子供を本好きにするために、親ができるアプローチ。麻布学園国語科教諭に聞いた

子供の性格別に本のすすめ方をレクチャーします!

本は人生を豊かにするものです。小さな頃に限らず、親としては子供にたくさん本を読んで欲しいと願いますが、子供にはそれぞれ個性があり、型通りのすすめ方では興味を持たないということも。では、そんなときはどうしたらよいのでしょうか。今回は子供のタイプ別に、子供への本のすすめ方とアプローチをご紹介します。

親の言うことを聞く子・聞かない子には

親の言うことを聞く子の本選びは自由にさせて、子供の興味を知りましょう

親の言うことを素直に聞いてくれる子には、「頑張り屋さん」の傾向が見られます。お母さんやお父さんの望みを裏切らないよう、期待に応えようとしていつも頑張っているので、たとえそれがいやなことでも、がまんしてやってしまうことさえあります。
そんな子に対しては、親が読ませたい本をどんどん押しつけてしまっているということもあるので、ときには子ども自身に読みたい本を選ばせる機会を設けてみましょう。子供の選ぶ本が親の選ぶものと違えば、あらためて「この子はこんな本に興味があるのか」と気づかされます。あまり与えたくないような本であることもありますが、まずは子どもの希望を受け入れてあげましょう。

親の言うことを聞かない子には、まずは本を読む環境整備から

また、親の言うことを聞かない子は、常に反発してしまい、何もかもが一筋縄ではいきません。こういう子は、主張することで成長しているとも言えます。言うことを聞かないのですから、親が「この本を読むといいよ」とすすめても、すんなりとは読まないかもしれません。でも、自分が読みたいものをさっさと選んで読んでいることもありますし、親が話していることには、こっそりと聞き耳を立てていることもあります。
このような場合、リビングに本を置いてみたり、何気なく子どもの気をひくような会話をすると、興味を持つことがあります。また、「◯◯ちゃんも読んでいたよ」「これ、はやっているみたいだね」などと、遠回しに話してみるのもいいですね。
言うことを聞かない子には、ついあれこれ言ってしまいがちですが、実は必要以上に親子関係が密着していたりするものです。子どもに親のことばが響かなくなり、人との関係性も軽視するようになることがあります。ですから、ときには親が言いたいことをこらえるのも必要です。あえて助言せず、見守ることで、子どもが親のことばに耳を貸すようになるかもしれません。

無口な子・おしゃべりな子

無口な子には積極的に、淡々とゆっくりペースの読みきかせが◎

あまりおしゃべりしない、どちらかと言うと無口な子供には、積極的に絵本の読み聞かせをしてください。肩の力を抜いて淡々と、ゆっくりしたペースで読んであげるといいでしょう。ときには子供の気持ちをくみとりながら「楽しいね」「きれいだね」など、

少しだけ感情移入したことばを添えるのも効果的です。
ただし、多弁になりすぎないよう注意してください。無口な子はそうでない子と比べると、どこか時間の流れ方が違うようです。ことばには出さなくても、自分の中で感じ、考える、内省的な傾向が強いのです。だからこそ焦って情報をつめこむのではなく、その子のペースで本を楽しむ時間を確保してあげましょう。

おしゃべりな子にはしっかりとしたストーリーの昔話がオススメ

おしゃべりな子は、ことばの発達が早いと思われがちですが、実は話の組み立てが苦手だったりします。後先を考えずに話し始めたり、気をひくために意味のない発言で割りこんだりすることもあるでしょう。そういう子には話し方や組み立てにメリハリを利かせることを学ばせたいものです。それには、ストーリーがしっかりと組み立てられている昔話などがおすすめです。日ごろから親しんでいると、昔話は起承転結が明確なので、話し方のコツをつかめるでしょう。せっかく話すのが好きなのですから、ぜひ人をひきつけるような、説得力のある話し方を身につけさせたいですね。

