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「世界難民の日」ってどんな日?
今、世界には、さまざまな理由から強制的に住んでいた家や地域、さらには国を追われている人々が多数存在します。いわゆる「難民」と呼ばれる人々です。
国連(国際連合)は、世界各地で今も続いている難民問題を国際的に解決すべき重要課題と位置づけ「世界難民の日」を制定しました。この記事では「世界難民の日」とは、具体的にどのような取り組みを行う日なのかを解説します。
難民の多くは子ども
国連の国際条約では、難民を「人種、宗教、国籍、政治的意見、または、特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるか、あるいは、迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」と定義しています。難民を生み出す最大の要因は、内戦や紛争による迫害です。また、政治的な人権侵害、自然災害による命の危機なども大きな理由にあげられています。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2022年5月の時点で世界の難民の数は1億人を突破しました。ベネズエラ国外に逃れた人は440万人、国内避難民は約5320万人、庇護希望者は約460万人います。そして今、ウクライナをはじめ世界各地で起こっている人道危機によって、その数はさらに増える傾向にあります。また世界で強制的に故郷を追われた人々のうち、子どもの割合は41%となっています。
2023年の「世界難民の日」はいつ?
「世界難民の日」は、国連などの国際機関が定める国際デーのひとつです。ここでは、2023年の「世界難民の日」の日付と曜日を確認しましょう。
今年の「世界難民の日」は6月20日火曜日
「世界難民の日」は、国際的な記念日として、毎年6月20日に定められています。今年は6月20日の火曜日です。過去3年と、今後3年の曜日は、以下の通りです。
・2020年6月20日土曜日
・2021年6月20日日曜日
・2022年6月20日月曜日
・2024年6月20日木曜日
・2025年6月20日金曜日
・2026年6月20日土曜日
「世界難民の日」とは?
国際社会が取り組むべき課題として、国際デーに制定された「世界難民の日」。その背景や経緯は、どのようなものだったのでしょうか? ここでは、「世界難民の日」の目的・歴史・由来を解説します。
目的
紛争や迫害などのために住む場所を追われ、難民になった人々。「世界難民の日」が定められた目的は、厳しい状況に立ち向かう難民の勇気を称えることにあります。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)をはじめとする、さまざま国際機関やNGO(非政府組織)が、広報・啓発活動を実施。難民の厳しい状況に対する共感と理解を深め、生活を立て直そうとする回復力を認めるとともに、保護と援助を世界中に訴えています。
歴史
難民が国際的な関心を集めるようになったのは、第一次世界大戦後のこと。ロシア革命やトルコ帝国の崩壊などによって誕生した新政権・新体制による迫害などを逃れて、外国に脱出した人々が生まれました。
第二次世界大戦後は、世界各地で植民地からの解放をめざす独立戦争や民族紛争が増えたことから、世界のさまざまな地域で多くの難民が生まれ、世界的な問題として深刻さを増していきました。
こうした事態に対処するために国連は、1951年に「難民の地位に関する条約(難民条約)」を採択。1967年には、難民条約を補足する「難民の地位に関する議定書」を採択しました。
この流れを踏まえて、2000年の国連総会で、毎年6月20日を「世界難民の日」に定められました。
由来
「世界難民の日」の制定には、OAU(アフリカ統一機構)が大きく関わりました。OAUとは、アフリカのより高度な政治的・経済的統合の実現と紛争の予防・解決を目的として、1963年に設立された、アフリカの国々や地域が加盟する国際機構です。2002年にはAU(アフリカ連合)となりました。
OAUは、1951年に国連が採択した「難民条約」を記念して、1974年に6月20日を「アフリカ難民の日」と定めました。この「アフリカ難民の日」を由来として、難民条約の制定50周年を迎えた2000年に国連がこの日を新たに「世界難民の日」としたのです。
「世界難民の日」の取り組み
難民に対する理解を深め、支援や協力を世界中に訴える「世界難民の日」。この国際デーに行われる具体的な取り組みは、どうようなものでしょうか? ここでは、国連や国際機関などの広報・啓発活動をご紹介します。
参考:United Nations | World Refugee Day 20 June
「世界難民の日」を記念した声明や演説
毎年6月20日には、国連をはじめ、さまざまな国際機関や地域機関が「世界難民の日」を記念した声明や演説を発表します。世界各地で今も続いている難民問題に対して、本格的かつ早急な対応を促し、私たちひとりひとりに難民が置かれた現実を伝えるためです。
