【医師監修】赤ちゃんの目はどのくらい見える? 新生児の視力とチェック法

新生児はほとんど目が見えていないといわれていますが、いつから見えるようになるのでしょうか?

そこで、新生児の目の発達、視力のチェック法、新生児の目や視力の心配事や原因・対策、目の病気、目や視力のケア方法について、医師監修のもとご紹介。産まれて間もない赤ちゃんの視力に関する情報をまとめて解説します。

新生児の視力はいつから発達?

新生児の視力
新生児の視力はどのくらいあるの?

 

産まれたばかりの赤ちゃんは、まぶたを開けても周囲をなんとなくボヤっと見ているように見えます。それもそのはず、新生児は大人と同じように周囲の世界が見えているわけではありません。新生児の視力は、いつからどんな風に発達していくのでしょうか?

新生児の目の発達

赤ちゃんの視力は産まれた後、どんな過程で発達していくのでしょうか。出産から1歳になるまで、順に見てみましょう。

新生児

産まれたばかりの赤ちゃんは、まぶたを開けることができますが、視力は0.01前後でほとんど見えていません。周囲が明るいかくらいか把握できる程度で、色の区別もつきません。

生後1週間くらいになると自分の近くのものを認識できるようになり、自分の目の前によく現れるママやパパの顔を認識するようになります。

さらに生後1~2か月になると、ママやパパの笑顔に対して、赤ちゃんが微笑み返す様子も見られるようになります。これは、視力が発達して特定の人の顔をきちんと理解できている証拠です。

生後3か月

生後3か月の赤ちゃんの視力は0.05程度になり、動くものを目で追ったり、近くのものを見るときに上手にピントを合わせたりできるようになっていきます。また産まれてすぐは白・黒・グレーの色しか認識できませんが、この頃から赤や緑など他の色を少しずつ認識できるようになります。

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生後6~9か月

生後6か月の視力は0.1前後、9か月には0.2前後まで発達します。ちょうど6か月くらいになるとお座りができるようになり、これまで寝ているだけだった視線が高くなります。この刺激によって、赤ちゃんの視力はさらに上がっていきます。人の顔の区別がつき、人見知りが始まる赤ちゃんが出てくるのもこの頃です。

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1歳以降

1歳になると視力は0.2前後で、物の奥行きを認識できるようになっていきます。おもちゃを触って遊ぶなどしながら、視力もさらに発達していくようになります。こうして6歳頃に視力が1.0までになり、目の機能がほぼ完成します。

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新生児の視力のチェック方法

新生児の赤ちゃんの目が順調に発達しているのか、どうやってチェックするのでしょうか?

視力検査はいつ?

生後1か月の赤ちゃんに行われる1か月健診で、赤ちゃんの斜視と視覚について確認します。斜視は両目の視線が同じ方向を向かず、片側の目だけ別の方向に向かっている状態をいいます。検査では、音が鳴るおもちゃなどを使って赤ちゃんの興味を引き、赤ちゃんの目がどう動くか確認します。

目の動き

新生児の赤ちゃんは、目の前に急に何か物が見えてもまばたきをしないことがあります。これは「脅迫反射」と呼ばれるもの。生後2~3か月くらいになると、まばたきをするようになります。またひとつの物をじっと見つめる「固視」や、動くものを目で追いかける「追視」も、生後2か月以降に始めるようになります。

目が見えない赤ちゃんの特徴

視力が順調に発達した赤ちゃんは、動く物を目で追ったり、パパ・ママと目が合ったりします。でも赤ちゃんの目になんらかの異常が起きている場合は、そのような行動が見られないでしょう。片目を隠すと嫌がるようなら、どちらか片側の視力に頼って物を見ている可能性もあります。

新生児の目や視力の心配事、原因と対策

言葉を交わして目が見えているか確認できないため、新生児の赤ちゃんの目や視力のことで心配を感じる方もいるかもしれません。新生児の赤ちゃんの目で次のようなことがあった場合、それぞれの原因と対策をご紹介しましょう。

目が開かない、片目だけ開かない

赤ちゃんの目が開かず、片目だけ開けている場合などは、眼瞼下垂(がんけんかすい)の可能性があります。これはまぶたが垂れて目が開きにくい状態のことで、ほとんどが先天性のものです。眼瞼下垂が重度の場合は、手術によって開くように治療します。全く開かない様であれば、早期手術が必要なことがあります。

しかし、通常は大きくなってから手術することが多いです。異常に感じた場合には早めに眼科医に相談するとよいでしょう。

寄り目、斜視っぽい

赤ちゃんの目が寄り目になったり、片側は別の方向を見る「斜視」になったりすることもあります。これは、新生児の赤ちゃんの目がまだ発達段階で、機能がきちんと備わっていないことが原因として考えられます。病気などの異常が見つからなければ、生後数か月たつと自然と治っていく可能性があります。

1m位離れたところから、顔をまっすぐに向けて注意を引いてから、フラッシュを使ってスマートフォンで写真を撮ってみましょう。どちらの目も黒目の真ん中にフラッシュの反射が見ればまっすぐ向いています。もしどちらかが寄っていたり、離れていたりすれば、斜視の場合があるので、眼科医に相談しましょう。その時にはその写真を見てもらうのが一番です。診察となると泣いてしまう赤ちゃんも多いですが、写真一枚あるだけでだいぶ多くのことがわかります。

目の動きが異常に感じる

赤ちゃんの眼球が震えるように動くなど、異常に感じられる動きが診られた場合、「眼振(がんしん)」という症状かもしれません。視力が悪いことで起きている場合や、目を動かす神経に異常が見られる場合が考えられ、その原因にあわせて治療を行います。この場合にも眼科医に相談するとよいでしょう。スマートフォンの動画機能で撮影していると診断がつきやすくなります。

赤ちゃんの視力とテレビは関係ある?

