ひとりっ子の子育て・きょうだいの子育て、どんな違いがあるの?【発達心理学専門家監修】

きょうだいがいないと「同じ年ごろの子どもと遊べなくてかわいそう」と気になったり、きょうだいがいると上の子の赤ちゃん返りに手を焼いたり、それぞれに悩みがあるものです。

どんな関わり方をすればよいのか、専門家にうかがいました。

きょうだいの有無で性格に違いが出るわけではない

「長男・長女だからしっかり者」「末っ子だから甘えんぼう」などと、きょうだい構成は性格形成に影響を与えると思われがちです。確かにきょうだいがいれば親との関係だけでなく、子ども同士の関係を家庭の中で経験できますが、家庭内でできなくても、園や小学校に入れば同様の経験ができるので心配いりません。きょうだいの有無によって将来の性格に違いが出ることはないと考えてよいでしょう。

生まれた順を意識しすぎない関わり方を

将来的な性格に違いがないとはいえ、家族内では「兄・姉だから下のきょうだいを守る」といった役割意識は生じます。また、きょうだいの有無によって生じる親の関わり方の違いは、親子関係が密な幼児期の性格に多少影響します。それを理解しつつも、「兄(弟)・姉(妹)だから」「きょうだいがいないから」と考え過ぎずに、目の前にいるその子の個性に合った育児をすることを心がけましょう。

きょうだいを育てるのって大変?

1人目の子育てで得られた知識や公的サービスの情報、ママ友などの親同士のネットワークは2人目の育児にもそのまま役立てることができます。ただ、きょうだいの年齢差が2歳以下になる場合は、下の子が生まれた時点でまだ上の子と言葉で十分なコミュニケーションが取れるわけではないので、近くの人の手を借りることが大切です。パートナーや祖父母、公的サービスなどによるサポート体制を整えておきましょう。

きょうだいがいない場合

いろいろな人とつながり、人間関係を広げる工夫を

家の中で親子が一対一で向き合い続けていると、子どもが同年齢の子と触れ合う機会がもてず、親子ともにストレスを感じやすくなります。ママ友と子連れで会う、地域の子育てひろばに出かけるなどして、人とのつながりを積極的につくっていきましょう。他の親が子どもとどう接しているかを見ると、子育ての正解はひとつではないとわかり、おうちの方の気持ちが楽になるはずです。

👑 きょうだいがいない子の特徴

おうちの方の関心をひとり占めできるという点では、きょうだいがいる場合よりストレスが少なくてすみます。ただ、親子関係が密接な分、自分の主張を通すことよりも親の期待に応えることを優先し、考え方や行動が保守的になりがちな面も。きょうだい間での競争がないため、「自己主張をしなければわかってもらえない」という経験が不足しがちな点にも配慮が必要です。

「お友だち」は早くつくるべき?

本人が興味をもつまではあせらなくても大丈夫

他の子と遊ぶことに興味を示す子もいれば、おうちで自分のペースで過ごしたい子もいるので、そのときのわが子の興味に合わせましょう。習い事などは本人が関心を示せば始めてもよいですが、無理強いする必要はありません。人間関係を広げるためにいろいろな機会を与えたとしても、どんな子も環境に慣れるまでは時間がかかるので、長い目で成長を見守ることが大切です。

過保護にならないためには?

おうちの方が自分自身の時間をもって

趣味を楽しむなど、おうちの方が自分自身の時間をもっていると、子どもからの働きかけにすぐには応じられないこともあり、子どもは「大人が対応してくれるのを待たなければならない」といったマイルドなストレスにさらされます。これは、きょうだいがいる子どもが日ごろ感じているのと同様の適度なストレスであり、こうしたストレスを乗り越える経験をすることで、子どもはたくましく成長していきます。

 

こんなときはどうする?

