平家物語とは?
鎌倉時代に京都の貴族社会で生まれたと言われている『平家物語』。日本に残る歴史的な名作のひとつとして、よく知られています。そんな『平家物語』は、だれが書いた物語なのか、その背景に迫りましょう。
作者は不詳の作品
『平家物語』は、長い時間をかけて現在の形に整えられたと考えられ、だれがいつ書いたものなのか、はっきりとわかっていません。しかし13世紀末には、琵琶法師が琵琶を弾きながらその物語を語っていたことから、13世紀頃には現在の形のストーリーができあがっていたと考えられています。
国: 日本
作者:不詳
完成:13世紀頃
おすすめの年齢:(現代語訳の場合)小学校高学年以上
作者はだれ?
上述したように『平家物語』の作者は、はっきりとわかっていません。さまざまな説が伝えられるなか、もっとも有力と考えられているのが、濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)という人物。吉田兼好の『徒然草』(266段)によると、濃前司行長が生仏(しょうぶつ)という盲目の僧の協力のもと、『平家物語』をつくり、それを生仏に語らせていたと言われています。濃前司行長は実在が確認できませんが、『平家物語』ができるためには、多くの人が関わっていたものと言われています。
いつの時代の話?
『平家物語』がいつできたかも、定かではありません。しかし、平安時代や鎌倉時代には琵琶という楽器を弾きながら、物語をうたう芸能者である琵琶法師がいて、その存在によって『平家物語』が人々に伝えられたと言われています。
また『平家物語』は平安時代末期の平家一門の衰退と、鎌倉初期にかけての争乱を描いた物語。ですから、その時代を舞台にしたストーリーで、鎌倉時代の前半には現在の形ができあがっていたと考えられています。
物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介
『平家物語』はさまざまなバージョンが生まれています。ここでは、もっとも一般的な物語のあらすじをご紹介しましょう。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
平清盛は「保元の乱」と「平治の乱」で勝利をおさめ、武士として異例の出世ともいえる太政大臣(総理大臣)の職にのぼりつめます。さらに、次女の徳子を高倉天皇に嫁がせ、息子たちも要職につかせ、さらに権力を得ていきます。そして「富士川の戦い」で源頼朝が平家に勝利。頼朝は鎌倉で東国の長となったのです。
さらに頼朝の命を受けた源義経は、「一の谷の戦い」「屋島の戦い」で平家を追い詰め、ついに「壇ノ浦の戦い」で平家の要人は、ほぼすべて死亡するに至ったのです。しかし、平家の滅亡に追い込んだ源義経でしたが、最後は兄の源頼朝に殺されてしまい、物語は終わります。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
平安時代は天皇や貴族が政治を行っていました。しかし平安時代の後期になると、侍と呼ばれる武士が存在するようになっていき、彼らは次第に権力を手に入れるようになっていくのです。それが平清盛です。平清盛は「保元の乱」と「平治の乱」で勝利をおさめると、太政大臣(総理大臣)の職につきます。
その平家一門に対し、源頼朝の率いる源氏は「富士川の戦い」で勝利をおさめると、次々に平家への闘いを仕掛けていきます。それまで栄えてきた平家の一門は、その後どうなっていくのでしょうかーー。
平家物語の主な登場人物
『平家物語』の主な登場人物を見てみましょう。
平清盛(たいらのきよもり)
平清盛は平安末期の武将。1159年の平治の乱で源義朝に勝利し、異例の出世を遂げた人物。平安時代は貴族が政治を行ってきましたが、武士中心の政治に変えていったのが、平清盛の存在です。
平重盛(たいらのしげもり)
平清盛の長男が、平重盛です。平清盛は非情の悪人として描かれるなか、平重盛は正義感が強く責任感もある善人として描かれています。
平宗盛(たいらのむねもり)
平清盛の三男で、重盛とは異母兄弟。次男の基盛は若くして亡くなっており、平清盛が亡くなった後、平家の棟梁となった人物です。臆病な性格で、無能な様子が物語では描かれています。
平知盛(たいらのとももり)
平清盛の四男。武将としての才能が欠けていた宗盛が棟梁となった平家を、影の支柱となって支えていたのが、平知盛です。
平徳子(たいらのとくこ)
平清盛の次女。高倉天皇の正妻(皇后)となり、安徳天皇の母となった人物です。平家一門の女性のなかで最も高い地位にいた存在で、平家の人々が亡くなっていくなか、最後まで生き残っていた人物でもあります。
平家物語が読み継がれている理由
『平家物語』が800年以上もの時を経て、いまでも日本の名作として読み継がれているのは、なぜでしょうか。
「無常観」を描いた物語
『平家物語』のなかでもよく知られているのが、冒頭で出てくる次の文章です。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
諸行とはあらゆるもののこと、無常とは何事も続かないことを意味します。つまり諸行無常とは、この世のあらゆるものはすべて絶えず変化していくものを表しているのです。
勢い盛んな平家が栄光をもたらした時代と、そして没落していく様子を描くことで、世の無常を描いたのが『平家物語』なのです。単なる栄光を書いたヒーローものではなく、“滅びる美学”を描いた深い背景があるのです。
歴史の面白さを知ることができる
『平家物語』の舞台は平安時代から鎌倉時代。そんな歴史のストーリーは、誰もが学校の授業で習うものです。しかし、ただ歴史の授業で「時代が変わった」と聞いても、どんな時代だったのか、なぜ時代が変わっていったのか実感がわかないもの。
『平家物語』はそんな時代背景について光をあて、当時の人々がどんな風に生きてきたのか、なぜ時代が大きく移り変わっていったのか、知ることができるのです。『平家物語』の話にぐいぐい引き込まれて、歴史が大好きになる子どもも多いはずです。
数多くのバリエーションが存在する
『平家物語』はもともと複数の人々が制作に関わったとみられています。そして、度々それを読みやすくまとめた形も生まれ、時代とともにさまざまなバリエーションが生まれてきました。それだけ、物語に深みがあり、今でも人々が引き込まれる魅力があるストーリーなのでしょう。
名作「平家物語」を読むなら
『平家物語』の存在は知っていても、きちんと物語を読んだことはないという方も多いのではないでしょうか。あらためて『平家物語』を読んでみませんか?
『平家物語 上』
子ども向けに名作を紹介するシリーズ。カラーのさし絵があり、本文中では用語解説もあるため、子どもでも理解しやすく読み進められます。
日本の古典をよむ『平家物語』
原文と現代語訳がついた一冊。原文がついているので、作者がどんな風に伝えたかったのか、想像しながら読んでいけます。古典文学の魅力にひたれます。
日本の古典マンガ 『平家物語 上』
マンガで『平家物語』を読めます。著者は、大長篇『三国志』の連載も行っていた横山光輝氏。
歴史の魅力に触れられる「平家物語」
『平家物語』は教科書にもたびたび登場して、日本の人々の間でよく知られている作品のひとつでしょう。800年以上も前に生きていた人々の物語に光をあて、どんな時代の変化が生まれていったのか、主人公や登場人物の気持ちになって知ることができる作品です。子どもなら歴史に興味をもつきっかけのひとつになるかもしれません。
『平家物語』は大作ですが、子ども向けに読みやすく編集されたものも数多くありますから、ぜひじっくり読んでみてはいかがでしょうか?
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文・構成/HugKum編集部