世界トイレ・デー(11月19日)とは?その目的・歴史・由来、日本や海外の取り組みが興味深い!

想像しづらいことですが、世界では約20億もの人々がトイレのない生活を送っています。この記事では、世界が抱えるトイレや衛生問題を国際社会に喚起する「世界トイレ・デー」を取り上げます。「世界トイレ・デー」の目的・歴史・由来、日本や海外での取り組みを紹介。また、わたしたちひとりひとりにできることを考えてみました。

「世界トイレ・デー」ってどんな日?

わたしたちが毎日、当たり前のように使ってるトイレ。でも、ちょっと想像してみてください。「もしトイレがない生活を送るとなったら…」。実際、想像しづらいことですが、世界では約20億人がトイレのない生活を送っています。トイレがないことで、衛生面や環境面だけでなく、安心・安全な暮らしが脅かされています。

世界が抱えているトイレの問題を国際社会に訴えるために、国際連合(以下:国連)が制定した国際デーが「世界トイレ・デー」です。英語表記は「World Toilet Day」。今回は「世界トイレ・デーが」の目的・歴史・由来、日本や海外での取り組みなどを解説します。

世界の4人に1人がトイレのない暮らしを送っている

2017年に発表された国際連合児童基(ユニセフ)の調査によると、世界の総人口の約26%にあたる約20億人はトイレのない暮らしを送っています。世界の4人に1人という驚くべき数字です。

トイレのない生活を送る約20億人の大半は、バケツやビニール袋を使って排泄し、さらに約6〜7億人は道端や草むらといった野外で排泄しています。野外での排泄は、排泄物に含まれた病原菌を介して下痢やかぜなどの感染症が広がったり、地下水や農産物を汚染する危険性があります。また治安の問題もあります。

多くの人々がトイレのない生活を強いられている最大の理由は、国や地域の不安定な政治情勢や貧困によって、インフラの整備が後回しにされているためです。一部には、衛生習慣の違いや排泄行為に対する考え方なども理由になっています。

2023年の「世界トイレ・デー」はいつ?

2023年の「世界トイレ・デー」の日付と曜日を確認しましょう。

今年の「世界トイレ・デー」は11月19日金曜日

「世界トイレ・デー」は毎年11月19日に定められており、日付が変わることはありません。2023年の「世界トイレ・デー」は日曜日にあたります。過去3年と来年以降3年の曜日は、以下の通りです。

・2020年11月19日木曜日
・2021年11月19日金曜日
・2022年11月19日土曜日

・2024年11月19日火曜日
・2025年11月19日水曜日
・2026年11月19日木曜日

「世界トイレ・デー」とは?

国連が毎年11月19日に制定した「世界トイレ・デー」は、どのような意図や経緯を持って定められたのでしょうか。「世界トイレ・デー」の目的・歴史・由来を解説します。

目的

「世界トイレ・デー」を制定した目的は、タブー視されがちなトイレの問題を世界中に喚起し、トイレや排泄にまつわる衛生状況や衛生習慣の改善に取り組むためです。

トイレの問題は世界が2030年の達成を目指すSDGs、すなわち「持続可能な開発目標」の17の目標のうちのひとつとして、「6 安全な水とトイレを世界中に」が定められ、具体的な達成目標として「6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性および女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を向ける」が掲げられています。

歴史

2001年11月19日、世界のトイレ問題や衛生問題を考えるNPO「世界トイレ機関(WTO)」が設立され、「世界トイレサミット」を開催しました。WTOは翌年以降も11月19日を中心にトイレ問題、衛生問題を考える取り組みを展開。2013年に国連が11月19日を「世界トイレ・デー」を国際デーとして制定しました。

由来

トイレのない生活環境は、例えば、不衛生な環境から下痢性疾患を引き起こします。下痢はわたしたちが暮らす日本では、ちょっとした体調の変化で済まされる問題ですが、開発途上国では致命傷となり、年間約53万人の乳幼児が下痢で命を落としています。

また、思春期の子どもたち、特に生理を迎える女の子にとって、トイレの有無は切実な問題です。トイレがないために生理中は学校を休み、勉強についていけなくなり、最終的には退学するといったケースあります。命や健康を守ることはもちろん、人間としての尊厳を守るためにトイレは欠かせないものなのです。

