持続可能な開発目標SDGs(エスディージーズ)の目標14は、「海の豊かさを守ろう」です。今、地球上の海でおこっている問題を解決するために定められています。海は今、深刻な問題をたくさん抱えていて、問題を放っておくと、自分たちの暮らしにも大きな影響が出てくる可能性があるのです。
どんな問題があるのか、自分たちにできることは何なのか、一緒に見ていきましょう。
SDGsの目標14. 「海の豊かさを守ろう」ってどんな内容?
「目標14. 海の豊かさを守ろう」の目的は、「接続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用すること」。分かりやすく言うと「海の資源を守り、この先の未来のために、大切に使おう」ということです。
今、海で起こっている問題
現在、海の環境破壊がどんどん進んでしまっています。このままでは、これから先の未来、人間社会の営みの影響で海の生態系が変わってしまったり、自分たちが食べる魚が獲れなくなったり…、さまざまな影響が出てきてしまう恐れがあるのです。
海の生き物を苦しめるプラスチックごみ
ビニールやプラスチックのごみが海の中を漂っていると、海の生き物がエサと間違えて食べてしまうことがあります。海の生き物たちの胃からプラスチックごみが出てくる例は後を絶たず、なんと、約700種もの海の生き物がゴミによって傷ついたり死んでいるのです。
海のプラスチックごみはどこから来たのでしょうか?
実は、多くのプラスチックごみは陸から流れてきたものなのです。屋外にあったプラスチック製品や、外に捨てられたビニール製品などが、風雨で河川に流れ込み、そのまま海に流れ着くといわれています。
▲画像引用:政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201905/1.html
また、陸で発生したプラスチックよりは少ないですが、海で発生するものもあります。
魚を獲るために使われる何キロメートルにも及ぶ網。この大きな網が放置されたり、そのまま海に捨てられたりしたものは、ゴーストネットと呼ばれ、分解されることなく海の中を長い間漂い続けています。この大きな網が生き物の体に巻き付いたり、からまったりしてしまったら、逃げられなくなり、死んでしまいます。人間が捨てた網が、魚やクジラ、海鳥やアザラシなど、多くの海の生き物を苦しめ続けているのです。
分解されることなく漂い続けるマイクロプラスチック
海に流れ出たプラスチックごみは、波や紫外線の影響により、細分化されていきます。5mm以下になったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。マイクロプラスチックも海の中で分解されることなく漂い続け、貝や魚が餌として食べてしまったりするなど、海の生態系に影響を及ぼしています。
海の酸性化問題
地球上の4分の3は海が占めています。また、地球にある水の97%は海です。海は、大気中の熱を吸収したり、二酸化炭素濃度を調節したりする役割があり、地球温暖化を緩和してくれるのです。
ところが、人間社会が排出する二酸化炭素の量が増えたことが一因となり、海の二酸化炭素の濃度が上がってきています。「海洋酸性化」といい、問題となっているのです。酸性化により特に影響を受けやすい生き物は、プランクトン類やサンゴ、貝類、甲殻類など。例えばサンゴが海洋酸性化により死んでしまうと、住みかを失った他の生き物たちが生きられなくなってしまい、その生き物を捕食していた生き物にも影響が出てくるなど、海洋全体の問題になっていく可能性があるのです。
今後人間社会の排出する二酸化炭素の量がさらに増えると、海の海洋酸性化が進んでしまうでしょう。
▲参考:気象庁 http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/mar_env/knowledge/oa/acidification_influence.html
公益財団法人 日本ユニセフ協会 https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/14-sea/
養殖の増加も海への影響がある
養殖は、大きさや品質が安定して水産物が手に入ります。また、水産物を効率よく生産できるので、漁業者にとっても生産の見通しが立ちやすくなります。
▲引用:https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r01_h/trend/1/t1_3_1.html
上のグラフでは、天然魚は80年代以降横ばいとなっている一方、養殖業は増え続けていることがわかります。
ただ、養殖魚が増えることには問題もあるのです。マングローブや干潟の自然が、養殖場を作るために切り開かれて周辺の自然が破壊されてしまっている事例があります。
また、養殖魚のエサに、魚粉といわれる天然魚を乾燥させて粉にしたものが大量に使用されています。養殖するために卵や稚魚が海から大量に採取されることもあり、養殖魚とはいっても、自然の環境や、海の生き物への影響があるのです。
海を守るため、自分たちにできること
海の資源を持続可能にするために、私たちにできることはあるのでしょうか。
認証ラベルの付いたサステナブル・シーフードを選ぼう
「SDGs 14.海の豊かさを守ろう」を実現させる取り組みとして、MSCやASCという認証制度があります。
▼MSC認証ラベル
MSC認証は、海の環境に配慮した魚の獲り方を守っている水産物に与えられる認証ラベルで「海のエコラベル」といいます。
▼ASC認証
ASC認証は、環境や地域社会に配慮した養殖業で生産された水産物に与えられる認証です。
いずれも、現場から加工流通のプロセスまで、厳しい審査をクリアできた水産物のみに与えられるものです。MSC認証やASC認証のラベルが貼られた水産物はサステナブル・シーフードと呼ばれ、海の環境に配慮した製品を選ぶ基準となります。お買い物のときにエコラベルを探して、意識して購入してみてはいかがでしょうか。
プラスチックごみ減らせるように心掛けよう
毎日の生活の中でプラスチックごみが減らせる取り組みをご紹介します。きっともうすでに取り組んでいる内容もあることでしょう。自分のできることから行動に移すことが大切ですね。
マイバッグを持参し、レジ袋はもらわない
マイボトルを持ち歩き、プラスチックのカップを減らす
マイ箸を持ち歩き、プラスチックのスプーンやフォークを減らす
プラスチック製のストローの使用を控える
スーパーなどで食品を小分けにするポリ袋の使用を減らす
買い物のときには簡易包装を頼む
詰め替え用ボトルなど繰り返し使えるものを選ぶ
食品の保存はふた付き容器を使い、ラップの使用を減らす
海・川・山のレジャーではごみを持ち帰る
屋外で出たごみは家に持ち帰って処分する
河川敷や海岸の清掃活動に参加する
ごみは所定の場所・時間に、分別して出す
ごみのポイ捨て、不法投棄はしない
▲参考:政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201905/1.html
プラスチックごみのリサイクルに取り組もう
スーパーなどで、リサイクルボックスが設置されていることがあります。意識してリサイクルボックスを利用してみましょう。
また、日用品のメーカー大手の花王は、詰替えた際にごみとなる容器やボトルを自社で回収し、100%リサイクルしてまた容器に生まれ変わらせる、という取り組みを始めようとしています。業界あげての取り組みとなるよう、ライオンやユニリーバなど、メーカー間の垣根を越えて協力していくそうです。現在は検証段階ではありますが、資源が循環する社会に向けて企業も動いています。自分や家族の好みや、生活スタイルもあるかと思いますが、これからの私たちは、製品を利用した後のリサイクルのことまで意識して買い物をすることがあたりまえになっていかなければならないでしょう。
▲参考・画像引用:花王 https://www.kao.com/jp/corporate/news/sustainability/2020/20201104-003/
海を守るために…できることから始めよう!
命の源である海。私たちは海からたくさんの恩恵を受けて暮らしています。子どもたちのためにも、海の豊かさを守り、未来につないでいかなくてはなりません。現在海で起きている問題を子どもたちに知ってもらうことから始めてみませんか? 私たち一人ひとりが、今できることから行動を起こしていきましょう。