「こうしたい」と自己主張することが少ない

おうちの方が子どもの気持ちを先読みして、すぐに要求に応えるのではなく、子ども自身の気持ちを引き出す配慮をすることが大切です。お友だちと遊ぶ中で「イヤ」と言ってもよい場面で自分の気持ちを言えずにいるようなときは、「本当はこういう気持ちだったんだよね」と子どもの気持ちを代弁してから、「自分で言ってみよう」とうながしましょう。

お友だちの輪になかなか入れない

最初のうちは、お友だちの様子を見ているだけの日があってもかまいません。様子がつかめてくれば、お友だちがしていることを真似するようになり、やがて同じことをしている子ども同士でつながりができていくものです。「お友だちの輪に入る」という結果をすぐに求めるのではなく、子ども自身のペースを尊重して急がずに待つことも必要です。

周囲の大人がつい甘やかしてしまう

子どもがひとりしかいなくても、「ダメなことはダメ」と毅然とした態度を取りましょう。「これが欲しかったんだね」というように「なぜその行動をしたのか」について理解を示したうえで、「〇〇ちゃんのことは大好きだけど、お店のものに触ってはダメ」というような伝え方をすれば、子ども自身を否定することなく「何がいけないのか」を伝えられます。

きょうだいがいる場合

関心をひとり占めできないストレスを理解して

きょうだいがいると、子どもたちは「おうちの方の関心をひとり占めできない」というストレスにさらされます。ですが、子どもは適度なストレスを経験することで、マイナスの感情をどう立て直すかを学んでいくので、心配しすぎる必要はありません。ストレスを抱えていることを理解して、甘えたい気持ちを受け止めていきましょう。

👑 年齢が近い(2歳差まで)きょうだいの特徴

子ども同士で同じ遊びを楽しめることが多いのはメリットです。ただ、上の子自身もまだ手厚いケアを必要とする年齢であり、自分の気持ちをすべて言葉で伝えられるわけではないため、そのストレスから赤ちゃん返りをすることもあります。

👑 年齢が離れた(3歳差以上)きょうだいの特徴

上の子とは言葉でコミュニケーションが取れるので、年齢が近いきょうだいほどは手がかからずにすみます。年齢差があると別々の遊びを好むことも増えますが、上の子が下の子のお世話をするという形で触れ合いが見られることもあります。

上の子との関わり方は?

兄・姉の役割を求めずに向き合う時間をつくる

「お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから、下の子にやさしくして」というように、上の子であるという役割を意識させるのは悪いことではありません。ただ、いつもそのような関わりばかりだと、上の子は自己主張がしにくくなり、フラストレーションがたまることも。時々は上の子と一対一で向き合い、兄・姉ではなく、ただの「〇〇ちゃん」として受け入れる時間もつくりましょう。

下の子との関わり方は?

その場で対応できないときは後でのフォローを忘れずに

上の子のお世話で手が離せないときに下の子が泣き出したような場合には、すぐには下の子の要求に応えられないこともあるかもしれませんが、慌てなくても大丈夫です。即座に対応してもらえずに泣き続けたような場合でも、最終的に自分の要求がかなえられれば子どもは満足感を得られます。「待っててね」「後でね」といった声かけをした場合は、後で必ず下の子と向き合う時間をつくるようにしましょう。

 

こんなときどうする?

妊娠中で上の子と思い切り遊べない

上の子が言葉を理解できる年齢であれば、お腹に赤ちゃんがいるから激しい動きはできないことを言葉で説明しましょう。

ママがひとりで対応しようとするのではなく、パートナーや家族、ママ友など、誰かに手助けを求めることが大切です。公園など他の子どもと接することができる場所へ連れて行くだけでも、子どもは気持ちを発散しやすくなります。

下の子が生まれたら上の子が赤ちゃん返り

赤ちゃん返りは一時的なもので、下の子が生まれたという状況を受け入れて自分の気持ちと折り合いがつけられるようになれば、自然とおさまっていきます。叱るときはただ否定するのではなく、「〇〇ちゃんはこういう気持ちだったんだよね。わかるよ」と共感的な理解を示したうえで、「でも、おもちゃは投げずに手でわたそうね」と行動だけを注意しましょう。

記事監修

遠藤 利彦先生

東京大学大学院教育学研究科教授。専門は発達心理学。主に、子どもの愛着関係の形成や社会性の発達についての研究を行っている。

『ベビーブック』2019年10月号 イラスト/佐藤香苗 文/安永美穂 構成/童夢

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