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「世界トイレ・デー」の日本の取り組み

国連が定める世界トイレ・デーにおいて、日本では、どのような取り組みがおこなわれているでしょうか?  ここでは、日本国内で開催されている世界トイレ・デーに関するイベントや海外でのトイレ普及活動をご紹介します。

インドに公衆トイレを設置

日本の政府開発援助(ODA)実施機関であるJICA(国際協力機構)は、開発途上国に対する国際協力活動の一環として、上下水道の整備から地域に適した環境配慮型トイレの導入、住民に対する衛生・環境意識の向上などの取り組みを進めています。

例えば、インドでは1500個以上の公衆トイレを設置、さらにNGOを通じた公衆衛生キャンペーンや、学校での衛生教育などに取り組んでいます。

プライバシーのない排泄を疑似体験

建築材料・住宅設備機器大手LIXILは、開発途上国向け簡易式トイレシステムの製造・販売を行っています。日本国内においても「世界トイレ・デー」にあわせ、世界が抱えるトイレ問題への認識や関心を高めるためにさまざまなイベントを開催。

例えば、プライバシーがない場所での排泄を疑似体験できる「シースルートイレ」の展示などを行っています。

「世界トイレの日 記念ウェビナー」の開催

NGOのウォーターエイドジャパンは2020年11月19日にオンラインイベント「世界トイレの日記念ウェビナー」を開催。トイレに関するワークショップや、ウォーターエイドの衛生に関する取り組みや事例紹介などを行いました。

「世界トイレ・デー」の海外の取り組み

発展途上国でのトイレ普及を目指し、世界各地でユニセフやWTOが中心となった数多くのプロジェクトやイベントが開催されています。ここでは、世界トイレ・デーにおける海外のおもな取り組みを見ていきましょう。

ユニセフの活動

ユニセフ(国際連合児童基金)は1946年の設立以来、子どもたちを守ることを目的に、世界中でさまざまな活動を展開。水と衛生に分野もそのひとつです。これまでに開発途上国を中心にトイレの作り方を伝えたり、トイレづくりに必要な資材を届けています。またトイレの後の手洗い習慣など、衛生についての知識を広める活動も展開しています。

WTOの活動

2001年に設立された世界トイレ機関(WTO)の代表的なイベントが「世界トイレサミット」です。衛生・健康など、トイレが持つ重要性を議論する国際会議であり、2001年から毎年、開催されています。

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「世界トイレ・デー」に、わたしたちができること

世界中で多くの人々の健康・生命・尊厳を危険にさらしているトイレ問題。わたしたちにできることはあるのでしょうか?  SNSや寄付、ボランティア活動など「世界トイレ・デー」にできることを考えてみます。

SNSで「世界トイレ・デー」を広める

残念ながら日本では「世界トイレ・デー」はまだあまり知られていません。SNSを使って、「世界トイレ・デー」の存在を広めることができます。11月19日の「世界トイレ・デー」にあわせて、国際機関やNPO、NGOなどが世界のトイレ問題について発信します。そうした情報をさらに広めることができます。

水のムダ使いをやめる

世界のトイレ問題に直接貢献することは難しくても、SDGsの「6 安全な水とトイレを世界中に」の実現に向けて、いつでも水を豊かに使うことができるわたしたちは、水のムダ使いをやめ、水を大切な資源として大切に使うことに取り組むことができます。水道の蛇口をこまめに閉める、シャワーをだしっぱなしにしないなど、毎日の生活で節水を心がけることができます。

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トイレが当たり前に使えることの大切さ

清潔なトイレが毎日、何の問題もなく使える──わたしたちにとっては当たり前のことですが、世界から見れば、決して「当たり前」のことではありません。清潔なトイレを使えないために、小さな子どもが命を落としたり、学校に行けなくなっている現実があります。

11月19日の「世界トイレ・デー」は、言ってみれば、世界のすべての人たちがトイレを当たり前に使えるようになる日を目指しています。直接的にできることは小さなことかもしれませんが、水のムダ使いを止めるなど、わたしたちにできることを通して、日本中、世界中の取り組みをサポートしたいと思います。

文・構成/HugKum編集部

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今回の記事で取り組んだのはコレ!

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