注目の“こねないパン”レシピ【ほったらかし低温発酵】の秘密とおいしさのコツ。毎朝焼きたてパンが楽しめる!

パンの生地は、こねずに焼いてもおいしく作ることができます。ゆっくりと時間をかける発酵により、自然に形成されていくグルテンに秘密があるんですよ。こねるパンとの違い、こねないパンのメリット、そして焼き方のコツを詳しくみていきます。

お家で焼いたパンを食べたいけど、パンの生地をこねる作業が苦痛… 。そんな方にもおすすめできるのが「こねないパン」。これなら気軽に続けられそう、そんな風に思えるパン作りとの出会いになるかもしれません。

こねないパンとは

じつに様々な方法がある「こねないパン」についてのレシピ。まず「こねて作るパン」との違いから明らかにしていきます。

生地をこねる意味

そもそも、パンの生地をこねるとは、どんな意味を持つのでしょうか。

これは、グルテンを作るための作業です。小麦粉に適量の水を加えてこねると、粘着力と弾力が出てきます。これは小麦粉中のタンパク質に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」が結びつくことにより、スポンジのように立体的な網目状の構造を持つことにつながり、パンの食感を左右します。

同じ小麦粉でも、水を混ぜるだけでこねないのは天ぷら粉です。高温の油で加熱すると、花が咲いたように仕上がりますが、これは少量のグルテンによる効果です。

ほったらかしながら、手もかける

パン生地をこねないとグルテンが形成されませんからパンは膨らまず、ボソボソした食感のまま。食べてもおいしくはありません。

そこで、グルテンは低温でゆっくり発酵させることでも形成される点に注目。生地を冷蔵庫に入れて発酵させると、時間はかかりますが、自然にグルテンがつながれていくのです。つまり「ほったらかして」作ることができるんです。

ただし、それだけでおいしいかというとそうではなく、「手をかける」ことは必要です。発酵の途中で取り出して生地を折りたたみ、刺激を与えるのです。これが「パンチ」と呼ばれる作業。ぬか床は一日一回天地返しをしてお世話をしますが、これと同じ。パン生地を丸め直してお世話をすることで、おいしさを生み出します。

こねないパンのコツ

レシピをご紹介する前に、こねないパンのポイントを整理します。

オーバーナイト

こねないパンは発酵時間が長くかかります。そこで、就寝中に発酵、翌朝にパンを焼くスケジュールを組みます。これはオーバーナイト法と呼ばれる方法。工程が2つに分かれるため、合間時間を有効に使えるメリットも同時に生まれます。

野菜室で低温発酵

パン酵母が休眠してしまう4℃以下、または発酵しすぎる10℃以上を避けると、発酵にピッタリの温度帯は5℃〜9℃です。これが家庭用冷蔵庫の野菜室と合致します。

そして肝心なのは、パンを焼く30〜40分ほど前に冷蔵庫から取り出して、生地の温度を室温に戻すこと。これをせずに焼いてしまうと、生地の内部と表面で温度差があるため、発酵の速度に差がついたり、焼き加減にムラが生じたりします。

生地用の容器と、焼く鍋

生地を混ぜ合わせる際には、大きめのタッパーを使うと便利です。スケールの上にタッパーを用意して、材料を軽量しながら順番に加えていきます。混ぜた後はそのままフタをして、野菜室に入れてください。

大切なのは、「生地が膨らんだ後も容器の大きさに余裕があること」です。タッパーひとつで、発酵まで済ませられます。

また、ル・クルーゼやストウブといった鋳物ホーロー鍋を使って焼くレシピも多く、オーブンを使わずに焼く手段が選択できます。環境によりオーブンを使わずに焼きたい場合もありますよね。そんな方におすすめできるのが、こねないパンです。興味のある方は試してみてください。

こねないパンを焼いてみた

それでは、実際にこねないパンを焼き上げる工程をみていきます。パンを焼く経験が少なくても、おいしいパンが焼き上がりましたよ。じっくりご覧になって参考にしてくださいね。

材料

牛乳 100g
油 10g
ドライイースト 小さじ1/2(1.5g)

強力粉 150g
砂糖 15g
塩 3g

・ポイント

パン生地の発酵には温度が大きく関わり、材料を混ぜ終わった時の生地温度が23〜26℃になるのが理想です。そこで、牛乳の温度には注意。夏は室温が高いため影響が少ないですが、冬は冷蔵庫から取り出したばかりだと冷たすぎます。電子レンジで20〜30℃に温め、調節することでうまく膨らみます。

生地の作り方〜一次発酵まで

オーバーナイトの場合は、就寝前にしておく工程です。材料を混ぜてから30分休ませた後にパンチ、もう一度30分休ませ、冷蔵庫の野菜室に入れます。

【1】ボウルに牛乳、油、ドライイーストを量りながら入れていきます。泡立て器でよく混ぜ合わせてください。

【2】さらに強力粉、砂糖、塩を加え、粉っぽさがなくなるまでカードで混ぜます。

徐々に粉がまとまってきます。

【3】ボウルにラップをかけて、室温で30分休ませます。

【4】手を水でぬらし、生地を引き伸ばしながら中心に向かって折りたたみます。1周半くりかえしたら、生地を裏返してください。ラップをかけて、もう一度室温で30分休ませます。

これが、パンチの工程です。

【5】その後、ボウルのまま冷蔵庫の野菜室に入れて一次発酵です。生地の大きさが2倍以上になればOK。時間の目安は6時間〜最長で2日間を目安にしてください。これを過ぎると膨らみが悪くなったり、酸味が出たりします。

12時間後の様子です。こねていないのに、膨らみました。

生地の分割と焼き上げまで

朝起きたら冷蔵庫から取り出し、二次発酵を経て焼き上げるまでの工程をみていきます。焼き上がりまでの時間は、だいたい1時間半です。

【1】冷蔵庫から2倍に膨らんだ生地を取り出し、30分おいて室温に戻します。もし、2倍になっていなければ、室温に出して待ちます。

【2】生地の表面に打ち粉をして取り出し、放射状に5分割してください。

フワフワに膨らんでいます。

【3】手で押して空気を抜き、縁を内側にまとめて丸めます。

まん丸にまとめます。

【4】表面は張らせ、裏側はつまんで閉じてください。乾いたふきんをかぶせて、室温で10分間休ませます。

ベンチタイム。

【5】打ち粉を振り、真ん中に麺棒を押し当てて成形します。

ちぎれる手前まで押してください。

【6】天板にオーブンシートをひいて、間隔を空けて並べます。オーブン35℃で50分の二次発酵を行います。

二次発酵前です。

【7】ひと回り大きくなります。オーブンを180℃に温めてください。

膨らみました。

【8】茶こしを使って表面に強力粉を振りかけ、140℃のオーブンで10分焼きます。

裏を見て、焼き上がりを確認します。

裏側に焼き目がついていれば焼き上がりです。ついていなければ、1〜2分追加して焼いてください。

こねずに毎朝焼き立てパンを

こねる工程がなくてもフワフワのパンが焼けるレシピをみてきました。毎朝焼いても無理なく続けられるスケジュールに注目です。就寝前の1時間、起きてからの1時間半、少しの手間をかけながら焼き上げられます。簡単に焼き立てパンを味わえる「こねないパン」の魅力をぜひご家庭で実感してみてください。

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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

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