大人になってもずっと大切とされることだからこそ、子どものうちから身につけておきたい「食事のマナー」。とはいえ、まだ幼い子どもにどこまで教えるべきかは、なかなか悩ましいところ。それ以前に、子どもに正しくマナーを教えることができるのか、そもそも自分はお行儀よく食事できているのか、不安に思うママパパもいるかもしれません。
そこで今回は、まずは大人でも間違えがちな和・洋のテーブルマナーをそれぞれおさらいします。その上で、小学校入学までに身につけておきたい簡単な食事のマナーをご紹介。さらに、先輩ママパパたちが試してみた食事のマナーの教え方や、お役立ち絵本もお伝えします。
お子さんの食事時のお行儀にお悩みのママパパは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
日本食の正しい食事のマナーをおさらい!
もっとも馴染み深いようで、実は誤りがちな「日本食」のマナー。お箸の扱い方や配膳の位置など、日々の食卓では「なんとなく」でやっているというママパパも少なくないかもしれません。ここでは、大人なら気をつけておきたい基本的な日本食のマナーをおさらいします。
きらい箸はNG。お箸の扱い方に注意
和食のマナーといえば、まず思い浮かべるのがお箸の扱い方ではないでしょうか。お箸は食材となった命と自分とを繋げてくれるもの。だからこそ、丁寧に扱うべきと古来から考えられてきたようです。その扱いにはルールがあり、「きらい箸」と呼ばれるタブーもさまざまに存在しています。以下では、そんなお箸のNGな使い方の代表例をまとめてみました。
大人でもうっかりやってしまっていないか、要チェックです。
【渡し箸】器を横切るように縁にお箸を渡すこと。箸置きを使うのが◯。
【箸渡し】お箸とお箸で、だれかと同時におなじ食べ物を掴むこと。
【持ち箸】お箸と器などをおなじ手で同時に持つこと。
【刺し箸】お箸を料理に刺すこと。
【指し箸】箸先で人や物を指すこと。
【迷い箸】料理の上で、お箸を迷わせること。
【寄せ箸】お箸を使って器をじぶんに引き寄せること。
【ねぶり箸】お箸をしゃぶること。
左にごはん、右に汁物。配膳の位置
配膳の位置も日本食のルールのひとつ。一汁三菜を基本とし、食器の位置が決まっています。
・手前……左にごはん、右に汁物。
・奥 ……左に副菜、右に主菜。お新香など、副副菜がある場合は奥中央に配置しましょう。
この配膳の方法は、重要なものを左側に置く「左上位」と呼ばれる伝統に基づいたものといわれています。「左手ではお茶碗を、右手ではお箸でおかずを掴み、ごはんと交互に口へと運ぶ」という、バランスのよい食べ方をするためにも合理的な配膳になっています。
配膳の際も、お箸の置き方には要注意。お箸は食器類の一番手前に、箸先を左に向け、箸置きの上に置きましょう。
持ってよい器、持ってはいけない器
日本食では基本的に器を持つことがマナーとされています。しかし、すべての器を持ち上げて良いというわけではありません。
お茶碗や汁碗、小鉢や小皿のような手のひらに収まるお皿と、ごはんが盛られたお重や丼ぶりは手で持ってOK。お重や丼ぶりに顔を近づけて食べると、「犬食い」といわれ無作法になってしまいます。
反対に、焼き魚、煮魚、刺身のような主菜が盛られた大きなお皿や平皿は持ち上げNG。ひとくちサイズにほぐすか、小皿に一度取り分けてから口に運びましょう。
焼き魚の食べ方をおさらい
わかっているつもりでも、なかなか食べ方が難しいのが焼き魚。焼き魚の食べ方の手順も簡単におさらいしておきましょう。
1:頭が左を向くようにお皿に乗せます。
2:中骨に沿って横一文字に切れ目を入れ、まずは上の身を背側(お皿の奥)半分、そしてお腹側の(お皿の手前)半分を食べます。このとき、左から右に向かって食べていくことがポイントです。
3:上の身を食べたら、つぎは下の身。左手で尻尾を引き上げながら、お箸で下の身をおさえるように骨を外していきます。魚をひっくり返すのはNG。外した頭や骨は、お皿の左上に集めて置きましょう。
4:残った身も、背側半分、お腹側半分を順に食べます。
手皿はマナー違反。食べ方のNG
そのほかにも、日本食にはやってしまいがちな「NGな食べ方」がさまざまにあります。たとえば、料理を口に運ぶときにお箸を持たない方の手を下に添える「手皿」。基本的に器を持つことが正しいマナーとされる日本食ではNGとされています。大皿など、持ち上げてはいけない器から料理を口に運ぶ際は、いったん取り皿へ移しましょう。
熱い料理に息を吹きかけ冷ますのも、実はNG行為です。また、うどんやそばなどの麺類を除き、食事の際は音を立てないように要注意。
洋食の正しい食事のマナーをおさらい!
