シンプルな料理ほど、調理方法は多種多様なものです。半熟卵はその最たる例で、開くレシピごとに少しずつ違うことも。しかも、卵の数、水の量、使用する鍋の素材や、コンロによっても微妙に違ってくるんですから困ります。
ここでは、3つの具体的な方法を挙げました。これをヒントに、ご自宅のキッチンでお好みの固さに茹であげる方法を、見つけてください。
水から茹でる、半熟卵
水から茹でる場合は、卵との温度差が小さいことから、ひび割れにくいメリットが生まれます。詳しい工程をみていきます。
卵の温度
卵は室温に戻します。鍋に水と一緒に入れて、10〜15分くらいで戻ります。
また、冷蔵庫から取り出してすぐの、冷たい卵を使う場合は、茹で時間を30秒長くしてください。
水の準備
お鍋に入れた卵が、しっかりと浸かる量のお水を用意します。
もし、少ない水量で茹でる場合は、必ずフタをしてください。卵の数に対してお鍋が大きい場合などに、節約になる方法です。
茹で時間は10〜11分
タイマーを10分30秒にセットします。
火をつけて、強火で茹で始めます。
沸騰してきたらお湯が飛び散らないよう、火を中火に弱めてください。火加減は、フツフツと沸き立つ泡がなくならない程度です。
煮立つまでに、卵の上下を返しながら転がすと、黄身の位置が中央に寄ります。卵同士がぶつかって割れないように、ゆっくりと回して。
急冷
卵を冷水に入れて急冷します。水道水では温度が高すぎるため、氷水を用意してください。これで、殻がむきやすくなります。
すぐに水がぬるくなるので、再度新しい水に替えて、氷を足します。
このまま水の中に長時間放置してしまうと、再びむきにくくなるので注意。
粗熱がとれたら、ボウルに卵をやさしく押し付け、殻にヒビを入れます。そのまま水の中で殻をむいてください。
殻と卵の間に水が入り、むきやすくなります。
仕上がり
出来上がりは、白身も黄身も形は保ち、中央部分がトロリとした仕上がりに。
沸騰したお湯で作る、半熟卵
次に、沸騰したお湯から茹でる方法をみていきます。
卵は常温に戻す
冷蔵庫から卵を取り出し、ボウルに張った水に10〜15分くらい浸けて、常温に戻します。
お湯の準備
お鍋に、卵がしっかりと浸かる量のお水を用意して、沸騰させます。
水量が少なくてもフタをすれば大丈夫ですが、卵の半分くらいまでは浸かる量が必要です。
茹で時間は5〜6分
沸騰しているお湯の中に卵を入れます。すくい網などを使うと安全に入れられます。
卵が入ることで温度が下がり、沸騰が一旦おさまるので、火を強めます。再び沸騰したら、お湯が飛び散らないよう、中火程度で加熱します。泡がフツフツと出続ける火加減です。
5〜6分で引き上げます。今回は5分間、茹でました。
卵の数が多ければ時間を長めに調節してください。
急冷
茹でた卵をすぐに冷水に入れ、一気に冷やします。粗熱がとれたら殻をむきます。柔らかいので、気をつけて。
仕上がり
白身の形はしっかりありますが、黄身はトロトロの仕上がりに。
放置して作る半熟卵
空いているコンロがない! そんな忙しい時でも作れる、茹で時間1分の半熟卵です。
準備
冷蔵庫から卵を取り出し、空の鍋に入れます。しっかり浸る量の水を入れてください。
沸騰後、1分で火を止める
鍋を火にかけ、沸騰するまで加熱します。沸騰したらお湯が飛び散らないように火を弱め、1分間茹でてください。
6分放置する
鍋をコンロから下ろして、6分放置します。
急冷
冷水にとって粗熱をとります。
中身は液体状なので、これまでのように殻を割ることはできません。スプーンで殻をたたいて割り、逆さにして中身を器で受けます。
仕上がり
白身も黄身も、固まっておらず、温泉卵のような仕上がりに。黄身は湯気をたてています。
半熟卵のコツ
卵の中身は、3重構造。外側から卵白、黄身を包む濃厚な卵白、そして中央の卵黄。この3つは、固まる温度も、スピードもそれぞれ違います。そのため、茹でる際に大きなポイントとなる、温度管理のヒントと、その他のコツをまとめました。
常温に戻すのはなぜ?
冷蔵庫から取り出したばかりの冷えた卵を、常温に戻してから茹でるのはどうしてでしょうか?
ひとつ目の理由は、冷たい卵のまま沸騰した鍋に入れると、お湯の温度が下がってしまうからです。温度が下がると、茹で時間を調節する必要がでてきます。逆に、水から茹でる場合なら、卵の温度を戻す必要はありません。
また、冷たい卵のまま茹でると、殻が割れやすい点が、ふたつめの理由です。
茹で上がりに急冷する理由
半熟卵の場合、茹で上がりに急冷しないと予熱で黄身が固まっていくため、大切な工程です。
さらに、殻をきれいにむくためにも冷やす工程は大切。急冷しないと、殻と卵白がくっついてしまい、うまくむけなくなります。加熱後すぐに氷水で冷やして、卵にショックを与えると、殻の内側にある膜のタンパク質は固まって、卵白は収縮するので、お互いが離れます。
殻をむくコツ
半熟卵は中身が柔らかいので、特に殻がむきにくく、失敗すると無惨な姿に。きれいにむくためのコツをみていきます。
・殻をむきやすい卵
パック詰めから2週間程経った卵は、殻がむきやすく、半熟玉子にはおすすめです。逆に、新鮮な卵ほど殻の中に入り込んだ気泡が少ないことから、茹でるとくっつきやすいのです。
卵の賞味期限は、サルモネラ菌の繁殖による健康被害を防ぐため、実際の賞味期限より短めに設定され、産卵後2週間程度がほとんどです。 ただし、卵の場合の賞味期限とは、生食できる期限のこと。冷蔵庫で適切に保存した場合は、3〜5週間はもつため加熱調理して食べれば問題ありません。
半熟卵の場合は加熱が弱いため、賞味期限いっぱいの2週間頃のものを使うと、安全かつ殻がむきやすい卵といえます。
・穴を開ける
卵には、尖ったカーブと、ゆるやかなカーブの面があります。よく観察して、ゆるいカーブの面に画鋲などで穴を開けてから茹でると、殻はむきやすくなります。
ゆるやかなカーブの内側にある空気の層(気室)によって、少々の穴やヒビでは中身はもれません。加熱中は、中身が少し出る場合もありますが、すぐにおさまるので安心してください。
・水流で殻をむく
水道水を細く流し、ヒビを入れた殻に当てながらむく方法もおすすめです。水流の力で剥がしていくため、柔らかい半熟卵でも力をかけずに殻をむくことができます。
以上の点に気をつけてもダメな時は、殻付きのままスプーンで中身をすくう方法もあります。くっついてしまってもメゲないでくださいね。
環境に合うやり方を見つけて
トロリとした半熟卵を作る方法と、そのコツについてみてきました。
水からでもいいし、お湯からでもいいので、いろいろ試して作ってみてください。茹で加減の調節が自在にできるようになると、料理の幅が広がります。環境やご自身に合った方法を見つけたいですね。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)