認可保育園の保育料ってどうやって決まるの?
施設の面積、保育士の数など、児童福祉法に基づいて国が定めた一定の基準を満たしているのが認可保育園です。そんな認可保育園の保育料は、どのように決められているのでしょうか?
保育料算出の基本原則
認可保育園の保育料は、国が定めている上限額があり、その範囲内でそれぞれの自治体が決めています。国が定める上限額は、生活保護世帯から市町村民税非課税世帯など、所得に応じて8つの階層によってわけられていて異なります。
最も高い保育料で月額104,000円(所得割課税額397,000円以上の階層で、満3歳未満、保育標準時間の場合)です。※自治体によって異なる場合があります。
この上限額をもとに、自治体が保護者の所得、保育時間、子どもの数をもとに、さらに具体的な保育料を算出しています。また子どもには「1号・2号・3号」という区分が設けられていて、その区分によっても保育料は異なります。
1号認定:以下の条件に当てはまる場合
・子どもが満3歳以上
・保育に必要な理由に該当しない
・教育標準時間(基本的に4時間)で通園する
2号認定:以下の条件に当てはまる場合
・子どもが満3歳以上
・保育に必要な理由に該当する
・教育標準時間(原則11時間以内)・保育短時間(原則8時間以内)で通園する
3号号認定:以下の条件に当てはまる場合
・子どもが0歳から満3歳未満
・保育に必要な理由に該当する
・教育標準時間(原則11時間以内)・保育短時間(原則8時間以内)で通園する
また、同一世帯で複数の子どもが保育園や幼稚園を利用する場合、保育料の軽減措置があります。ひとり親世帯や在宅障害児のいる世帯なども減額措置があります。
参考:子ども・子育て支援新制度について|内閣府子ども・子育て本部
収入に基づく保育料の計算方法
上記でご紹介したように、保育料の算出にはさまざまな条件が考慮されますが、そのうちのひとつの基準が保護者の世帯収入です。
このときに使われるのが「所得割課税額」です。これは所得金額に比例して課税される住民税額のことで、前年の所得によって算定されます。所得割課税額は「住民税決定通知書」などに記載されています。これを見て、自治体が定めている8つの階層から照らし合わせて月額保育料が決まるのです。
保育料の具体的な計算例をチェック!
では、具体的にどのくらいの保険料になるか見てみましょう。
家庭状況と保育料
保育料には、保護者の世帯収入が考慮されるとご紹介しました。それ以外にも子どもの年齢や数、保育時間なども考慮されることになります。例えば東京都墨田区の場合を見てみましょう。標準時間の保育料で、0~2歳児の保育料は以下の通りです。
世帯の区市町村民税の合計が97,000円~115,000円の場合:第1子月額27,700円、第2子月額13,850円
世帯の区市町村民税の合計が151,000円~169,000円の場合:第1子月額34,900円、第2子月額17,450円
追加料金がかかる場合はある?
保育料のほかに、お金が追加でかかることは何かあるのでしょうか? 施設によっては、基本の保育料のほかにスクールバス代、給食費、各種の行事費用などの追加がかかることがあります。
保育料無償化ってどんな制度?
保育料は決して安い金額ではありませんし、子どもの数が増えればそれだけ家庭への負担も多くなります。そんな子育て世帯にうれしいのが、保育料無償化です。これは2019年10月から始まった制度で、認可保育園のほか、幼稚園、認定こども園などを利用する3歳から5歳の子どもの保育料が無償化される制度です。
無償化の適用範囲と条件
ただし注意しておきたいのが、無償化になる対象です。対象となるのは以下です。
・3歳から5歳のすべての子ども
・幼稚園、保育園、認定こども園などを利用している子ども
認可保育園はもちろんのこと、認可外保育園も対象になります(月額3.7万円まで)。スクールバスや給食、行事関連の費用など、実費として徴収されている費用は対象外です。また0歳から2歳までの子どもについては、住民税非課税世帯の場合は無償化されます(月額4.2万円まで)。
無償化手続きの流れ
無償化を利用するとき、何か手続きは必要なのでしょうか?
子育て支援制度の対象となっている保育園、幼稚園、認定こども園を利用する場合は、特に手続きは必要ありません。認可外保育所やベビーシッターなどを利用する場合は、自治体から保育の必要性の認定を受けておくことが必要になります。これらの手続きは各自治体によって異なりますから、事前に自治体まで問い合わせましょう。
実際に無償化で家計にどれくらい影響があるの?
子どもを育てていくためには、何かとお金がかかるものです。子育てをする世帯にとって、保育料無償化はとても心強い存在になるはずです。実際に、この制度ができたおかげでどのくらい家計に影響があるものでしょうか?
無償化前後の保育料の比較
令和3年の厚生労働省のデータによると、保育料の月額は、事業所内保育施設の場合は20,000円~30,000円、認可外保育施設では45,000円です。これは年間で計算すると事業所内保育施設なら240,000円~360,000円、認可外保育施設なら540,000円にもなります。これだけの金額が、無償化でかからなくなるということですから、子どもを育てる世帯にとっては大きなサポートになります。
参考:令和3年地域児童福祉事業等調査結果の概況(厚生労働省)
無償化が家計にもたらすメリット
保育料無償化は、子育てにかかる経済的な不安を減らしてくれる大きなメリットがあります。近年は「子どもを持ちたいけれど、経済面で不安を感じてあきらめる」という方も少なくありません。子どもが3歳から5歳までの間ではありますが、保育料が無償化されることは大きな支援といえるでしょう。
無償化によって、小学校入学以降にさらにお金がかかるときに備えて貯蓄を始めることもできるかもしれません。さらにいい教育環境を求めて、選択肢が広がることも考えられるでしょう。
無償化によるデメリット
保育料無償化はうれしい反面、これによって保育園に通わせたいという家庭が増えて、待機児童が増える可能性も考えられます。待機児童の問題は、これまでも多くの自治体で上がっていたものです。保育施設が少ない地域などでは、待機児童が増えてしまう可能性もあるでしょう。
また保育料無償化を始めるための財源として、消費税が10%に引き上げられました。消費税が上がるということは、私たちの日々の買い物でも支出額が増えるということです。それだけ普段の家計が厳しくなっているという面もあります。
子どもの成長とともに育児にかかる費用を考えよう
育児にはお金がかかるものですが、本当ならば少なくとも年間数十万円はかかる保育料が無償になる制度は、とても心強い存在です。しかし子どもが中学校や高校に通うようになると、さらにお金がかかるものです。
無償化の制度を利用して、保育料の負担が減った分は使ってしまわず、将来の教育費のために貯蓄などをしておきましょう。
※ご紹介した保育料の具体的な額や無償化の条件などは、自治体によって異なる場合があります。正確な情報は自治体に問い合わせてください。
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文・構成/HugKum編集部