スイス休校生活を緊急レポート!課題ラッシュの初めてのディスタンスラーニング【世界の休校対策、オンライン学習事情】

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世界各国でも休校措置が続いています。

HugKumでは、各国で暮らす日本人ママから、現地の学びの現状をレポートしてもらいます。

スイスで暮らす3人のママからのレポート

6歳、5歳、3歳の3人姉妹を連れてスイスのチューリヒ州に引っ越してきて1年。私たち家族が住むスイスにおいても、新型コロナウィルスの感染拡大防止対策として3月13日から全国休校措置がとられるようになりました。

現在スイスでは外出の自粛が呼びかけられ、スーパーマーケットなど生活必需品を販売する店や銀行、郵便局を除くすべてのレストランやショップ、施設などが閉鎖されています。外出禁止令は出ていませんが(一部除く)、 公共の場で5人を超える人の集まりを禁止し(違反すると1人当たり罰金100フラン(約1万1,000円))、人との距離は2m以上の間隔(社会的距離)を保つことが推奨されています※1。

このような状況の中、チューリヒ州の公立小学校、公立幼稚園、プレイグループにそれぞれ通う3人の我が家の子供たちの休校&外出自粛生活が始まりました。このコラムでは、スイスでの休校期間中の過ごし方をレポートしていきたいと思います。

休校は休暇ではなく課題との闘い

3月13日金曜日、スイス連邦政府は全国の小中学校を休校することを発表し、私たち家族が住んでいるチューリヒ州の学校は4月24日まで休校することが決定されました。

学校と習い事でぎっしり詰まっていた予定が突然空白に

スイス政府から休校措置の発表があったその日の夜には娘の通う小学校から保護者あてに休校のお知らせの一斉メールが届き、週末にはすべての習い事、下の子供たちが通っている幼稚園とプレイグループからもすべてお休みとなる連絡が届きました。

スイス生活を始めて1年。現地での生活に慣れるため、子供たちには学校以外の場所でも地元の子供たちと関われるようにと、好きな習い事をそれぞれさせていました。そのため、月曜日から金曜日までの子供たちの通常のスケジュールは学校と習い事でぎっしりでした。しかし、この日を境に突如予定がすべて空白に。

これから始まる6週間の休校期間、外出自粛をしながら何をして子供たちと過ごせばいい?

やっと現地の言葉(ドイツ語)に慣れ始めた学校生活への影響は?

勉強はどうする?公園はいってもいいの?いつまで休校は続くの?!

などいろいろな不安が頭をよぎるなか、休む暇もなく慌ただしい休校生活がスタートしました。

各州で異なる教育制度と休校への対応

スイスでの義務教育は、幼稚園からの11年間となっていて、州ごとに教育制度が異なります。教育に関しては各州の所管となっているので今回の休校期間も各州によって異なり、さらに休校期間中の課題や進め方も各学校それぞれの担任の先生のやり方で進められているようです。

小1は45分以上、小6は190分以上の家庭学習を推奨

チューリヒ州では6週間の休校となりましたが、2週間の春休みが含まれているので実質的には4週間の休校となり、状況次第では休校の延長の可能性もあるとされています。現地点において、長女が通う小学校からは、今回の休校措置によって各学年が本来1年間で行うべき学習内容の変更はないとされています。そのためにも、子供たちの本来の学習スケジュールに支障がきたさないように休校中も家庭で学習をする措置がとられています。

チューリヒ州教育局は、ガイドラインとして休校期間中自宅で学習すべき最低限の時間を学年別で提示しています。例えば、小学1年生の場合は毎日最低45分以上(14分の集中×3)、一方小学6年生は最低190分(24分の集中×8)勉強するよう推奨されています※2。

学校から課題はたっぷり、おまけ課題も

小学1年生の長女のクラスの場合、一日の課題を休憩をはさみながらやっていくと午前中すべてを費やす程度の量がでています。それに加えて、やってもやらなくてもいい「おまけ課題」も与えられており、先生が十分に準備してくれているのでやることがなくなってしまうなんてことはないです!

