「ほめて育てる」って、どういうこと?
よく「子どもは、ほめて育てよ」といわれますが、ほめ方がわからないというお母さんも多いようです。どんな場合に、どうほめる?子育てに詳しい平山許江先生に伺いました。
「ほめて育てる」は「叱ってはいけない」ではない
「ほめて育てる」を「叱ってはいけない」と思うのは、誤解です。3歳から5歳くらいの子供は、生活習慣や社会のルールをしつける時期。叱ったり注意することが多くなり、子どもをほめにくい。だからこそ、「子どもが何かほめられることをしたら、忘れずにほめましょう」というのが「ほめて育てる」の意味です。
また一般に“ほめる”という言い方は、上から目線というか、親の立場から見て「よろしい」「よくできた」と評価する、“成績表”のような気がします。そうではなくて、例えば子どもが自分でボタンをとめようとしていたら、「頑張っているね」と、その子の頑張りを認めてあげる。そして、ボタンをとめられたら「できたね」「よかったね」と共感する。
「子どもを認めてあげ、共感する」ことが“ほめる”ことだと私は考えます。「頑張っているね」「よかったね」という言葉は、子どもにとって、とてもいいほめ言葉になるでしょう。子どもはうれしくなる、そのうれしさを、親は子どもと分かち合ってください。親も子もハッピーになります。ですから「えらい、えらい」とか「すごいねえ」とか、仰々しくほめなくてもいいのです。
具体的な「いいほめ方」とは
結果ではなくプロセスをほめる
子どもは努力しても、できないことのほうが多いんです。結果だけ見たら「ほめるとこなんてない」となるでしょう。
集中しているとか、あきらめないで粘っているとか、プロセスを見てあげて「一生懸命やっているね」とほめてください。できなくても、やろうとしたことはいいことなんだ、とわかります。
失敗をやり直した時、ほめる
ゴミ箱にゴミをぽんと捨てようとしたら外れ、拾って入れ直した。こぼしたジュースをふきんで拭いた。段から跳び降りたら尻もちをついたので、もう一度跳び直した。
このような時は、「やり直したんだね」と、ぜひともほめましょう。前は転んで泣いたけど、今回は必死にこらえているという時は「我慢して泣かなかったね」と言えば、大人はちゃんと見てわかってくれていると、うれしくなります。
動機に気づいてあげる
例えばお兄ちゃんにジュースを持ってきてあげようとして、こぼしちゃった時。「お兄ちゃんにもあげようとしたんだね、ありがとう」と、まずは子どもの気持ちを認めて。
また、子どもが絵を描いた時、自由に考えて描いた絵をほめることが多いですが、図鑑などの絵をまねて描いた時も「頑張ってまねして描いたんだね」と認めて、ほめましょう。
子どもの気持ちに寄り添おう
現代のお母さん達は、子どもに注文が多すぎるのではないでしょうか。子どもが「できた! 見て!」と言う時、パッと見るだけで「じゃあ、次は○○をやってごらん」と先を求めたり、「もっとできる子もいるじゃない」と思ったり。
「見て!」と言われたら、見てあげればいい。答えるのに困ったら「どこ頑張った?」と聞いて、「そう、ここが自慢なんだね」と気持ちを言葉にしてあげて、共感したらいいんです。また、よその子と比較するのではなく「うちの子、こんなこともできるようになったんだ」という見方をすれば、ほめられるはず。子どもをほめられるのは、親しかいませんよ。
ママ・パパへ先生からのアドバイス
プロセスをほめるといっても、結果をほめてはいけない、ということではありません。例えば、かけっこが一等賞ならもちろん「早かったね」とほめるでしょう。でも、遅くても一生懸命走ったとか、転んだけれど、あきらめずにゴールまで走ったとか、他の場合も一等賞と同じくほめる価値があるということです。プロセスをほめるようにすれば、たくさんほめることが見つかりますよ。
平山許江 先生
保育楽者
東京学芸大大学院への入学などをはさみ、幼稚園に20年勤務。大学教授を歴任し、現在、青木教育研究所所員。日々、保育の楽しさを探究中。著書に『子育てはどたばたがよろしい』(世界文化社)
イラスト/松木祐子 出典/めばえ