赤ちゃんが泣き止まないときや、ママ・パパが家事や仕事で忙しいときなど、「テレビやタブレットを赤ちゃんに見せると静かになって助かる」という場面があるかもしれません。しかし小児科医会では、2歳まではテレビやDVDの視聴を控えるよう勧めています。

テレビやDVDなどは、赤ちゃんにとって魅力的に映ります。つい近づいて見る赤ちゃんが多いですが、そうすると赤ちゃんの視力にも影響を与える心配があるのです。長時間近くを見るのは近視の進行を促進してしまいます。長時間見せるのはやめたり、休憩をはさんだりするなど、工夫することをおすすめします。

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新生児が注意したい目の病気

新生児の赤ちゃんや子どもに起こる目の病気をご紹介します。

目の病気1:斜視

目を動かすと左右両方の眼球が同じ方向を向きますが、片側だけが別の方向を向いてしまうのが「斜視」です。片側の目の視力が弱いことが原因のことがありますが、はっきりした原因が不明なこともあります。

1歳未満で内側に寄ってしまうものは乳児内斜視といって、早急な治療が必要な場合があります。1歳以降で生じる内斜視には調節性内斜視などがあります。こちらは一般的に眼鏡を装用することによる治療となります。

外斜視といって、外れてしまう場合には手術が必要なことがあります。原因によって治療法が異なるので、心配な方は眼科専門医に相談するとよいでしょう。

目の病気2:結膜炎

白目の表面を覆う透明の膜に炎症が起こる「結膜炎」。赤ちゃんでも起こりやすい目の病気のひとつです。細菌やウイルスに感染して発生する場合や、ハウスダストや花粉などのアレルギーとして起きる場合があります。それぞれ抗菌や炎症を抑える点眼薬を使って治療します。

片目で起きるものは一般に感染のことが多いです。大人にもうつることがあるので、親が手洗いをしっかりして、タオルなどを共用しないことが大切です。アレルギー性結膜炎は生後6か月までは少ないですが、両目で目やにや充血が起きる場合には眼科医に相談しましょう。

目の病気3:鼻涙管閉塞

涙の通り道である「鼻涙管(びるいかん)」が詰まってしまうことを「鼻涙管閉塞」といい、目に涙や目やにがたまりやすくなる症状が見られます。産まれたときは、鼻涙管が開通していないことが多いことが原因と考えられています。1歳までに95%が自然に開通するといわれていますが、一度眼科専門医の診察を受けるとよいと思います。

目の病気4:その他

その他、まつ毛が内側に向いて角膜を刺激する「逆さまつげ(眼瞼内反)」や、先天性の白内障や緑内障などの病気があります。逆さまつげは成長とともに良くなってくることが多いですが、あまりに目やにが多いときや、心配な時には眼科を受診しましょう。

片目の黒目(茶目の中)が白かったり、片目の黒目だけ大きかったりした場合には早急に眼科受診をお勧めいたします。先天性の白内障や眼内の腫瘍、緑内障の恐れがあります。

新生児の目や視力のケア法

新生児の赤ちゃんの目や視力を守るために、ママやパパはどんなことができるでしょうか?

ケア法1:よく観察する

赤ちゃんの目を守るためには、ママやパパが赤ちゃんの小さな変化に気づくことが大切。涙目が続いていないか、物を動かして両目で追っているかなど、普段からよく観察しましょう。

ケア法2:目やにを無理やり取らない

赤ちゃんの目やにをとるときは、ガーゼを濡らしたもので優しくぬぐうようにしましょう。指などを突っ込んで無理やり目やにを取ろうとすると、角膜や周辺の皮膚を傷つけかねません。目やにが濃い黄色や緑色がかっている場合は、細菌感染の可能性があるため病院を受診しましょう。

ケア法3:マッサージ

目頭や鼻の付け根周辺を指で軽く圧迫するようにマッサージを続けると、鼻涙管が通りやすくなり、目やに対策になります。その場合には直前にしっかりと手を洗ってください。

赤ちゃんの視力は成長とともに発達する

赤ちゃんは、新生児のときから目が見えるものと思っていませんか。視力は、産まれてから6年という年月をかけてゆっくり発達していくものです。特に生後間もない時期は、目があまり見えていないということを理解しておきましょう。

記事監修

医療法人社団かわな眼科 院長 理事長
川名 啓介

1999年筑波大学医学専門学群卒業。
筑波大学附属病院、日製日立総合病院、総合病院土浦協同病院勤務を経て、2006年から筑波大学大学院 人間総合科学研究科 講師となる。
2009年千葉県松戸市でかわな眼科を開設。
“快適な眼で、人生に潤いを“を目指し、患者さんにわかりやすい医療を提供することを目指している。
専門分野:白内障、緑内障。
https://kawanaganka.com/

文・構成/HugKum編集部

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