目次
「児童労働に反対する世界デー」ってどんな日?
世界には、学校に行かせてもらえずに、労働を強いられている子どもが数多くいます。21世紀の現代においても、世界的に蔓延している児童の労働を禁止・撤廃させることを目的に「児童労働に反対する世界デー」は制定されました。
では「児童労働に反対する世界デー」は、具体的にどのような日なのでしょうか? その目的や歴史、取り組みなどを解説していきます。
児童労働とは
児童労働とは、就業最低年齢の15歳以下の子どもの労働、あるいは、18歳未満の子どもを危険で有害な仕事に従事させることをいいます。国際条約では、原則的に子どもの義務教育を妨げる労働を禁止しています。
しかし、現実には2010年の時点で1億6800万人の児童労働者がいると報告されています。これは、世界にいる子どもの9人に1人にあたる数字。
児童労働の種類は、農作業、工場・鉱山・路上など、多岐にわたります。有害物質があふれる場所や安全装備のない状態で、長い時間働かされている子どもも珍しくありません。さらに奴隷や買春、戦争下の戦闘を強いられる子どもの存在も数多く確認されています。
2024年の「児童労働に反対する世界デー」はいつ?
児童労働を強いられている子どもを守るため、世界に呼びかける「児童労働に反対する世界デー」は、いつ行われるのでしょうか? まずは2024年の日付から確認していきます。
今年の「児童労働に反対する世界デー」は6月12日水曜日
2024年の「児童労働に反対する世界デー」は6月12日水曜日です。毎年6月12日に行われる記念日とされています。
以下が過去3年間、そして来年以降3年間に予定されている曜日です。
・2021年6月12日土曜日
・2022年6月12日日曜日
・2023年6月12日月曜日
・2025年6月12日 木曜日
・2026年6月12日 金曜日
・2027年6月12日 土曜日
「児童労働に反対する世界デー」とは?
「児童労働に反対する世界デー」が制定されるまで、世界では、児童労働はどのように考えられ、どのような動きや流れがあったのでしょうか?
ここからは「児童労働に反対する世界デー」の目的・歴史・由来を解説していきます。
目的
国連の専門機関である「国際労働機関(ILO)」は、世界に蔓延する児童労働を撲滅する必要性を訴えるために「児童労働反対世界デー」を定めました。
児童労働が子どもの可能性や尊厳、自由を奪い、肉体的・精神的な発達に有害な影響を及ぼし、何よりも教育を受ける機会を奪うからです。
世界中にいるすべての児童が持つ「子どもの権利」を守ること。それが、この記念日の目的です。
歴史
子どもの権利を奪う児童労働は、かつては世界中の多くの国で見られました。日本でも今、世界で問題視されているような児童労働が1800年代後期(明治時代)には見られていたとされています。
こうした世界的な児童労働の問題を解決するために、1973年、ILOは児童労働の禁止・撤廃を定める国際基準として「就業の最低年齢に関する条約(第138号)」を提案、国連総会で採択されました。さらに、1999年「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第182号)」が採択されました。
これらの条約には世界約180ヶ国が批准し、この流れを踏まえて、2002年に「児童労働に反対する世界デー」が制定されました。
由来
児童労働の要因、その多くは貧困です。日々の生活費を稼ぐため、親の借金を返済するために、世界では多くの子どもが働いています。
しかし、十分な教育を受けられない児童労働者は、読み書きが満足にできないケースが多くなります。そうなれば、将来、希望の仕事に就くことや満足な収入を得ることが困難となり、大人になっても貧困から抜け出せない悪循環に陥ることになります。
また、児童労働は、将来的に国や世界の担い手となる人材を育成することを妨げ、地域や国の発展、社会の安定、世界の平和に悪影響を及ぼす可能性もあります。これらの観点から、児童労働撲滅に向けての国際的な動きが活発化し、記念日が定められました。
「児童労働に反対する世界デー」の取り組み
「児童労働に反対する世界デー」には、ILOやUNICEF(国際連合児童基金)などを中心とした世界中の国際機関が、さまざまな広報活動や啓発活動を行っています。
世界に向けた声明や記者会見の実施
毎年6月12日には、ILOやUNICEFといった国際機関が「児童労働反対世界デー」に向けた声明や記者会見を行っています。
