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お年玉は「貯金」が8割以上。低金利の今、それでいいの?
読者の皆さんは、お子さんのもらったお年玉をどうしていますか?
学研教育総合研究所の「小学生の日常生活・学習に関する調査」(2019年調べ)によると、お年玉をもらった子どもは回答した子どもの94.4%で、一人当たりの平均総額は21,047円。ここ数年増加傾向にあるそう。
そして、もらったお金は、ダントツ1位で83.1%の子どもが「貯金している」ことが判明しています(2位が「おもちゃ」で27.9%、3位が「ゲーム機・ゲームソフト」で21.9%)。
けれども、低金利の近年、単に貯金をするというのは、最適な選択とは言えないようです。
では、子どもをもらったお年玉は、どのように活用したらいいのでしょう。
ファイナンシャルプランナーに聞く令和時代のお年玉の新しい活用方法
その有効な活用方法を、2020年1月22日に農林中金バリューインベストメンツ(※)が開催した第1回『長期投資の学び場』セミナー「令和時代のお年玉の新しい活用方法」から、講師のひとり・ファイナンシャルプランナーの田端沙織さんのお話を紹介しましょう。
※農林中金バリューインベストメンツは、「農林中央金庫」のグループで、「売らなくてよい企業の株を厳選して長期で保有し続ける」という投資哲学に基づいて運用される「おおぶね」など、個人向け投資信託商品の運用助言などを行なっている金融機関です。https://note.com/nvic
これからの時代は「お金をどうやって増やしたらいいのか」を幼いころから学ぶべき
子どものおこづかいは完全報酬制
まず、田端さんが教えてくれたのは、お子さんに「お金というのは感謝のしるし」だということを小さなうちから伝えることが大事だということ。そして、そのうえで「お金を子どもに単純に渡すのではなく、お金を渡すと同時にその使い道を一緒に教えること」が重要だということでした。
例えば、そうした金銭教育をするために、田端さんの家庭では子どものおこづかいは完全報酬制だそうです。
新聞をポストから出して渡すと1回10円、お風呂そうじや窓ふきは1回20円、庭の草むしりは1回50円といったように、子どもがしてくれたお手伝いに応じて集計し、ある程度キリのいい金額になると現金で渡しているそうです。
〝お金は感謝のしるし〟
「お金を渡すとき、必ず言うのが、『これだけあなたが頑張って手伝ってくれて、ママはとても助かったし、うれしかったよ!ありがとう』と言う言葉です。この言葉を言うことで、子どもに〝お金は感謝のしるし〟であるということを常に伝えています」と田端さんは言います。
また、田端家では、そのうえで渡したお金の使い道を毎回親子で話し合っているそうです。
アメリカ生まれの子ども達への金銭教育の定番教材の貯金箱を活用
「その際、活用するのがブタの貯金箱です。おづかいいを渡す都度、お金をどの部屋に入れるのか、親子で話し合いながら入れてもらっています」と田端さん。
この貯金箱は、アメリカの金銭教育の教材として使われているもので、4つの部屋に分かれており、使い道に沿って、お金を貯金箱に投入することができます。
↑これが4つの部屋の貯金箱「ハッピー・マネー®・ピッグ」の「ピギーちゃん」。元プライベート・バンカーで、子どものマネー教育事業を行っている、アメリカ人のスーザン・P・ビーチャムによって考案された貯金箱。ブルーとピンク、グリーン、ブライト・イエローの4色がある。各1950円(税込・送料込み)
「4つの部屋」の内訳は、以下の通りです。
SAVE:貯める・貯蓄
SPEND:使う・消費
DONATE:譲る・寄付
INVEST:増やす・投資
言われてみると、なるほどと思いますが、日本人にはなかなかない金銭感覚です。
しかし、欧米ではこうしたお金の使い方を幼いころから子どもたちにしっかりと教えているんですね。
「週に1度程度、子どもにおこづかいを渡すたびに話し合い、貯金箱に入れてもらっていますが、SAVEやSPENDはよく入れますが、なかなかDONATEやINVESTには入れてくれませんね(笑)。でもこの積み重ねが大事なのだと思います。こうした習慣を続けることで、お金の使い方を自分自身でしっかり考える力を身につけることができるようになると考えています」と田端さんは言います。
お金を増やすレッスン。お年玉貯金を活用するのに最適な「長期の積み立て投資」
そんな田端さんは、セミナーで「お年玉は親子で一緒にお金の使い方と投資を考える最適な機会」だと解説してくれました。
なぜなら「お年玉はおこづかい同様に、お金の大切さを伝えるいい機会」で、「金額が比較的大きいので、積立投資に最適」だからです。
貯金ではなく、投資を勧めるのは、バブルが弾けて以来、普通預金の金利は大手銀行の普通預金で0.001%。3年定期預金でも0.01%。単に貯蓄をしていても、お金が増えません。
「これからの子どもたちは、お金をどうやって増やしたらいいのか、幼いうちから学ぶことが大切だから」というのが、大きな理由です。親にとって、子どもに投資を教えることは魚(お金)を与えるのではなく、魚の釣り方(投資)を教えることになるからです。
実際、田端さんの家では小学1年生のご長男に、「お年玉は投資に回そうね」と話して了承してもらい、積立する投資信託を行っているそうです。
今年、ご長男は1万7000円のお年玉をもらい、うち3000円を玩具の購入に使い、残りのうち毎月1000円を投資信託の積立に回しました。
想定利回り(年率)4%が見込める投資信託なら、月々3000円×18年=947000円
「幼いころからの積立による投資信託への投資は、投資期間が長くとれるため、リスクが高い投資信託を選ぶ必要がありません。
たとえば年換算利回り(年率)4%程度が見込める投資信託なら、毎月3000円を18年間積み立てた場合、積立額の合計は64万8000円ですが、運用収益額は約29万9000円が見込めるので、最終積立金額は94万7000円。
この金額は、国立大学の初年度納付金相当(約82万円)となります」と田端さん(※金融庁HP。資産運用シミュレーションを元に試算)。
試算した最終積立金額はあくまでも予測ではありますが、単に貯金をしているだけは決して得られない金額で、驚いた方も多いのでは?! セミナー後、参加者のママたちからは、具体的な投資方法についての質問が多く寄せられていました。
3か月に1回、子どもと一緒に運用状況をチェック!子どもといっしょにお金を学ぼう
以上がセミナーで田端さんが教えてくれた「子どもと考えるお年玉の使い方」の提案です。
この機会にあなたもお子さんとお年玉の活用方法を考えてみませんか?
投資をスタートするためには、まず子ども名義の銀行口座と一緒に証券口座を作ることが必要です。そして、子ども名義の銀行口座にお年玉のうち1年分の投資する金額を入れておき、投資信託を選んで積み立てを始めれば投資を始めることができます。
田端さんによれば「3か月に1度程度、お子さんといっしょに運用状況をチェックすることも重要」だとのこと。
「子どもが小学校高学年くらいになったら、運用実績が上がっても下がっても、その背景にはどんなことが考えられるか親子で考えることも重要ですね。失敗体験はお金の大事さを実感するだけでなく、将来、お子さんが自分だけの判断でお金を投資するときの貴重な経験になります」と田端さん。
低金利がつづき、公的年金制度もあてにならない現代、子どもに投資というお金の使い方を教えるのは不可欠なのかもしれません。
取材・構成/山津京子