赤ちゃんの「疳の虫」とは
「疳の虫がおさまらない」などといいますが、実際に「疳の虫」という虫がいるわけではありません。まずは、疳の虫の正体について知っておきましょう。
夜泣きやかんしゃくを表す言葉
疳の虫とは、赤ちゃんの「かんしゃく」のことです。赤ちゃんは突然激しく泣き出したり、なかなか泣き止まなかったりすることがあります。
不快にさせる原因が見当たらないのに泣き出すことを、昔の人は「体の中で疳の虫がうずいているせいだ」と考えました。疳の虫を封じるための治療や祈願なども行われていたほどです。
とはいえ、実際に虫が体内で悪さをしているわけではありません。人はそれぞれ異なる気質を持っており、赤ちゃんも同様で、夜泣きやかんしゃくには個人差があります。
生後6カ月から8カ月ごろに多く見られる
赤ちゃんの「疳の虫」に悩まされるのは「生後6~8カ月ごろ」に多いとされます。しかし、その時期は人それぞれで、すぐにおさまる子もいれば、長く続く子もいます。2~3歳ごろまで続くことも珍しくありません。
赤ちゃんの成長過程の一つと捉えられるとよいのですが、毎晩のように家中に響き渡るほどの大声で泣かれると、親もまいってしまいます。あまりにつらい場合は、小児科医や保健師に相談することも考えましょう。
具体的にどのような症状が出るの?
「疳の虫」と呼ばれる症状は、大泣きすることだけではありません。さまざまな場面で親を困らせる疳の虫には、具体的に次のような症状があります。
ひどい夜泣き
赤ちゃんの「夜泣き」は、乳幼児を育てる親の代表的な悩みの一つです。お腹が空いているわけでも、オムツが汚れているわけでもなく、泣いている原因がはっきりしません。
なかなか泣き止まなかったり、寝たと思えばすぐ泣いたり、ひきつけを起こすのではと心配になるくらい真っ赤になって激しく泣くこともあるでしょう。
また、夕方になるとなぜか毎日泣き出す、いわゆる「たそがれ泣き」も、疳の虫の症状の一つです。
物を投げる、噛むなどのかんしゃくを起こす
疳の虫は、寝ているときだけに起きる症状ではありません。ご機嫌で遊んでいたかと思えば、突然かんしゃくを起こすこともあります。
激しく泣き出す子や、物を投げたり人に噛みついたりする子もいるでしょう。中には、自分の頭を壁にぶつけたり、物で自分を叩き始めたりする子もいます。
原因が推測できる場合もあれば、まったく分からない場合もあるでしょう。いずれにせよ、疳の虫が出たときは、なだめてもすぐにはおさまらないことがほとんどです。
ヒステリックに奇声をあげる
キーキーと「大きな奇声をあげること」も疳の虫の症状の一つです。なぜかイライラして怒りっぽくなり、遊びに集中しないこともあります。強く叱られると興奮が強まり、さらに激しく奇声をあげることもあるでしょう。
また、赤ちゃんのイライラは、他の行動で現れることも少なくありません。食が細くなったり物音に過敏に反応したりする赤ちゃんもいます。
疳の虫に関する体験談
HugKumでは、0~2歳のお子さんがいるママやパパに、お子さんの疳の虫についてアンケートでお聞きしました。体験談をご紹介します。
疳の虫の原因は?
疳の虫が強い子もいれば、かんしゃくをあまり起こさない子もいます。では、この強弱を決定する原因は一体何なのでしょうか。疳の虫の原因について解説します。
生活リズムが不規則になっている
原因の一つとして考えられるのが「不規則な生活リズム」です。
ほとんどの場合、生まれたばかりの赤ちゃんには昼夜の区別はありません。生後3~4カ月ごろになると、夜にまとまった睡眠を取り始める子が増えてきます。
規則正しいリズムで生活できていないと、赤ちゃんのイライラを招く原因となりかねません。
毎朝決まった時間に起きて太陽の光を浴び、活発に動く時間帯に十分に体を動かしてあげることが大切です。規則正しい生活を送り、赤ちゃんに安心感を与えてあげましょう。
自分の気持ちを伝えられない苛立ち
気持ちを伝えられない「苛立ち」から、かんしゃくを起こすこともあります。
自分の中で納得できないことが起こったとき、言語能力が未熟な赤ちゃんは言葉によってそれを伝えることができません。それがかんしゃくとして表面に現れたものが、大人には疳の虫に見えるのです。
多少おしゃべりができるようになっても、気持ちのすべてを表現できるわけではありません。興奮していれば、なおさら言葉にできないでしょう。
また、思い通りにならないことを我慢するのはまだ難しいため、かんしゃくを起こすのは仕方ないことだともいえます。
生まれ持った気質
疳の虫の原因は、「神経性素因」が関わっているといわれています。つまり、かんしゃくを起こすかどうかは「生まれ持った気質」によるところが大きいのです。
おっとりした気質の子は、普段から感情の起伏が少ないでしょう。反対に、神経質でデリケートな子は、周りの変化に敏感に反応を示すのです。
疳の虫って治療はすべき?