また2020年には、ローマ教皇がこの国際デーに際して、児童労働を強いられている子どもの保護を国際社会に訴えました。
記念日イベントの開催
児童労働反対を推進する国際的な勉強会や討論会といった記念イベント開催も取り組みのひとつです。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、オンライン形式によるイベントが数多く実施されました。
また2023年には、オンラインイベント「児童労働と子どもの権利~児童労働反対世界デーは、ACEと一緒に未来へのアクションを! ~」が開催されました。
児童労働反対世界デー・キャンペーン素材の配布
児童労働反対を世界に訴える広報活動の一環として、ソーシャルメディアを通じたキャンペーンがスタートしています。
国際デーをアナウンスするポスターやパンフレット、地域別イラスト、X(旧Twitter)やフェイスブック用のバナーなどの素材も準備されているようです。
児童労働に対する世界の取り組み
児童労働の禁止・撤廃を実現させる動きは、「児童労働反対世界デー」だけの広報活動や啓発活動にとどまりません。
ここでは、記念日以外にも継続的に展開されている世界の活動をご紹介します。
参考:児童労働ネットワーク
児童労働についての調査研究
世界各地の児童労働の現状分析や実態解明などが進められています。
代表的なものが、ILOとUNICEF、世界銀行が共同で実施している「子どもの仕事を理解すること」調査研究プロジェトです。また、ILOは、世界中で国別児童労働調査などを実施、現状把握のためのデータ収集を行っています。
児童労働撤廃に関する現地での活動
実際に現地に赴き、児童労働撤廃に関する広報活動や啓発活動が行われています。
ILOの「国際児童労働撤廃計画(IPEC)」や「グローバル行動計画」などがその代表例。また、世界23カ国で「児童労働撤廃期限付きプログラム」を実施、教育による児童労働撤廃といった数多くのプロジェクトが実施されています。
アドボカシー・キャンペーンの実施
アドボカシーとは、広報活動やキャンペーンを通じて、多くの人々に知識を深めてもらう啓蒙活動を指します。「児童労働反対世界デー」も、児童労働に対するアドボカシー・キャンペーンのひとつです。
ILOは、児童労働の世界的な情報を提供する「グローバル・レポート」を4年に一度発表しています。
児童労働に対して、わたしたちができること
大きな国際問題として、世界が一丸となって取り組む必要性がある児童労働。実際にわたしたちができることには、どのようなことがあるのでしょうか?
「児童労働反対世界デー」キャンペーンに参加
「児童労働反対世界デー」のXアカウントをフォローし、ハッシュタグを使って、発信されるメッセージをリポストすることで、広報活動、啓蒙活動をサポートできます。
また2020年には6月12日にYouTube上で、児童労働に対する自分のメッセージを発信する取り組みが行われました。
Xアカウント:@ILO_NoChildLabour
ハッシュタグ:#nochildlabourday
YouTube:WDACL 2020 Children messages
YouTubeで映画を視聴
インドの児童労働問題に尽力しているカイラシュ氏のドキュメンタリー映画『The Price of Free』を視聴し、児童労働の撲滅に対して、何ができるのかを考えてみることもできます。
カイラシュ氏は、ノーベル平和賞を受賞した人物。YouTubeなら無料で視聴できます。
映画「The Price of Free」の視聴はこちら。
寄付や募金
児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGOの「エース(ACE)」に、寄付や募金ができます。活動内容や地域を選んだ寄付や募金も可能。また、ACEの運営に関わり、直接支援や応援するため、ACE会員になって活動することもできます。
「児童労働反対世界デー」を通じて、子どもの未来を考える
今も地球上では、約2億人を超える子どもが、児童労働者として働かされています。世界全体でみた場合、その数は年々減少していますが、地域別でみた場合、サハラ以南のアフリカ地域などでは、逆に増加しているとの報告もあります。
「児童労働反対世界デー」とは、児童労働を撲滅するための国際デーです。児童労働は、その家庭、その地域、その国だけの問題ではありません。世界に蔓延する児童労働の現実から目をそらさず、地球上で暮らす一人の人間として問題に向き合い、勇気と行動を示す一歩を踏み出しましょう。
文・構成/HugKum編集部