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子どものどんな力を伸ばす?「世界の小学校事情」
イギリス、タイ、ベルギー、アメリカで、子どもを小学校に通わせている日本人ママに、それぞれの小学校事情について伺いました。多様性のある環境は、各国の小学校教育にも大きく影響しているようです。
【イギリス】子どもの世界観を広げ考え方のツールを増やす
1学期ごとにトピックを取り上げ、それに沿った内容で各教科の授業が行われます。例えば「アマゾン熱帯雨林」なら、アートの授業でアマゾンにいる動物の絵を描くといった具合です。アートと算数以外では消しゴムを使わず間違いに線を引くのも特徴。何を間違えたか自分で把握できるようにしているのだと思います。
人種や宗教についても早くから学びます。人種が多いので、外見で判断しないことや言葉選びに気つけることを徹底。ママが2人、パパが2人の家庭も多いので、子どもたちは多様な性について当然のように理解しています。息子はスペイン語に力を入れる小学校に通っていますが、イギリスでは、多人種文化から英語とは別の言語が混在する環境を通して子どもの世界観を広げ、考え方のツールを増やせる教育がなされている印象があります。
アマゾンがトピックのときのスペイン語のノート。
【ベルギー】自己肯定感を高めることで他者への理解を深める
多言語、多人種の国ということもあり、自己肯定感を高めて他者理解や自分の視野を広げることに力を入れています。人と比べるのではなく、その子自身の成長を見る。ドリルも全員同じものではなく成長に合わせたものが提供されます。以前、「うちの子の成績はクラスの中でどれくらい?」と先生に尋ねたら、「偏差値はないし、親がそんな考えではよくない」と指摘されたことがありました。そのため、子どもが友人と自分を比べて卑下することもありません。
プロジェクトベースの授業では、テーマを決めるのは子どもたち。結婚式がテーマなら実際に結婚式をやってみるなど研究し、結果を発表します。また、基礎を固めればのちのち自分で考える力がつくという考えから、低学年で留年する子もたくさんいます。
ベルギーの伝統的エビ漁体験は、日本の修学旅行のような行事。
【タイ】優れた分野への賞賛で自分の強みを認識できる
バンコクにはインターナショナルスクールが非常に多く、日本で私立の小学校に通わせるのと近い感覚で現地の子や日本の駐在員の子が通っています。授業は総合学習が基本。1か月ごとにテーマがあり、「宇宙」がテーマの月は単語テスト、文法、エッセイなども宇宙に関連した内容になります。テストは、週ごとに単語テスト、四半期に一度算数のテストがあります。
勉強でもスポーツでも優れた分野では惜しみなく特別扱いしてくれるので、自分の強みを認識できる機会が多いように感じます。「もっと課題がほしい」といったリクエストには応えてくれますが、授業についていけない場合は、家庭教師などで個人的にフォローする必要があるようです。また、エッセイやストーリー作成の課題が多く、創造性や好奇心の発見に重点を置いているのがよくわかります。
「節分」について英語で発表している様子。
【アメリカ】個人の得意を伸ばす実践的な教育
みんなの前で発表する機会や、名指しされて「あなたはどう思う?」と問われて発言する機会が多いので、物怖じせずに自分の意見を言う力が育まれていると思います。最近は、デジタルスキルを伸ばすことにも力を入れていて、低学年のうちからタブレット端末などを用いた授業が行われています。
教科は国語(英語)、算数、理科、社会がありますが、その他の副教科は日本のほうが充実しています。アメリカの体育は、普段着のまま校庭を走ったり体操をしたりする程度。水泳の授業もないので、家庭で教えるか習わせる必要があります。楽器もクラブに入らなければ触ることはありません。日本の教育が何事も平均的にできる人間を育てる教育なのに対し、アメリカの教育は実践的で、かつ個人の能力に重点を置いた教育だと感じます。
2020年のサンクスギビングのときの制作物。
「発育のススメ」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。
記事監修
1925年の創刊以来、豊かな世の中の実現を目指し、子どもの健やかな成長をサポートしてきた児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターに関わっていただき、子ども達各々が自身の無限の可能性に気づき、各々の才能を伸ばすきっかけとなる誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載しています。
『小学一年生』2021年10月号別冊HugKum 構成・文/山本章子