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幼児期に決まる子どもの色彩感覚を育んでくれる絵本って?
「子どもの色彩感覚は幼児期に決まる」ということ、ご存知ですか?育った環境によって色彩感覚に大きな違いが出ると言われています。色彩が多い環境に育つと色彩感覚が発達し、子どもの感受性が豊かになるそうです。子どもの視力が発達する幼児期に、いろいろな色にふれさせることが重要で、絵画を観たり絵本を読んだりすることはその手助けになります。
そんな感受性へ刺激を与えてくれる、アート、プレイ(あそび)、知育が一体となった日本初!の名画と遊ぶ知育本、絵画絵本『名画ここどこ~「はじめまして」の名画探検 』が話題です。
アートディレクター・結城昌子さんのこだわりが随所に
「一枚の絵をすみずみまでみるってステキなこと」というコンセプトのこの本は、子ども向けのアートの絵本企画や制作を通して子どもとアートをつなぐ活動をしている人気アートディレクター、エッセイストの結城昌子さんによるもの。結城さんは、これまでに著書の「小学館あーとぶっくシリーズ」が累計66万部を超えるヒットメーカーで、朝日小学生新聞でも連載をお持ちです。
子どもたちの感性を豊かにする仕組みにあふれているだけでなく、大人まで楽しめる本なのです。
サンドロ・ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」で、女神のおへそを探す!?
絵本を開くと、「あ!あの名画が、こんなにバラバラになってる!!!」と、最初は衝撃こそ受けるのですが、このパーツが名画のどの部分なのかを探す仕組みになっています。思わず夢中になってしまう構成に、よくよく観察しないと読み進められないことに大人も気づくはず。細部に注目すれば、絵の「個性」も見えてきて、きっと好きな作品も見つかるでしょう。
また「ウォーリーを探せ」や「ミッケ」シリーズに代表されるように、子供たちは探しっこ遊びが大好き! その遊びを本物の名画で楽しめるのですから、とても贅沢です。
葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」では大波小波の違いを見分けて
葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が結城さんの手にかかると、こんな感じ!
絵本に収録されている名画は全13点。ゴッホ、フェルメールに伊藤若冲など、西洋と日本の絵画界のスタープレーヤーたちの作品が網羅されています。ほかの幼児・児童書では類を見ない美しい画像や印刷のクオリティの高さに感激してしまいます。”あら波のサーフィン”だなんて、なんとも自由な発想に、笑みがこぼれてしまいますね。
子どもたちが大好きな動物探しを、アンリ・ルソーの「異国風景 −原始林の猿」で
アンリ・ルソーの「異国風景 −原始林の猿」をご存知の方も多いことでしょう。馴染みのある名画だけどよく知らない、よく見たことがない作品はたくさん。一緒に読んでいる大人も勉強になります。
本を渡したときから、子どもたちは、あれこれ指差して読み進めていきます。まさに、すみずみまで名画を探訪している…そんな感覚を体験できる絵本なんです。
ジュゼッペ・アルチンボルト「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世」 Photo:Bridgeman Images/DNPartcom
インパクト大!美術館で観た果物や野菜だらけの絵は…
美術館で観たことのある大好きなアルチンボルドの絵には、果物や野菜、花々がいっぱい。たくさん描かれている植物から、ある1つの食材を見つけるのって意外にも大変みたい。
同じようなものもあるから、よ〜く探さないと見つからないのです。上下逆さになっていたり…本当に隅っこに描かれていたり…。子どもたちの方が親よりも断然早く見つけてしまうのですが、親子のコミュニケーションにも役立ちそう。「ここど〜こだ?」そんな言葉をかけあいながら、あそぶのにぴったりな絵本。あそび終わったら、「どの絵が好きだった?」など、画家や絵について話し合っても楽しめます。
絵本を通して、親子や兄弟のコミュニケーションも盛り上がります!
この名画は、伊藤若冲の「動植綵絵池辺群虫図(どうしょくさいえちべんぐんちゅうず)」(宮内庁三の丸尚蔵館)
「これどこ〜?」「ここだよ、ここ」「え〜、見せて見せて」って。名画とこんな風に触れ合っていけるだなんて、羨ましい限りです。子どもたちがこの本を通じて何を感じて何を心に留めたのか。子どもたちの心の中が満たされていく光景を見ているだけで大人もまた幸せな時間。いつの日か美術館で子どもたちが本物に出会ったとき、「あ、あの絵だ!」と思ってくれることでしょう。
子どもの知育絵本としてだけでなく、大きくなってから、大人になっても楽しめるからずっと置いておきたくなる絵画絵本。手元に置いておけば、お出かけにも大活躍しそうですね!
文・構成・デザイン/結城昌子
小学館あーと知育ぶっく(小学館)
大型本 32ページ
定価 本体1800円+税