2022年には、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が世界に向けて「この困難な時に、私たちは国境を越えた連帯を目の当たりにしてきました。一人ひとりが行動を起こしています。コミュニティもを寛大な姿勢をもって難民を受け入れています」というメッセージを発信しました。
世界的なイベント
いろいろな機関や企業、団体などが世界各地で難民問題をテーマにしたシンポジウムや映画上映、寄付や物資などを募るイベントを開催しています。現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンラインによる広報・啓発活動も盛んです。
たとえばユニクロは、UNHCRと協力し、2022年の難民の日にMADE51(メイドフィフティワン)“Make a World of Difference”として特別企画を実施しました。MADE51ブランドは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のイニシアティブにより2018年に生まれました。難民の方々が、故郷で培った技術や才能を生かしたものづくりに取り組むことで、避難先で収入を得て自立した生活を取り戻し、地域のコミュニティにも貢献できる明日をサポートするものです。
日本での取り組み
日本でも「世界難民の日」にあわせて、難民問題への理解や支援を求めるイベントが行われています。そのひとつが、全国各地のランドマークを国連カラーのブルーにライトアップするイベント。世界各地の難民に対する連帯を示すメッセージとなっています。
2023年の「世界難民の日」に予定されているランドマーク(ライトアップ場所)は、以下で確認できます。
難民問題に対する世界の取り組み
難民問題の啓発や支援活動は「世界難民の日」以外にも1年を通じて、継続的に行われています。ここでは、難民問題に対する世界の取り組みを見ていきましょう。
国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動を中心に紹介します。
参考:UNHCR | 日本
難民の緊急支援
世界約130ヶ国で活動しているUNHCRは、難民の緊急支援を行うために、高度に訓練された緊急支援チームを現地に派遣しています。
複数の緊急事態が発生しても72時間以内に対応することができ、現地政府や国際期間、数多くのNGOと協力しながら、さまざまな支援活動を行っています。
難民の保護
難民の基本的人権を保護するために、UNHCRは世界の支援団体や専門機関と国際的な支援ネットワークを設立。難民に対して、シェルターや食料、水や医療品などを提供しています。
また、保護に必要な大型空輸機や船舶、小型ボートの手配、学校の建設、感染症予防の啓蒙などもUNHCRの代表的な取り組みです。
難民生活からの脱却支援
UNHCRの最終目標は、難民の生活を再建することです。そのための解決策として、主に「自主帰還」「第三国定住」「庇護国での社会統合」があげられています。
自主帰還では、対象難民の出身国や地域の最新情報を収集。現地の訪問確認をはじめ、平和・和解活動、住居や所有物返還の働きかけなどを行っています。
難民問題に対して、私たちができること
今、この瞬間も世界中で数多くの難民が、迫害や人権侵害など厳しい状況と戦っています。私たちひとりひとりができることは小さなことですが、小さな力を合わせていけば、多くの命を救う大きな力になります。私たちにできる難民問題に対する支援をご紹介します。
寄付
UNHCRに募金や寄付を行うことで、その活動を支援できます。寄付には、毎月、一定の金額を寄付する方法と、その都度、寄付する方法があります。
寄付によって集められたお金は、迅速な緊急援助、水や食糧などの安定供給、学校教育や難民の自立支援など活用されます。
ポイント募金
「ポイント募金」も難民支援のひとつの方法です。クレジットカードの利用で貯まったポイントを寄付することができます。また、Tポイント、GUマイルなども寄付することができます。
SNSで啓発活動に参加
ツイッターやフェイスブックなどのSNSを使って、難民問題についての啓発活動を支援することができます。
たとえば、UNHCR|日本は、日本から難民支援の輪を広げるために、身のまわりにあるブルーを撮影し、メッセージを添えて投稿するキャンペーンを行っています。ハッシュタグは「#難民とともに #WithRefugees」です。
誰ひとりとして取り残さない世界をめざして
今、紛争や迫害で難民となっている人は、8,000万人を超えています。2023年、UNHCRは「世界難民の日」のテーマとして「難民とともに描く希望」を掲げています。誰一人取り残さない未来をつくろうという思いで、今年も難民の日を迎えます。
21世紀の今も、いわれなき理由から、国や家、家族や友人、人権や自由を奪われた人々が数多く存在しています。世界中の難民を迫害や人権侵害から守り、支援できることはないか。「世界難民の日」をきっかけに考えてみませんか。
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文・構成/HugKum編集部