ふだんの食卓では馴染みがなくても、大人なら知っておきたい「洋食のテーブルマナー」。結婚式や会食へのお呼ばれの時や、ちょっと特別な日の外食時など、もしお子さんから訊ねられても困らないように、今一度ここでおさらいしておきましょう。
カトラリーは両端から使う
座席に着くとまず目に入るのが、テーブル上にずらりと並ぶ「カトラリー」。大小さまざまなナイフやフォークの数々に、いつどれを使えばいいのか戸惑ってしまうこともあるかもしれません。けれども、そんなカトラリーの使う順番は、ルールをひとつ覚えておけば心配ご無用。
カトラリーは、両端から順番に使っていくと、料理の種類とちょうど合うように置かれているのです。
まずは右端のスプーンでスープを。お次は、そのお隣の(右端に繰り上がった)ナイフと左端のフォークでオードブルを。使用済みのナイフとフォークはお皿とともに下げてもらい、次の料理が来たら、また両端のナイフとフォークを使って……。というように、外側から順にカトラリーを使っていくと、魚料理を食べるタイミングではちょうどフィッシュナイフ&フォークが、肉料理のときにはちょうどステーキナイフ&フォークが両端にやってきます。
もし間違えてしまっても、ウエイターさんがすぐに対応してくれるので大丈夫。
カトラリーを一旦置きたいときは?
飲み物を飲むときなど、カトラリーを一度手離したい時は「ハの字」にしてお皿の縁に置きましょう。「ハの字」に置くことが「まだ食事の途中」のサインになるので、手を止めていてもお皿を下げられることはありません。
食べ終わった際は、ナイフを奥、フォークを手前側に揃えて、お皿の右斜め下部に置きます。
ナプキンはどう使う?
ナプキンは、食事が運ばれるまでに、二つ折りにして膝の上にかけておきましょう。お腹側に折り目が来るようにかけるのが◯。ナプキンで手や口を拭いた際は、その都度、汚れた部分が内側に隠れるように折りたたんでいきます。
もしも食事の途中で席を立つときは、軽くたたんで椅子の上に置きましょう。食事が終わって店を出るときは、 ナプキンはたたまずにテーブルの上に置いておきます。
パン、スープ、お肉……それぞれどう食べればいいの?
洋食にも、食べ物ごとに日本食とはまた異なった食べ方のルールがあります。同じ食材でも料理の仕方によって異なることがありますが、ここでは基本的なルールを簡単にご紹介します。
スープ
音を立てずに。イギリス式のテーブルマナーでは奥から手前へ、フランス式なら手前から奥へとスプーンを動かしスープを掬います。
パン
そのままかぶりつくのはNGです。ひと口ずつちぎりながら口へ運んでいきましょう。
お肉
左端から、ナイフでひと口ごとに切り分けながら口に運んでいきます。
魚
中骨の下にナイフで横一文字に切り目を入れ、まずは、背中側の身から、次にお腹側の身を食べましょう。お肉と同様に、左端からひと口ずつナイフで切りながら食べていきましょう。
また、日本食とはちがって、基本的に食器を手に持つことはマナー違反とされているので要注意。
小学生になるまでに教えておきたい食事のマナーは?
日本食・洋食にかかわらず、複雑な食事のマナー。大人は知識として知っておけば気をつけることができますが、幼いお子さんにすべてを注意することはなかなか難しいことかもしれません。では、子どもにはどんなことから食事のマナーを教えていけばいいのでしょうか?
