日本のGDPがドイツに抜かれ世界4位に
最近、各国の経済力を示すGDP国内総生産(2023年)が発表され、日本がドイツに抜かれ世界第4位に転落することが確実となりました。トップ10を見ると、1位が米国の26,95兆ドル、以下、中国の17.70兆ドル、ドイツの4.43兆ドル、日本の4.23兆ドル、インドの3.73兆ドル、英国の3.33兆ドル、フランスの3.05兆ドル、イタリアの2.19兆ドル、ブラジルの2.13兆ドル、カナダの2.12兆ドルと続きます。GDPとは、簡単に言うと各国がその年に生み出したサービスや生産物の金額の合計ですが、日本が昨年4位になったのは円安の影響があるとされています。
GDPは量で判断したもの。生活水準とイコールではない
ドイツに抜かれたことを心配する人がいるかも知れませんが、GDPは量で判断したものであり、GDPが低いからといってその国の生活水準が低いことは意味しません。中国が2位だったとしても、国民の平均所得でみればまだまだ日本は中国より上となりますし、反対に日本よりGDPがはるかに低くても、平均所得で日本より高い国も少なくありません。スイスやデンマーク、オランダやベルギー、フランスや英国など、欧米にはそういった国々が多くあります。
日本はこれまで長い間、GDPでは米国に次ぐ第2位をキープしてきました。しかし、21世紀になり中国が高い経済成長率を維持するように。2010年頃には日本を抜いて世界第2位となり、近年中国と日本の差は近年開く一方です。2023年の時点で中国のGDPは日本の4倍あまりにも膨れ上がり、今後は米国に接近し、いずれは米国を抜く可能性も指摘されています。今日、中国は不動産バブルの崩壊やGDPの伸び率の鈍化、若年層の高い失業率など多くの経済的課題に直面し、今後の先行きで多くの不安定要素を抱えていますが、米中のGDPを巡る競争は今後さらにヒートアップしていくでしょう。
今後注目すべきはインドを含むグローバルサウス
そして、今回ドイツに抜かれることが明らかになったわけですが、今後注目されるのがインドの存在です。インドは世界人口でついに中国を抜きましたが、若年層の割合が高く、今後新たな労働市場として諸外国の注目が集まっています。近年は日本企業の間でもインド市場の重要性が広がっており、今後インドのGDPは急速に増加していくことが予想されます。
今後インドは、2023年時点で3位のドイツと4位の日本を追い抜くことは間違いないでしょうし、それは遠くない未来にやってきます。そして、米国、中国、インドという大国間でのGDP競争が到来することになるでしょう。また、それだけではありません。昔は欧米や日本など先進国のGDPは世界のGDPで高いシェアを有してきましたが、今日先進国の影響力は低下し、インドなどグローバルサウスと呼ばれるASEANやアフリカ、中南米の国々の影響力が高まっています。それに伴い、インドやブラジルだけでなく、インドネシアやメキシコ、南アフリカやナイジェリアなど他の国々がGDPランキングで上位を占めるようになってきています。
GDPでは、今後さらにグローバルサウスの影響力が高まり、先進国の存在感は相対的に低くなっていくでしょう。
この記事のPOINT
①GDPとは?簡単に言うと各国がその年に生み出したサービスや生産物の金額の合計
②今後の注目はインド。若年層が多い、新たな労働市場として世界からも注目されている
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。