どちらもまだ、2部屋には分けたくないと希望。
上の子が高校受験前…壁は立てず、二段ベッドの上下を分けて、机とベッドを組み合わせ、上の子のエリア、下の子のエリア、となんとなくエリア分け。
上の子が大学受験前…動く家具(可動間仕切り)で仕切り、2部屋に分ける。現在に至る。
――本当に兄弟の成長に合わせて柔軟に変えていったんですね。
大木:息子2人には「いつ部屋を分ける?」「現状の子ども部屋で使いにくいところはない?」「(お気に入りで大量に所有する)レゴブロックをどうやって収納する?」など、子ども部屋について普段からよく話していました。

上の子が中学に入学したときは、勉強も忙しくなって、兄弟の生活にギャップが出て1部屋では難しいのではと思いました。結果的に、兄は塾の自習室を使うことが多くて、2部屋に仕切る壁を設けなくても済みましたが…。
その後、年齢を重ねて生活スタイルが兄弟で変わってきたので、壁を設けよう、ということに。ただ、あと数年で大学進学で家から出るかもしれないし、壁で仕切ったら壊すことも簡単ではないので、結果的にInstagramで見付けた動く家具で間仕切り、2部屋に。

うちの子は高校受験で自習室活用タイプでしたが、お子さんがどんな勉強の仕方をするかにも左右されると思います。
――お子さんのステージ別でどのように子ども部屋を設けるか、そのタイミングやルールなどがあれば知りたいです。
大木:例えば、マンションに引っ越したり、一戸建てを建てたりする際に子どもの年齢がどのくらいかも、結構大きなポイント。生まれたばかりとか、我が家のように3歳と1歳ならば個々に与える必要はないですよね。1つの部屋を将来的にきょうだいの人数分に分けて…などと想定したり。
すでに小学生で、異性のきょうだいになると、明らかに数年後には部屋を分けるのが見えているので、最初に個室として与えてもいいと思います。
ただ、スライドドアや動く家具など、部屋を分ける方法は壁以外にもいろいろあるので、将来、個室で使いたいなら壁にしてもいいし、子どもが出て行ったあとまた1つにつなげたいならそれ以外の選択をとればいいと思います。

また、例えば中学受験となると、塾の自習室では遅くまでいられないし、自宅学習が中心です。教材の量も多いので、早めに個室を持たせる可能性もあるでしょう。逆に、リビング学習で親御さんの目の届くうちは、と考えることも。
きょうだいの有無・性別・年の差等によっても、子ども部屋のスタイルの見直しやタイミング、使い方は家庭それぞれで異なります。各ご家庭でどんな子ども部屋にするのか、と普段からの意思疎通をまめにしておくことは大事ですね。もし工事が入るようなリフォームなどがあるなら、受験の有無で行うタイミングを考慮するのがいいと思います。
新生活の慌ただしさをサポート! おすすめ収納グッズ
――家庭で取り入れやすいおすすめの収納グッズはありますか?
大木:小学校入学時は、学習机やランドセルラックを用意せねばと考えますが、意外と子ども自身が使いこなせないこともあると聞きます。小1で買わねばと焦る必要はなく、お子さんの成長に合わせて「そのうち買えばいいや」ぐらいのゆったりとした心構えで大丈夫。
おすすめの収納グッズは、長く使えるイケアの「トロファスト」一択。カラーバリエーションもボックスのサイズも豊富で、幼少期はいちばん大きいサイズにおもちゃやぬいぐるみを。成長とともにおもちゃが小型化してきたら、高さが半分の浅型に替えました。

今はレゴブロックを入れていますが、ラインナップが豊富で見た目もスタイリッシュなので、子どもが好きなように選べて中高生になっても使い続けられます。おもちゃで遊ぶときはボックスごと引き抜いて、リビングや遊ぶ場所へ持ってきて、そのボックスにざっと放り込んでまた棚に戻す、というルーティンにしておくと、子どもも片付けの導線が明瞭で習慣化するので、そういう点でもおすすめの収納です。
高さも程よいので、棚の上にランドセルや学用品を置くのにも便利。ランドセルを机の横にフックで引っかけたり、つり下げたりするのは、小1の子にはものすごく大変で掛けにくく、結局やらなくなっていつも床に置きっぱなし……なんてことも。トロファストなら立ったまま棚の上のランドセルの中身を出し入れできるし、持ち物の確認もしやすいです。
私は専用ラックよりも、さまざまな用途に活用できる、こういった収納をおすすめしています。
――ほかに、おすすめの収納用品は?
大木:ベタですけど、無印良品で扱っているファイルボックスの横幅15センチぐらいのワイドタイプ。百均やニトリにも似たようなものがありますよね。
1つあると、教科書やノート、タブレットなどをポイポイ投げ込むだけで収納ができ、自分の身の回りの持ち物を管理するのにすごく便利。中のものが見えやすく、低学年でも管理しやすいワイドサイズがおすすめです。

