子どもをクライアントと捉え、「ブレスト」で課題解決する
子育ての悩みをクリエイティブでユーモア溢れる方法で解決する新感覚の育児本「子育てブレスト: その手があったか!67のなるほど育児アイデア集」(小学館)。この本に詰まったアイデアは、クリエイティブディレクターである佐藤ねじさんが仕事で培った「課題解決」のクリエイティブな技法を、育児にも転用したアイデア集とも言えます。
ねじさんは、子育てにおける困りごとを解決しようと思ったとき、タイトルにもある「ブレスト」を頻繁にするそうです。ブレストとは「ブレインストーミング」という会議手法で、ひとつのテーマに対してさまざまな案を出していくというもの。これにより、いろいろな角度から新たな視点=新しい解決法が生まれます。
このとき大切なのは、親が課題解決を楽しむことなのだそうです。
“こうした子育てアイデアは、「子どものために尽くす」というより、まず「自分が楽しみたい」と いう気持ちがベースにあります。自分が楽しいと思う選択肢の中で、子どもにとっても楽しいと ころを探す。そんな、親と子、それぞれがハッピーになり得る〝交差点〞を探すのがポイントです。”(本書より抜粋)
思春期の「クソババア」問題をブレストしてみた
HugKum読者から寄せられた、「12歳の息子に初めて『クソババア』と言われました。この時の正しい対処法はありますか?」という相談。果たして佐藤ねじ・蕗夫妻は、どんなふうに解決するのでしょうか? 実際に「子育てブレスト」を実践してもらいました。
佐藤ねじ(以下、ねじ):おー、ワクワクしますね。お子さんと親御さんの、その時のモードにもよりますけど…、あくまでたとえば、今ブレスト的にやるとするならば、で答えていきましょうか。
第一弾は「何回クソババア」言ったかっていうのをカウントすることを提案します。それをデータとして、クラウドに上げて貯めていく。貯めておいて、カウンターをつくって…。
で、今度はどうするかを考えます。何クソババア貯まったらどうするのか。たとえば、ポイント制で、貯まると景品をもらえたりするじゃないですか。そういうのをやってるとかも面白いかもしれないですよね。とんでもなく悪いものがもらえちゃったりする、みたいな感じ。もちろんその時の子どもの感じもよるので、本当に分からないですが。
ねじ:ポイントは提案を出すだけじゃなくて、レビューをすることも大事です。それは面白い、だけど、その場合のリスクはなに?などは常に考えているので、実際やる時にはもっと、「これは子どもが傷つくね」とかでやらないことももちろんあります。年齢が上がるにつれて余計その配慮というか、バランスは大事です。
ポンポン飛び出すねじさんのアイデア。静かに聞いていた蕗さんも、リスクに対して慎重になりながらも、ブレストに加わります。
佐藤蕗(以下、蕗):クソババアに関しては、その、子どもの状況によるので、今ぱっと答えるのはちょっと難しいな。子どもにとっては、いじっちゃいけないやつな気もするし。だから子どもとその言葉を切り離して考えるのが、いいのかもしれない。
自分が子どもの立場だったら、そんなことされたらすごくムカつきそうだから。だから子どもに関係ないところでカウントして、自分が言われて受けたダメージのほうを、代わりになんかすることのほうがよさそう。
ねじ:たしかにこの状況は、子どもにすぐぶつけ返す状況じゃない可能性が高いですね。
そもそも思春期・反抗期だから、そんなことをして火に油を注ぐ感じになっちゃうかも。
じゃあ、むしろ「クソババアドットウェブ」みたいな親がログインするサイトを作って、みんながそれぞれ「何クソババア言われた」とかを持ち寄るみたいな。「イヤイヤカレンダー」みたいな発想ですね。これを貯めていって、「うちよりレベルの桁違いな〇〇さんの家がある!」とか。そういう風にして、違うものにしていくのもありですね。
その時の空気感が第一ですが、僕はまだそんなにシリアスにはならないで、本人にぶつけるのも可能性としては残したいな。成人式とかにそれを送るとかも面白いかもしれないです。
うちもそうだし、他の家庭でも同じようですけど、反抗期とか思春期って波がありますよね。お、きたなと思ったら、けっこう普通に戻ったな、みたいな感じで。うちの長男も、5年生くらいまでは何を言っても基本的に懐いてくるという、いわゆる子どもの状態だった。そこから自分を強く持ち始めた感じがしだして。最近はこちらの距離感の取り方も変わったというか、整ってきたからか、落ち着いているという印象にはなってます。なので、あくまで目の前のお子さん次第ですが、こんな方法もありますよ、という感じですかね。
おふたりのブレストによって、「言葉そのもの」「言葉を受け取った側のダメージ」についての課題解決の糸口が見えてきました。子ども自身については、その時の状況もあるので簡単には結論を出せないけれど、言葉の受け止め方を変えていくことで、楽しく解決法を探していく。この考え方はとても魅力的です。
日々の困りごとを解決する「第3の考え方」を見つけよう
最後に、子育て中のHugKum読者へのメッセージをいただきました。
ねじ:この本の一番大事な部分は「このネタをやると子育てがうまくいきますよ」ということではなくて、「こういう考え方もありますよ」という発想の持ち方だと思っています。子どもには本当はこうしてほしいのに、うまく言うことを聞いてくれないとき、ゲーム的な方法にしてうまくやるパターンがあるんだなとか、日々の困りごとに抽象論ではなく、具体的に使える考え方のヒントにしてもらいつつ、ちょっと自分の気が楽になったり、そういう発想をできるようになってもらえるといいなと思っています。
蕗:子育て本とか育児本っぽい感じで読んでみると、そんなにためになることはあまり書いてないというか(笑)、ふざけたページばかりなので。気楽な感じで、読み流して笑ってもらえたらいいかなっていうふうに思います。
佐藤ねじさんは、実は同じタイミングで「こどもの夢中を推したい 小中学生の遊び・学び・未来を考える7つの対談集」(freee出版)という本も出版されています。自身の体験をもとにまとめた「子育てブレスト」に対して、こちらは「まったく未知数の始まりで、出会いがあった」そう。次回はその本と子どもの思春期についてお話しいただきます。
「こどもの夢中を推したい 小中学生の遊び・学び・未来を考える7つの対談集」
お話を聞いたのは
佐藤ねじさん 蕗さん
右)佐藤ねじさん プランナー/クリエイティブディレクター
1982年生まれ。2016年ブルーパドルを設立。WEB・アプリ・商品やお店などの企画とデザインを行う。主な仕事に「ボードゲームホテル」「アルトタスカル」「隠れ節目祝い」「佐久市リモート市役所」「小1起業家」「劣化するWEB」など。
左)佐藤蕗(ふき)さん/おもちゃ作家
2児の母。建築設計事務所勤務を経て、第1子出産を機にフリーランスに。育児をしながら作っていたおもちゃが反響を呼び、造形作家として、雑誌・web・テレビでお仕事中。全国各地でワークショップも開催中!著書に「ふきさんのアイデアおもちゃ大百科シリーズ / 偕成社」「親子で笑顔になれる “魔法の手作りおもちゃ”レシピ / 宝島社」がある。
子育てブレスト
寝ない、登園しない、食べない、着替えない、宿題をしないといった子育てあるあるにどう対処するか。
クリエイティブの手法を育児に活かした新しい解決策が勢揃いです。
アイデアを真似するうちに、「早くして」「勉強しなさい」と言わない発想転換も身につきます!親と子どちらも楽しめる “意外な解決策“をぜひお試しください!
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取材・文/五十嵐ミワ