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「教育を攻撃から守るための国際デー」ってどんな日?
紛争地域では、生徒や先生、学校の校舎などが危険にさらされています。学校や寮が襲われ、大勢の生徒が行方不明になっているというニュースを聞いたことがある方もいるでしょう。
こうした事態を世界中に訴えるために制定された国際的な記念日が「教育を攻撃から守る国際デー」です。英語表記は「International Day to Protect Education from Attack」となります。
まずは、この記念日が制定された目的・歴史・由来や日本や海外での取り組みなどを紹介します。
「教育に対する攻撃」は1日に約6件
教育に対する攻撃とは、学校(建物)や生徒・教師・教育関係者への攻撃、学校の軍事利用、学校や通学路での子どもの徴兵・徴用、子どもへの性的暴力などをいいます。
「教育を攻撃から守る世界連合(以下:GCPEA)」の報告によると、2015年~2019年の5年間で11,000件以上の教育への攻撃や教育施設の軍事利用などが発生。世界中で22,000人を超える生徒、先生、教育関係者が被害を受けました。
これは1日に約6件の教育に対する攻撃が起き、約12人が被害にあっている計算になります。
2021年の「教育を攻撃から守るための国際デー」はいつ?
国際連合(以下:国連)が国際デーのひとつとして定めた「教育を攻撃から守るための国際デー」。その日付はいつなのでしょうか。
今年の「教育を攻撃から守るための国際デー」は9月9日木曜日
「教育を攻撃から守るための国際デー」は、2020年に制定されたばかりの国際デーです。毎年9月9日と定められており、今年は9月9日木曜日です。昨年と来年以降3年の日付は以下の通りです。
・2020年9月9日水曜日
・2022年9月9日金曜日
・2023年9月9日土曜日
・2024年9月9日月曜日
「教育を攻撃から守るための国際デー」とは?
政治体制、歴史観や宗教といった思想の対立が原因で生まれる世界各地での紛争。その攻撃が学校や生徒、先生などに向けられることは悲しい現実です。
ここでは、国連が「教育を攻撃から守るための国際デー」を定めた目的・歴史・由来を解説します。
目的
「教育を攻撃から守るための国際デー」は、紛争下における武力攻撃から教育を守り、すべての人が安全な環境で教育を受けられるように、世界各国が責任をもって取り組むことを目的としています。
国連加盟国をはじめ、さまざまな国連機関・地域組織・NGO、世界中のひとりひとりに向けて、その重要性を訴え、具体的な対策の実施や行動を促進することが狙いです。
歴史
「教育を攻撃から守る国際デー」は2020年5月28日、中東の国・カタールが主導し、60ヶ国が国連総会に共同提案。全会一致で採択されました。
学校を軍事利用から守るための国際的な取り組みとしては、2015年に「学校保護宣言」が作られ、開校中の学校を軍事利用しないことを宣言。現在、世界の100以上の国が宣言に調印しています。日本は宣言文の作成に参加したものの、まだ宣言への調印は行っていません。
由来
世界各地で止むことのない紛争。そこでは、生徒や先生、学校の校舎なども攻撃の対象となっています。学校が破壊されてしまうのみならず、攻撃・誘拐・暴力に対する恐怖やトラウマから子どもたちが学校に通えなくなることも珍しくありません。
子どもや学校が攻撃されるということは、国や地域の発展や未来に悪影響を及ぼし、貧困や飢餓にもつながります。世界には、教育を受ける機会を奪われた子どもが3000万人いるといわれています。
「教育を攻撃から守るための国際デー」の海外の取り組み
2020年に定められた「教育を攻撃から守るための国際デー」は、始まったばかりの記念日です。この国際デーでは、どのような活動がおこなわれているのでしょうか?まずは、海外での取り組みや動きなどを紹介します。
教皇フランシスコの呼びかけ
第266代ローマ教皇のフランシスコは、1回目の「教育を攻撃から守るための国際デー」となった2020年9月9日、一般謁見の席でこの記念日に触れ、戦争やテロから子どもたちの学ぶ権利を守るよう呼びかけました。
また、学校の校舎が尊重されるよう国際社会に訴えました。
オンラインイベント
同じく2020年9月9日には「教育を攻撃から守るための国際デー」の提案を主導したカタール、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)、ユニセフ(国際連合児童基金)などのリーダーたちが参加したオンラインイベントが開催されました。
会議の参加者は「学校を作ることには時間がかかるが、いとも簡単に破壊されてしまう」との危機感が世界中に向けて発信、「子どもたちの命、教育、未来を守ることは国際社会にとって無視することのできない責任」とアピールしました。
「教育を攻撃から守るための国際デー」の日本の取り組み
日本国内でも「教育を攻撃から守るための国際デー」に関連した活動が展開されています。1986年に設立された「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の取り組みや高校生の活動を紹介します。
参加型オンラインイベントの開催
子どもたちのための国際援助団体(NGO)であるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2020年9月9日に参加型オンラインイベントを開催。写真やデータを使いながら、世界各地で攻撃を受けている教育の実情を紹介しました。
また、参加型のアンケートや専門家の解説を交えながら、紛争下の教育をどうすれば攻撃から守ることができるかなどを話し合いました。
「学校保護宣言」調印を働きかけ
「教育を攻撃から守るための国際デー」の制定につながった国際的な取り組みといえる「学校保護宣言」。日本は宣言文の作成に参加しましたが、まだ宣言に調印していないことはすでに触れました。
すでに100ヶ国以上が署名しているこの宣言に、日本の署名を促す活動が行われています。2018年には、東京の高校生たちがSNSなどを使って全国から2000人以上の署名を集めました。
「教育を攻撃から守るための国際デー」に、わたしたちができること
9月9日の「教育を攻撃から守るための国際デー」にむけて、わたしたちに何ができるのでしょうか? わたしたち一人ひとりにもできることを考えてみました。
SNSを活用した広報・啓発活動
ツイッターやインスタグラムなどのSNSを使って、「教育を攻撃から守るための国際デー」の存在をまわりの人に伝え、その意義や重要性を広げていくことができます。
国連の各機関や政府機関、国際団体などが情報を発信しています。
寄付による支援
ユニセフなどの国連機関や、民間のNGOに対する寄付も「教育を攻撃から守るための国際デー」を支援するために、わたしたちができる具体的な行動のひとつになります。
ボランティア参加やインターンとしての協力
各機関や団体が開催するイベントなどに、当日のスタッフとしてはもちろん、さまざまな事務作業なども含めて、ボランティアとして参加することもできます。
学生であれば、インターンとして参加して、将来のキャリアプランを考える機会にすることもできます。
世界の教育を守ることは、わたしたちの未来を守ること
生徒や先生、学校が日々、危険にさらされている──こんなことは、今、わたしたちが暮らしている日本では想像できません。
教育を守ることは子どもたちの未来を守ること。そして、子どもたちの未来には、日本だけでなく、世界中の動きがかかわってきます。だからこそ、共感の精神と想像力を働かせて「教育を攻撃から守るための国際デー」が制定された意味を考えてみませんか。
文・構成/HugKum編集部