幼稚園や保育園の入園のときに買っても、登園の持ち物の収納に使いやすいですよ。
お子さんの成長ごとに、その都度入れるものを変えて、長く使うことを前提に収納をそろえていくと、毎日の朝のバタバタなどもスムーズに解決しつつ、無駄になりません。
子どもが小さい時期は意外とあっという間。キッズ用収納を買ってしまうと、成長に伴って使いにくくなり、家具の買い替え時期が早く来てしまいます。長く使えるものは、子どもも使い慣れてくるので、戻しやすさや習慣化への利点にもつながります。
子ども部屋作りは片づけ導線や収納しやすさを工夫して、片付けの習慣化もセットに
――子どもに片付けを習慣化させたいです。収納しやすい工夫を教えてください。
大木:子どもが小さいころから「終わったら片付ける。時間は守る。宿題はちゃんとやる」を言い続けてきたことが、今、役立っていると実感します。
うちの子は、幼少期に戦隊ものにハマり、変身ベルトや武器などのおもちゃを山のように持っていましたが、小学校に入ると息子の中でそのブームが一気に去ったので、本人がいらないと言ったタイミングで全部フリマアプリで売りました。
収納できるエリアは限られているので、ここに入るだけ、と前述のトロファストのボックス単位で決めておけば、ものが増え過ぎるのを回避できます。子どもにも「ここに入るだけ」と家のルールを小さい頃から伝えておくといいですね。
我が家はレゴブロックを今でもリビングの一角に飾るほど好きなので、新しいレゴブロックがほしいときは使わなくなったおもちゃを売ってスペースを作り、売ったお金で家族みんなで食べるお菓子を買います。お菓子をおいしくいただきながら、収納や持つ量の目安、多くなったらどうするか、などの話をする機会をたびたび作ってきました。

――増えたものはリユース・リサイクルに出し、持つべきものの量を意識させたんですね。
大木:レゴブロックは幼少期からずっとありますが、小さい子用の大きなブロックなどはバザーに出したこともあります。本を寄付に出したり、ゲームをフリマアプリで売ったりと、リサイクルしながら、ものの量を調整することを幼少期からずっと一緒にやってきました。
あるときから急に、私が言わなくても、子どもたち自身で自然とそういうことをするようになったんです。根気よく一緒にやっていたことが、何も言わなくても勝手にできるようになっていたので、この先々も楽だと実感しています。
小学生ぐらいまでは、今何が必要かを考えて持ち物を取捨選択することを、親子で一緒に行うことがとても大切だと思います。
――子どもの作品が年々たまっていき、どうすべきか悩ましいのですが、取捨選択がしにくくて……。
大木:子どもの作品は、意外と「もういらない」と子ども自身が言うことが多いですよ。子どもは成長するので、はじめは「取っておきたい」と言っていたものでも、3か月後、半年後など、定期的に“いるか・いらないか”を聞き続けるといいですね。おもちゃに限らず、家の中のものも全部、定期的に見直しをしていくのがおすすめ。何度も声かけをしていると、いつか習慣化して身に付いてくるはずです。
ただ、子どもの作品は、むしろ親の思い出として取っておくものではないでしょうか。二度と手に入らないものですから。親の意思で、保管したいものを取捨選択していいと思います。 我が家は納戸の壁に子どもたちの幼稚園のときの作品を飾っています。
ただ、増えすぎて大変、どうしよう……と悩んでいる幼稚園や保育園のお子さんの親御さんたち、ずっとそのボリュームで増えるわけじゃないので安心してくださいね。保管する場所やスペースの大きさを決めるとベストですが、無理して捨てる必要はないと思いますよ。
快適な子ども部屋作りは家族のだんらんあってこそ
――ちなみに大木さんの旦那さんは、子ども部屋作りに関してどういうお考えですか?
大木:我が家はみんな、食卓でよくおしゃべりするんですよね。自然と夫も話に入ってきて自分の意見を言いますし、子どもたちともディスカッションしています。ごはんの最中に意思の確認をすることも多いですね。

子ども部屋を与えることによって、そこにこもってばかりでもイヤだな……と思い、中学生までは「自室にスマートフォンを持ち込んではいけない」というルールを決めていました。家族との時間は、ちゃんと顔を合わせて話をしようというルール作りも必要かもしれませんね。
我が家では幼少のころから、さまざまなことについて子どもに話を振って、意見を聞く姿勢を見せてきたので、自然と家族がリビングに集まりやすいのかもしれません。たとえば「おやつ食べよう」とリビングに呼び寄せるなど、子ども部屋での個の時間と家族の集う時間とを、居心地よく作れたらいいですね。
お話を伺ったのは…

もともと自分自身が捨てるのが苦手なため、片付けやすい&暮らしやすい家造りなど幅広い知識を生かした情報を誰にでも分かりやすくInstagramなどで発信中。「暮らしをラクに楽しく、サステイナブルに」をコンセプトに、片付けのプロとして個人宅やモデルハウス収納コンサルなど幅広く活動するほか、メディアやセミナーなどでも活躍中。
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取材・文/羽生田由香