反日で知られる李在明氏が韓国の新大統領に! 急に日本と協力姿勢を示しているって本当? 【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は韓国の新大統領・李在明氏について学びます。

新大統領の李在明氏は反日的で知られる人物

2025年6月3日、韓国の大統領選挙で「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏が勝利し、第21代大統領に就任しました。これにより、3年ぶりに革新系の政権が誕生し、日韓関係の今後の展開が注目されています。

李在明大統領は過去に反日的とされる発言や行動で知られていましたが、最近ではそのトーンを落とし、日本との協力を重視する姿勢を示しています。

李在明 CC 表示-継承 2.0,wikimedia commons

この変化の背景には、どんなことが隠れているのでしょうか。ここでは、李在明大統領の就任が日韓関係にどのような影響を与えるのか、文化的・経済的関係の強化、反日的言動に対する国民の反応、中台関係や北朝鮮・ロシアとの関連を踏まえて考察します。 

反日を煽るアプローチが共感を得にくくなってきた

まず、李在明大統領が反日的スタンスを抑え、日本との関係を重視する姿勢に転換した背景には、韓国の国内世論の変化があります。

過去に李氏は、「日本は軍事的敵国」と発言したり、東京電力福島第一原発の処理水放出を「汚染水」と呼び、断食抗議を行ったりするなど、強硬な対日姿勢を示してきました。しかし、2024年の日韓間の人的往来が過去最多を記録するなど、両国の関係は近年大きく改善傾向に。特に、若年層を中心とした韓国の一般市民の間では、反日的言動は以前ほど支持されていません

K-POPや韓国ドラマの日本での人気、日本文化への関心の高まりから、両国の文化的結びつきは強まっており、反日を煽る政治的アプローチは共感を得にくい状況です。このため、李氏は選挙戦で日本を重視する姿勢を示すなど、国民の好感を意識した発言を増やしていると考えられます。

低成長の韓国経済において日本は重要なパートナー

次に、経済的な観点からも、日本との協力は重要です。韓国経済は低成長に直面しており、トランプ米政権の高関税政策への対応も求められています。日本は技術や投資の面で重要なパートナーであり、特に半導体や自動車産業での連携は不可欠です。

李氏は「実用主義」を掲げ、国益を優先する外交を強調しており、日本との経済協力を深めることで経済再建を目指す方針です。最近の海外メディアとの会合でも、日本との相互依存関係を認め、協力の重要性を訴えました。このような姿勢は、経済的利益を重視する韓国国民の期待とも一致していると言えそうです。

バランスの取れた外交を展開するため

さらに、国際情勢も李在明大統領が日本との関係を重視する理由となっています。中台関係の悪化や北朝鮮・ロシアとの軍事協力の強化は、韓国にとっても安全保障上の大きな課題です。特に、北朝鮮がロシアと軍事協力を深めている状況下で、日米韓3カ国の連携は北朝鮮の脅威に対抗する上で不可欠です。

李氏は「韓米同盟を基盤に、韓米日協力を進める」と述べ、日本の防衛力強化にも理解を示しています。また、中台関係の緊張が高まる中、韓国が中国との関係を改善させる意向を示しつつも、日本との協力を維持することで、バランスの取れた外交を展開しようとしています。

このような戦略は、過度に中国や北朝鮮に接近することへの国内の反発を避けつつ、地域の安定を図る狙いがあります。

新政権下では日韓関係は比較的安定する見込み

ただし、李在明大統領の過去の反日的言動や、対北朝鮮送金疑惑など一部のスキャンダルが、日韓関係に不確定要素を残しています。日本政府内でも、李氏の実用外交に対する楽観と警戒が交錯していることでしょう。

それでも、現在の国際環境や韓国の国内事情を考慮すると、李在明政権は日本との関係を大きく悪化させるよりも、協力関係を維持・強化する方向に進む可能性が高いと考えられます。

結論として、李在明大統領の誕生により、日韓関係は文化的・経済的結びつきの強化を背景に、ユン前大統領の時ほどではないかもしれませんが、比較的安定した形で進展すると予測されます。反日的言動は若年層を中心に支持を失いつつあり、中台関係の悪化や北朝鮮・ロシアの動向を踏まえれば、日本との協力は韓国にとっても不可欠です。

李氏が掲げる実用外交は、これらの現実を反映したものであり、過去の強硬姿勢から一歩踏み出した新たな日韓関係の構築が期待されます。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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