「朝三暮四」とは?
まずは、『朝三暮四』の読み方と意味、由来を押さえておきましょう。
読み方と意味
この四字熟語は、『朝三暮四』と書いて「ちょうさんぼし」と読みます。
「目先の利益にとらわれてどちらにしても大差はないという事実に気づかないこと」や、「巧みに人をごまかして欺くこと」を意味する四字熟語です。
由来・語源
『朝三暮四』の由来は、中国の故事とされています。
宋(そう)に住んでいた狙公(そこう)は、ある日、経済的に困窮してしまい、飼っていた猿にあげるトチの実の分量を調整することにしました。
猿にトチの実を与える際に「朝3つ、夕4つ」と伝えたところ、猿は少ないと抗議します。そこで、「朝4つ、夕3つ」を代わりに提示した狙公。量に変わりはないのに猿はまんまと欺かれ、よろこんで受け入れた……という逸話がこの四字熟語の由来です。
中国語では違う意味に!
『朝三暮四』は、中国語でも使われる言葉です。ただし、「移り気で考え方が変わりやすい」「当てにならない」という意味で使われ、日本で四字熟語として親しまれているものとはニュアンスが異なります。
語源となった故事のなかで、はじめは「朝3つ、夕4つ」と提示したにもかかわらず、猿の反対を受けると簡単に「朝4つ、夕3つ」に変更した狙公の様子から、このような意味で使われるようになったと考えられています。
「朝令暮改」はまったく別の意味の言葉
『朝三暮四』と見た目が似た言葉として「朝令暮改」がありますが、こちらはまったく別の意味の言葉です。
「朝令暮改」とは「朝に命令を下し、その日の夕方になるとそれを改めること」の意味で、転じて「命令がひんぱんに変わって一定しないこと」を表します。朝改暮変、朝出暮改、朝立暮廃といった言い換えもあります。
「朝○暮○」という文字の並びが『朝三暮四』と似ていますが、これらと混同しないように注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
では、『朝三暮四』は具体的にはどのように使うことができるのでしょうか。例文とともにチェックしておきましょう。
1:セット品を購入してしまったが、単品を同じ数だけ購入するのと変わらないことに後から気づいた。まさに【朝三暮四】だ。
「セット売り」と聞くとついついお買い得に思えてしまうこと、ありませんか? けれども、中には値引きがされていないケースもありますよね。単品で買ってもセットで買っても、一点一点の価格が変わらなければ、結局は同じ結果。このようなときに『朝三暮四』は使えます。
2:ダイエットのために母はランニングを始めた。しかし、「今日は走ったから」といつも以上にご飯を食べており、これでは【朝三暮四】だと思った。
せっかくランニングをしても、その分多く食べてしまっては結果は同じですよね。ランニングをしてもしなくても差し引きゼロ、このような状況も『朝三暮四』は言い表せます。
3:国から手当てが出たが、その財源は国債だ。結局、増税としてかえってくるのであれば、【朝三暮四】の政策に過ぎない。
国から手当てが出て一時的には得をしたように思えても、結局は増税して自分の身にかえってくるのであれば、結果は同じだと思う方が多いのではないでしょうか。このように、政治やビジネスシーン等でも『朝三暮四』は使われます。
類語や言い換え表現は?
では『朝三暮四』はどのような言葉で言い換えることができるのでしょうか。
1:朝四暮三
三と四が入れ変わってはいるものの、『朝三暮四』とまったく同じ意味を持つ言葉。『朝三暮四』のほうがメジャーですが、バリエーションとしてぜひ覚えておきましょう。
2:狙公配事(そこうはいじ)
こちらも『朝三暮四』と同じ意味で使われる類義語のひとつです。由来となった故事に登場する「狙公」と、配ることを意味する「配事」を組み合わせた言葉なので、おなじ語源から派生した言葉として、あわせて押さえておきましょう。
3:三百代言(さんびゃくだいげん)
『三百代言』は、「詭弁を弄して相手を巧みに言いくるめること」を指したり、「代言人の資格がないのに他人の訴訟などを扱ったひと」という意味で弁護士をののしる際に使われたりする言葉です。『朝三暮四』の「巧みに人をごまかして欺くこと」を言い換えるのに使うことができますね。
4:寡聞少見(かぶんしょうけん)
『寡聞少見』は「見識が狭いこと」「世間知らずなこと」を意味する四字熟語です。やや広義的ではありますが、『朝三暮四』の「目先の利益にとらわれてどちらにしても大差はないという事実に気づかないこと」に近いニュアンスを持つ言葉ととらえられるのではないでしょうか。
対義語は?
『朝三暮四』の対義語も合わせてチェックしておきましょう。正確には対義語と呼べる言葉が存在しないため、『朝三暮四』とは逆の意味と考えられる言葉を集めてみました。
1:清廉潔白(せいれんけっぱく)
『清廉潔白』は、「心が清く、うしろめたいことのまったくない様子」を指す四字熟語です。「人をごまかして欺くこと」の意味を持つ『朝三暮四』とは反対の意味を持つ言葉と言えます。
2:青天白日(せいてんはくじつ)
『青天白日』もまた、「心にやましいことや隠しごとがまったくないこと」を意味する言葉です。『朝三暮四』が持つ「巧みに人をだます・ごまかすこと」とは反対の言葉としてここに挙げてみました。
英語表現は?
『朝三暮四』は英語ではどのように言い表すことができるのでしょうか。ここでは『朝三暮四』の英語表現として使える言葉をお伝えしていきます。
1:six of one and half a dozen of another
“six of one and half a dozen of another”は、「似たり寄ったり」という意味の英語のことわざです。「6個と半ダース(=6個)」と直訳でき、『朝三暮四』の「どちらにしても同じ」といったニュアンスを伝えるのに適した英語表現です。
2:no big difference
“no big difference”は「大差ない」という意味の英語表現。『朝三暮四』の「どちらにしても大差はない」という意味を言い表せる英語表現です。ただし、『朝三暮四』の「欺かれていることに気がつかない」ニュアンスまでは表現できないので要注意。
3:trickery
「誰かをだますこと」「ごまかすこと」といった意味を持つ“trickery”。『朝三暮四』の「巧みに人をだますこと」といったニュアンスを英語で表現する際に使うことができます。
『朝三暮四』は、漢検5級出題レベルの四字熟語
今回は、『朝三暮四』の意味や使い方、関連用語をお伝えしてきました。『朝三暮四』は漢検5級に出題されるレベルの四字熟語です。漢検5級といえば、小学校6年生修了レベル。小学生のお子さんがいるママパパは、ぜひ、お子さんにも教えながらいっしょに覚えるようにしましょう。
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構成・文/羽吹理美