疳の虫が強すぎると「異常があるのでは」と心配になることもあるでしょう。ここでは、疳の虫をどう捉えたらよいのか、また治療すべきかどうかについてまとめました。
個性の一つと考えよう
疳の虫が強さは、赤ちゃんそれぞれが持つ「個性」の一つと考えましょう。
赤ちゃんは感受性が強く、さまざまな刺激に対して大人よりも敏感に反応します。言葉を持たない赤ちゃんが、刺激を受けたことを伝えるために泣くのは普通のことです。それを強く表現するかしないかは、赤ちゃんの個性によって異なります。
大切なのは「普段の様子をよく観察し、体調に変化がないか」を見極めることです。日中のご機嫌な時間帯に、笑ったり遊んだりできていれば心配する必要はないでしょう。
疳の虫封じの祈祷がある
赤ちゃんの夜泣きやかんしゃくは、昔から親を悩ませてきました。そのため、子どもがかんしゃくを起こすと「疳の虫のせいだ」とされ、原因となる虫を封じようと祈願することもあったのです。
この祈願は「虫封じ」「虫切り」などと呼ばれ、現在でも各地の神社で行われています。その方法は、祈祷(きとう)によるものであったり、護符を使うものであったりさまざまです。赤ちゃんの健やかな成長を願うおまじないの一つであり、医学的な根拠はありません。
ただ、おまじないを受けたことで親の心が落ち着き、それが赤ちゃんに伝わり疳の虫を落ち着かせる可能性もあるので、疳の虫にひどく悩まされているのであれば頼ってみてもよいでしょう。
昔は呪語と塩を使った虫の出し方もあった
昔は、呪術を用いて赤ちゃんから疳の虫を取り出すことも行われていました。
細かな部分は行われる場所により異なりますが、赤ちゃんの手のひらに墨で呪いの言葉を書いてから塩水で洗い、その手が乾いてくると指の先から細い糸状の疳の虫が出ていくそうです。現代では、この細い糸の正体は、実は塩水に仕込まれた布の繊維だといわれています。
疳の虫が出たときはどうする?
「不規則な生活リズム」「気持ちが伝わらない苛立ち」「赤ちゃんの気質」の三つが、疳の虫を起こす原因になる可能性があることは前述の通りです。それぞれの原因に応じた対処法について詳しく紹介していきましょう。
生活のリズムや環境を整える
赤ちゃんの心は、規則正しい生活リズムの繰り返しで安定してきます。生活リズムが不規則になっている場合は、規則正しい生活を送るための環境作りから始めてみましょう。
産後すぐや仕事に復帰したときなど、環境に変化があったときほど、赤ちゃんの生活リズムを親の生活リズムに合わせてしまいがちです。大変な時期こそ、なるべく同じ時間に起きて毎日同じ生活をすると、疳の虫への効果があるかもしれません。
また、夜寝る前はテレビを見せたり興奮させたりするなど、睡眠を妨げるような刺激を与えないこと、朝は太陽の光を浴びるなど、正しい生活リズムをつくる環境づくりも意識してみましょう。
抱っこして安心させる
苛立ちからかんしゃくを起こしているときは、スキンシップが有効です。言葉が分からなくても「きっとこうしたかったんだね」と、子どもの心に寄り添うだけでも落ち着くことがあります。
スキンシップには、不安な心をなだめる効果も期待できます。赤ちゃんは信頼する親と少し離れるだけで強い不安を感じるのです。そのようなときは、抱っこして優しく声をかけると赤ちゃんも安心できます。毎回すぐに泣き止むとは限りませんが、焦らず根気よく付き合ってあげるとよいでしょう。
夜泣きがおさまらないなら起こしてみる
夜泣きがおさまらないときは、半分覚醒した状態で寝ぼけて泣き続けているのかもしれません。抱っこや背中をトントンしても落ち着かないようであれば、電気をつけて一旦起こしてしまうのも一つの方法です。
完全に起きてしまうともう一度寝かしつけなければいけませんが、夜中の泣き声は親にとっても大きなストレスになります。泣き止んで落ち着いたほうが、すんなり寝てくれることもあるでしょう。
部屋を出て気分転換させたり、赤ちゃんが好むといわれるホワイトノイズやビニールを丸める音を聞かせたり、何か赤ちゃんの気をそらす方法を見つけるのもよい対処法です。
疳の虫は一時的なもの、いずれは落ち着く
原因の分からない赤ちゃんの夜泣きやかんしゃくは、子育て中の親にとって大きな悩みの種でしょう。「疳の虫」が強いからといって、病気なわけではありません。まずは、考えられる原因を一つずつ取り除いてみてください。
赤ちゃんが成長して自分で心の整理がつけられるようになれば、疳の虫は自然と落ち着きます。しかし、もし限界を感じているなら、決して無理をせずに、家族や医師、保健師に相談してみましょう。
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構成/Hugkum編集部