そんなお悩みをお持ちのママパパ向けに、ここでは小学生になるまでに身につけておきたい食事のマナーをまとめてみました。
食事の前は手を洗う
食事のマナーとしても、健康習慣としても幼いころから身につけておきたいことのひとつが「食事前の手洗い」。風邪や感染症予防のためにも、食前には欠かさずに手を清潔にするように教えてあげましょう。
「いただきます」「ごちそうさまでした」のあいさつ
食前の「いただきます」や食後の「ごちそうさまでした」のあいさつも、幼いうちに習慣づけておきたいマナー。料理をしてくれた人や食べ物に感謝の気持ちを表すためのあいさつであることも、ぜひ教えておきたいところです。
姿勢は正しく
日本食・洋食にかかわらず、ごはんを食べるときに「姿勢を正す」ことはマナーの基本。食事中にはできるだけ席を立たないことや、肘をついたり膝を立てたりしないことも、幼いうちから少しずつ気をつけておきたいポイントです。
きれいに食べることを心がける
そのほかにも、音を立てて食べないことや、口に物が入っている状態でしゃべらないことなど、食事相手が気持ちよく食事ができるような「きれいな食べ方」への心がけも大切なマナー。好ききらいや食べ残しをできるだけしないことの大切さも、きれいに食べることへの第一歩として教えてあげましょう。
先輩ママパパ実践! 食事のマナーの教え方
少しずつでも、子どものうちから習慣づけておきたい食事のマナー。けれども、お子さんがそれらを簡単に覚えてくれるとは限りません。では、先輩ママパパたちはどのようにお子さんに食事のマナーを教えているのでしょうか。アンケートに寄せられた回答を厳選してご紹介いたします。
気になったらその都度注意する
教えてもなかなか覚えてくれないことは、幼いお子さんなら普通のこと。アンケートには、三度の食事を実践の場と考え、根気強く「間違えていたらその都度注意している」という回答が多数寄せられました。時間はかかっても繰り返し教えてあげることによって「次第にマナーが身についてきた」という成功談も。
家族が見本になって真似させる
子どもはなんでも大人の見よう見まね。「ママパパがお手本となり、子どもにまねっこしてもらう」という教え方も、先輩ママパパたちおすすめの方法です。子どもにはなかなか馴染みがないことでも、ママパパがやっていればチャレンジしてみたくなるのかもしれません。
楽しく学べるように工夫する
「マナーを教える」とはいっても、せっかくの食事の時間は親子ともども楽しく過ごしたいもの。上手にできた際にはごほうびを用意したり、ごっこ遊びを取り入れたりしながら、楽しく学べる工夫をしているママパパも多いようです。
マナーを守る大切さを教える
どうしてお行儀をよくしないといけないの? お子さんによっては、そんな問いを抱く子もいるかもしれません。マナーを守るとどんないいことがあるのか、マナーを守らないとどう思われてしまうのか、しっかりと説明してあげることで、学んでみようという意識もより高まるかもしれません。
外食のときに教える
食事のマナーは「外食に訪れた際に教えている」というお声もいただきました。他にお客さんがいる環境で食事をすると、良い緊張感が生まれ、気分も上がるようです。なかには、実際にコース料理を前にして洋食のテーブルマナーを教えてあげているご家庭も。
食事のマナーがよくわかるおすすめ絵本・マンガ3選
お子さんに食事のマナーを教えるのなら、絵本やマンガの活用もおすすめ。絵や物語を通すことで、シチュエーションや目的への理解も深まります。ここでは、食事のマナーがよくわかる絵本やマンガをご紹介します。
『もったいないばあさんの いただきます』
もったいないばあさんの いただきます|作・絵:真珠まりこ|講談社|1,500円+税
子どもの「ものを大切にする気持ち」を育む「もったいないばあさん」シリーズ。本作では、さまざまな食べ物の役割を紐解き、お子さんの「どうしてすききらいはいけないの?」「どうしてのこしちゃいけないの?」といった疑問をユーモラスに解決してくれます。「いただきます」のあいさつの大切さが身に沁みる一冊です。
『テーブルマナーの絵本』
テーブルマナーの絵本|作・絵:高野 紀子|あすなろ書房|1,600円+税
やわらかく温かみのあるイラストと語り口で、本格的なテーブルマナーをていねいに紹介する絵本。お箸の使い方や、和・洋・中のテーブルマナー、季節の旬の野菜まで、食に関するさまざまな知識をかわいらしい動物の家族とともにじっくりと学べます。お子さんだけでなく、ママパパたちにも役立つ一冊。
ドラえもんの生活はじめて挑戦『おぼえておこう せいかつのマナー』 (ドラえもんのプレ学習シリーズ)
ドラえもんの生活はじめて挑戦『おぼえておこう せいかつのマナー』 (ドラえもんのプレ学習シリーズ) |キャラクター原作:藤子・F・不二雄|監修:矢田貝公昭|700円+税
小学校入学前後までには知っておきたい社会のマナーやルールを、ドラえもんがわかりやすく教えてくれる学習マンガ。レストランでのふるまいや、カトラリー・お箸の使い方など、食事のマナーはもちろん、交通ルールや公共マナー、ひとづきあいにおけるマナーまで。生活していく上で大切なお約束をマンガやクイズでたのしく学ぶことができます。
楽しさを工夫しながら、少しずつ習慣づけてあげましょう
食事のマナーは、食事の席をともにする人たちがお互いに気持ちよく過ごすために大切なもの。幼いお子さんにはなかなか難しいことも多いかもしれませんが、きれいに食べることを目指して少しずつ習慣づけてあげましょう。楽しさを工夫すれば、食事時の親子のコミュニケーションのきっかけにもなるかもしれません。
構成・文/羽吹理美