各教育機関から子供に課題を配布

小学校からの課題だけでなく、幼稚園やプレイグループに通っている下の子供たちにも、各施設から週1ぺースでお家でできる簡単な実験や遊びが細かく書かれたプリントや工作、歌などの教材が家のポストまで先生が届けにきてくれます。習い事関連も同時にお休みとなったため、各習い事から毎週動画が送られてきたり「Skype」や「Zoom」を使ったオンライン授業が徐々に行われたりするようになっています。

休校生活が始まるや否や、当初抱いていた「休校になって暇を持て余してしまうのでは?」という不安は一気に払拭され、むしろ休校期間中に家庭でどれだけ勉強をすすめて課題をクリアしていけるのか?どうやって計画を立てて取り組むのが子供たちにとってベスト?休校期間を無駄に過ごさないためにはどうしたらいい?などと今までとは違う生活に子供と一緒に慣れていく方法を模索するようになりました。

小学校は休校3日目からディスタンス・ラーニングが本格的に開始!

ディスタンス・ラーニングとは?

ディスタンス・ラーニングとは「遠隔教育」と意味し、学校にいかなくても離れた場所からコンピューターなどを使って学習することです。娘の通う公立小学校では、休校期間中、毎週郵便やネットを通じて与えられた課題を自宅で学習する方式がとられています。

「Teams」を使ってコミュニケーションをとり課題も提出

休校となって3日目、これから始まる自宅での学習で必要となるものを学校に取りに来るよう担任の先生から連絡が届きました。指定された時間内に取りに行くと、先生が準備してくれていたお道具箱、文房具、教材プリント、ノートなど自宅で学習できる一式セットがひとりずつに配られました。

毎日やるべき課題(ドイツ語、算数、書き方、おまけ問題)が一週間分日付ごとに書かれており、

・課題は毎日指定された箇所のみやる(やりすぎ注意!)

・自宅学習で子供が飽きないように異なる課題をしてメリハリをつけましょう!

・通常の学校があるときと同じ生活リズムを保ちましょう!

などと自宅学習をする上での注意点も書かれていました。

ディスタンス・ラーニングでは、基本的にマイクロソフト社のアプリケーション「Teams」を使って連絡事項や質問、課題の提出を行うようになっています。そこに担任の先生からの連絡事項が投稿され、生徒はチャット形式で課題に関する質問ができます。できた課題の一部は写真をとって「Teams」上に提出するようになっていて、お友達の作品や勉強の進行状況だけではなく、一緒に写っているお友達の元気な顔も見られるので子供も楽しみにしています。

休校2週目以降は、毎週金曜日に担任の先生から翌週のスケジュールが送られてきて、週末には郵便で課題の教材が届くようになっています。

オンライン教材も駆使

ドイツ語と算数は毎日の課題に加えて、指定されたオンライン教材に各自のアカウントでログインして勉強ができるようになっています。小学1年生からコンピュータを使った授業があり、比較的どの生徒もゆっくりと片手でタイピングができる程度になっているので、家庭で使うときに親の手伝いがそこまで必要ではありません。

ドイツ語は、「聞く・読む・書く」の練習ができるものや本を読んでその本に沿った問題を時間内で解いてポイントを貯めていく、という子供が楽しみながら学べる教材が使われています。1日当たり20分を目安にオンライン教材とともに読書をすることになっています。そして算数は、足し算・引き算・倍数などゲーム感覚で学べるものが使われ、毎日10分程することになっています。

進行状況は先生がチェックできる仕組み

オンラインの教材は、各自それぞれのペースで進めていくようになっていて、担任の先生は各生徒の進行状況がチェックできる仕組みになっています。

ドイツ語が母国語でない子供にはプラスでサポート

スイスでは4つの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、もしくはロマンシュ語)があり、地域によって言語圏が分かれ、チューリヒ州はドイツ語圏に属しています。地域によって差はありますが、学校に通っている子供たちにとって、現地の言語が第2言語や第3言語であるという子供はめずらしくありません。娘たちもそのひとりで、そのような子供たちは幼稚園の頃からDAZ(Deutsch als Zweitsprache)と呼ばれる専門の先生によるドイツ語の特別授業を受けることになっています。

