海水が塩辛い理由
「海水はどうして塩辛いのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
湖や川、雨の水は淡水なのに、海だけ塩辛いのはなぜなのでしょう。海の不思議を紐解くために、まずは海水が塩辛い理由を解説します。
海水の塩分は岩石から溶け出したもの
地球が誕生した約46億年前は、たくさんの隕石に衝突されて熱を帯びており、水は蒸発し地上には存在していませんでした。
しかし、地球の気温が下がっていくと同時に、空気中の水蒸気が冷やされて徐々に雨となって地球の表面にたまっていきました。
雨は、空気中にある塩素ガスを溶かしながら降ったため、たまった水には塩素が含まれました。これが海の始まりです。その後、溶岩や岩石に含まれるナトリウムによって中和されて、塩化ナトリウムを含む水に変化し、海水は塩辛くなったのです。
塩分濃度はどれくらい?
水に含まれる塩分の濃度は、海水の場合は約3.4%です。ただし、気温が高いところでは水温が上昇するため濃度が高くなり、河口など淡水が流れている付近では濃度が低くなります。そのため海域によって3.1~3.8%とばらつきがあります。
人間の身体の塩分濃度が0.8%であることを考えると、海水の塩分濃度は約4倍なので、口にしたとき塩辛いと感じるのも無理はありません。これは海水の約80%を占める、水深1000m以上にある海洋深層水でも同様です。
知ると楽しい海水についての豆知識
海水が塩辛い理由を知って、海について興味が湧いてきたのではないでしょうか? 他にもたくさんある海水についての豆知識に触れ、海の秘密をより楽しみましょう。
初期の海水は酸っぱかった?
今は塩辛い海水ですが、初期の水は酸っぱかったといわれています。
前述の通り、海の始まりは塩素ガスを含んだ酸性の水でした。酸性の水を口に含むと「酸っぱい」と感じるため、この頃の海水は酸っぱかったと推測されるのです。
しかもこの酸っぱい水は、酢のようなほどよいものではなく、劇薬である塩酸そのものです。もし海水が酸っぱいままだったとしたら、今のように海水浴は楽しめず、海の生き物も生きられなかったかもしれません。
海水には金が含有
海水に含まれるのは塩だけと思っている人もいるかもしれませんが、溶けているのは塩だけではありません。
現在分かっているだけでも77種類もの元素が溶け込んでおり、中には総量約50億tともいわれる大量の金も含まれています。
海水から金を取り出すのはとても難しく、コストパフォーマンスが低いため実現していませんが、近年では金やレアメタルを取り出す研究が各国で盛んに行われています。
すぐではないかもしれませんが、いずれ海水から金を取り出すことも一般的になっていくかもしれません。
海水から真水を作る技術開発が進行中
人間は紀元前から海水を真水にする方法を研究してきました。中でも船乗りや海軍を中心に研究が盛んに行われ、実際に行っていたという記録が各国に残っています。
大量の海水を淡水化するにはコストがかかるため、実用化には至っていませんが、現代では太陽光を使って短時間で淡水化する技術が開発されつつあります。
この技術がもっと進歩すれば、海水を真水にするのが容易になり、水不足に悩むことはなくなるかもしれません。
海水を使った実験に挑戦!
海水の豆知識を理解したら、次は海水を使って実験をしてみましょう。海に行けなければ、塩と水で作った食塩水を使用しても問題ありません。
子どもと一緒に実験すれば、真水と比較することで興味深い発見ができるはずです。
海水に浮く物と沈む物
「プールと比べると、海のほうが体が浮かびやすい」と感じたことはありませんか?
これには海水に含まれる塩分が関係しており、真水に比べて海水の方が浮力が大きいため物が浮きやすいのです。
それを証明するために、野菜や果物、金属でできた釘や磁石、ガラスやプラスチックなど大きさや素材が違う物を用意して、真水と食塩水に浮く物と沈む物を調べてみましょう。風呂場など濡れても大丈夫な場所を選べば、思いきり実験することができます。
また、食塩水を用意する場合には、海水の塩分濃度と同じである3.4%食塩水以外にも、濃度を変えていくつか用意すれば実験結果も変化します。いろいろと試してみましょう。
海水が凍る温度は?
「海の水はなぜ凍らないの?」と不思議に思ったことはありませんか?
それもやはり、海水が塩分を含んでいることが関係しています。このことを調べるために、自宅で海水を凍らせる実験をしてみましょう。
実験の方法は簡単です。半分ほど真水と海水をそれぞれ入れたペットボトルを用意し、冷凍庫に一晩入れて翌朝の様子を調べます。
こちらも食塩水を用意する場合には、濃度を変えていくつか用意すれば、実験結果に変化があり興味深いものになるでしょう。
身近なもので海水から塩を作ろう
身近なものを使って、海水から塩を取り出すことができます。用意するものは、海水2l以上、コーヒーフィルター、なべ、フライパン、木べらです。
海水をコーヒーフィルターでろ過して余計な汚れやゴミを取り除き、鍋で煮詰めていきます。最初は強火でもかまいません。沸騰しかけたら弱火にし、グツグツ煮詰めていきましょう。焦らず弱火でじっくり煮詰めるのがポイントです。
しばらく煮詰めると水の量が減り、鍋の中に塩の結晶ができ始めます。元の量の1/10になったら火を止め、コーヒーフィルターでこし、湿っている塩の結晶を乾燥させたらできあがりです。
完成した塩は、料理に活用することもできます。自分で作った塩で料理を作れば、そのおいしさも格別に感じられるかもしれません。
海水について学んでみよう
私たちが当たり前だと思っている海水の塩辛さには、海だけでなくたくさんの地球の秘密が隠されていることが分かりました。海水についての疑問をいろいろ調べてみれば、今まで知らなかった知識が得られるでしょう。
また、海に行く機会があれば、海水を持ち帰って自宅で簡単にできる実験もたくさんあります。もしかすると、まだ解明されていない秘密を発見することができるかもしれません。
文・構成/HugKum編集部