子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴47年、常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。
友達とつるんで、1人の子に嫌がらせを! いじめに繋がらないか心配
小学1年生です。先日、担任の先生から電話がありました。クラスの男の子がトイレの個室に入っているのを、友達と一緒にドアの隙間から覗いたり、ドアを蹴ったりしたそうです。先生からは「息子さんは、周りの子に流されて一緒にやったようですが、私が“やった子は申し出なさい”と言っても、最初は手を上げませんでした。そのため“先生、やった子のこと知っているよ。もし自分から言わないなら、家庭に連絡するからね”と言ったら、手を上げました。実は、以前にも息子さんを注意したことがあり、今回の件は学年の問題として校長先生も含めて話し合いました。学校でしっかりと叱ったので、家庭では“なぜ、そんなことをしたのか?”理由があるなら聞いてあげてください」と言われました。
そのため息子に理由を聞くと「面白くなってやっちゃった」と言うのです。学校でしっかり叱ったというので、私からは厳しく叱りませんでしたが「相手の子の気持ちを、もっと考えなさい」と言いました。
息子のこうした行動は、親の愛情不足でしょうか。本当に危ないことやいけないことは、腕をつかんだり、怒鳴ったりして叱ったこともあります。そうした叱り方がいけなかったのでしょうか。
息子はサッカーが大好きで、サッカー以外のことには興味がない感じの子です。でも昨日は思わず「サッカーはチームプレーだから、友達や仲間の気持ちをわからない子は、サッカーはやらせない!」「サッカーよりも、まずは学校が第一だよ」と言いました。後から「サッカーと学校のことを結びつけたのは、かわいそうかな!?」と思いましたが…。ただ、いつか息子が“いじめ”に加担するのではないかと心配です。(1年生の男の子のママ)
小学生は、つるんで悪さをすることを覚える時期です
小学生になると、友達とつるむのが楽しくて、つるむと“自分は強い!”と勘違いし始める年齢です。仲間関係の絆も強くなった気がして、図に乗っていきます。しかし、今回のようなことがあると見つかって、親や先生に叱られます。こうしたことの繰り返しが“つるんで悪さをするのは人として恥ずかしい”という自覚を促します。お母さんは、愛情不足や育て方がいけなかったのか悩んでいますが、そんなことはありません。健康な育ちです。
子どもの心に響くのは、お母さんの正直な思いをシンプルに伝えること
しかしサッカーと結びつけたのはいただけません。親の思いを伝えるために、大好きなサッカーで罰を与えるのは感心できません。好きなことを取り上げたり、交換条件を出したりして教えていくのは、子どもの心には響きません。シンプルに、正直に「こんな事をしてほしくない!」ということを伝えるだけで十分です。「つるんで、1人の子に嫌がらせをするような卑怯な子に、お母さんはなってほしくない!」と伝えたほうが、息子さんはわかってくれると思います。
声のトーンや顔の表情などを通してお母さんの真剣さが伝わります。
将来いじめに加担することを心配していますが、まだ小学1年生だから、あまり深く考えなくてもいいでしょう。今の時期は多少の後ろめたさはあっても、罪悪感はないので、目を離さず問題が起きたら、その都度子どもと向き合って、きちんと叱れば大丈夫です。
教えてくれたのは
保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて36年。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。
イラスト/海谷泰水