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外遊びが好きな子・うち遊びが好きな子

外遊びが好きな子はシンプルで冊数の多いシリーズものがオススメ

外遊びが好きな子は、どちらかと言うと飽きっぽいので、ストーリーが複雑なものよりは、シンプルな絵本を選んであげるといいでしょう。たとえばミッフィーシリーズなど、良質ですぐに読めるものがおすすめです。内容が単純で短いもので冊数をかせぐと、子供は「たくさん読んだ」という、満足感が得られるはずです。一冊読むたびにシールをはるなど、目で見える工夫も効果的です。
できれば自分で読んでもらいたいと思うかもしれませんが、外遊び派には、お母さんが読んであげた方がいいでしょう。そうして数をこなすうちに、自然と字を覚え、絵本の楽しさを感じられるようになると思います。

うち遊び好きな子は緻密に描かれた動植物の絵本を選んでみましょう

うち遊びが好きな子には、自然について書かれた絵本を選ぶといいでしょう。あまり外で遊ばないからこそ、自然の美しさ、不思議さに目を向けさせたいからです。植物や動物、里山の風景、昆虫などを、精密な絵で描いた絵本はたくさん出版されています。まず窓の外や庭などに注目するきっかけをつくり、公園や幼稚園・保育園の花壇などへ注意を導きましょう。その流れで動物園などに連れていってもいいでしょう。
無理に外へひっぱり出さなくてもいいのですが、絵本を通して外の世界、人間以外の生物の世界を教え、少しずつ視野を広げてあげてください。

物語に関心のある子・図鑑に関心を持つ子

物語の好きな子こそ少し易しい内容の本から始めてみては

物語が好きな子は、本が好きで一人でも読み始めることが多いものです。それだけで「うちの子は読解力がある」と期待するのは、少し気が早いかもしれません。物語が好きで読んでいても、実はその内容を十分に理解していないこともあります。読めるとなると、親はつい「より難しい本」を与えたくなりますね。しかし、親の期待が大きすぎて、身の丈に合わない本ばかり与えられていると、本が嫌いになってしまうかもしれません。
物語に関心のある子供には、少し易しい本を与えたり、本人が読みたい本を自由に選ばせてあげることです。次第に飽きたらなくなり、「もっと難しい本が読みたいな」と、読書への意欲を見せたらしめたものですね。もともと、本を読むことに抵抗がないだけ恵まれているのですから、その子のペースを大切にしてください。

図鑑好きには、存分に与えて興味を伸ばしてあげて

対照的なのが、図鑑系の本に関心を持つ子どもです。物語の筋書きを追うよりも、ものの名前やしくみの解説などに関心が高いのは、比較的男の子の方に多いかもしれません。テーマは、昆虫、車、船、飛行機、電車などでしょうか。
お母さんとしては「車の本ばかり見ている」「虫に夢中で他のことに関心が持てない」と心配になるかもしれません。しかし私は、子どもが図鑑に興味があるなら、それを与えてどんどん興味を伸ばしてあげればいいと思います。
できれば、図鑑の世界だけではなく、足を運んで実物を見せてあげてください。飛行機好きなら空港、虫が好きなら昆虫館など、探せばいろいろあるはずです。ただの飛行機好きから、やがて飛行機のメカニズムに関心を持ち、物理や工学的な分野にも関心を寄せるかもしれません。かと思えば、この前まで昆虫が好きだったのに、今は恐竜に興味が移っているといったこともあるでしょう。
幼児期の今は、その道のプロに育てることが目的ではありません。シンプルに、その子なりの得意なものを作ってあげることに徹しましょう。それが子どもの自信につながるのですから。

 

小学生になる前の子どもをもつ親の、バイブルとなるこの本

小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚

「小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚」

幼児期の子どもに最も大切なのは、周囲の大人が手と心をかけることです。麻布学園の国語科教師で一児の父でもある著者が、ことばの力をつけるために家庭でできることを一冊の本にまとめました。幼児期にやるべきことだけでなく、安心して小学校生活に入れるよう、入学後の国語力のつけ方、辞書の使い方、自由研究などについても紹介しています。巻末には223冊のおすすめのブックリスト付きです。
/小学館 本体1,300円

中島克治著(麻布学園国語科教諭)
麻布中学・高校を経て、東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進んだ後、麻布中学・高校国語科教諭となる。著書に『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』『小学生のための読解力をつける読書紹介文ノート』『中学生のための読解力を伸ばす魔法の本棚』『本物の国語力をつけることばパズル』(全て小学館)がある。
出典/『小学校入学前にことばの力をつける魔法の本棚』 再構成/HugKum編集部 写真/繁延あづさ

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