個々の生徒の能力に合った課題で休校中も無理なく言語学習

通常の学校においてもドイツ語の宿題がでるときは、DAZの授業をとっている生徒にはそれぞれの語学能力に合ったドイツ語の宿題が与えられていました。休校中もそのことを配慮して、担任の先生とドイツ語の先生が連携しながら個々の生徒にあった宿題が割り当てられています。

自宅学習に慣れ始めた3週目、担任の先生とドイツ語の先生それぞれから子供の様子をうかがう電話がかかってきました。せっかく現地の学校にも慣れ始めたところでの休校で、娘のドイツ語が劣ってしまうのではないかと先生に相談すると、自宅で娘が読めそうな本とドイツ語の問題集、オンライン教材を追加で用意してくれました。

保護者としても初めてのホームスクールではじめは戸惑うことばかりでしたが、ひとりひとりのフォローアップを先生がしっかりとしてくれているのでとても心強く、子供たちのモチベーションも高めてくれています。

夫婦で分担して毎日の課題をクリア

子供たちの自宅学習は、基本的にドイツ語はスイス人の夫が担当し、算数、工作、書き方、音楽、体操は母親の私が一緒にするようにしています。休校が始まって3週間が経った今、自宅学習の日常の流れにやっと慣れてきた感じがします。

まずは時間割を作成

自宅学習が始まってからも、普段の学校生活と同じリズムを保てるようにまずは家族で時間割を作成。夫はミーティングがない時に子供に勉強を教える時間が確保できるよう、時間割と照らし合わせながら仕事のスケジュール管理をしています。子供の意見も取り入れながら時間割を一緒に作ったので、子供自身も時間を意識して勉強するようになっています。

課題は集中力が最大発揮されるときに完結!

小学生の長女は午後には集中力が下がってしまうタイプなので、集中力が最大限発揮されるはずの午前中に必須となっている一日の課題をすべて終わらせるようにしています。そして午後はゲーム感覚でできる指定のオンライン教材をするように。本人の調子がいい日悪い日がありますが、どうしてもダラダラしてしまうときは時間割を無視して、思い切って別のことをやらせて気分転換をしながらこなしています。

フレックスタイムを有効活用して仕事の合間に子供と勉強

子供たちの学校が休校になって特に生活に影響がでたのは、「共働き家庭」ではないでしょうか。現在スイスでは、可能な限り在宅勤務にするよう政府は企業に要請しており、主人もほぼ100%在宅勤務となっています。家で仕事をしながら子供の勉強も見なくてはならない状況の家庭も多く、朝の5~6時から夜遅くまで子供の面倒と仕事を夫婦で交代しながらこなす家庭や、どちらかが週末に働くようにして平日に働く量を減らすなど、夫婦で協力し合って乗り越えている家庭も多いようです。

子供の自宅学習にパパも協力

我が家では、主人は午前中のミーティングの合間に、子供とドイツ語の勉強をするようにスケジュール調整をしています。こんな時だからこそフレックスタイムを有効に使って、パパにも子供の自宅学習に協力してもらい家庭との両立を図ってもらっています。

自宅学習をはじめて見えた子供の学び

ディスタンス・ラーニングが始まり自宅で学習するようになってから、子供と向き合う時間がいっきに増えました。普段の小学1年生の宿題は、基本的に自分ひとりで10分でできるものしかでていなかったので、学校でいま何を学んでいるのか漠然とした内容しか把握していませんでした。

しかし、子供が自宅で学習するようになってから、学校での勉強のやり方を子供が話してくれたり、子供の得意・不得意の分野などが細かく見えてくるように。この休校期間で得た子供と向き合う時間を有効に使っていきたいですね。

 

参考文献

※1 スイスインフォ

※2 チューリッヒ州教育局

 

文・構成/ss

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