兵庫に春をもたらす「いかなご」を知っていますか。漁期の短い伝統食「くぎ煮」の佃煮レシピを公開!

PR

「いかなご」の新子を佃煮にする手順は簡単で、炊き上がれば味わい深い一品として重宝します。材料となるいかなごは、春の短い期間にだけ出回る貴重な食材です。機会を逃さずに入手したいもの。しょうゆダレと歯ごたえが食欲をそそる「釘煮」のレシピとあわせてご覧ください。

瀬戸内海では春になると「いかなご漁」が盛んになります。みるみる大きく育ついかなごは、「新子(しんこ)」と呼ばれる稚魚の期間がごく短く、漁獲量が大幅に減り続けていることからも、今では大変貴重な食材となりました。そんないかなごの新子は、甘辛く煮た郷土料理が「くぎ煮」と呼ばれ、広く親しまれています。

兵庫県の特産品「いかなごのくぎ煮」

春の風物詩とも呼ばれる「いかなご」は、「春告魚」と書きます。

兵庫県明石近郊では、水揚げ後すぐにせりにかけられ、昼頃にはもう店頭に並びます。これを求めて訪れる人は多く、その日のうちに調理するのがごく一般的な風景。この地域では毎年3月の午後になると、調理する香りが漂い、「いかなごの香りがすると、春がやってくる」ともいわれます。一度に1kg以上を大きな釜で炊き、ご近所で交換し合ったり、遠方へ送ったりと、親交を深める楽しみもありました。

発祥地

「いかなごのくぎ煮」発祥の地といわれるのは、神戸です。もともとは、瀬戸内海沿岸地域で古くから漁師のご家庭で作られていた料理でした。

一般に広く知られるきっかけになったのは、1980年頃に明石の漁業組合で作られたレシピでした。それまで、漁師向けに濃い味付けだったものを、女性たちが一般家庭用に改良し、普及活動が活発に行われたそうです。

いかなごのくぎ煮

ご飯のおかずとしてもよく合い、酒の肴としてもおいしいと評判になったくぎ煮は、優れた保存性も持ち合わせていたことから、多くの人々に喜ばれる人気のお惣菜となりました。

くぎ煮の由来

捕れたての新鮮な状態で甘辛く炊いたいかなごは、古釘のように折れ曲がった形になることから、「釘煮」と名前が尽きました。これは、いかなごの身が瞬間的にしまったことによりできた形で、鮮度が良いほど腹や頭が欠けず、きれいな曲線に仕上がります。

いかなごの食べ方

新鮮ないかなごは、特に産卵前のものが脂がのっているので味がよく、刺し身で食べると絶品です。または釜揚げにして酢味噌を添えたり、ポン酢を合わせたりするとあっさりして、おいしいもの。

生は身が崩れやすいのですが、一夜干しにして身をしめることで調理がしやすくなり、味もよくなります。

くぎ煮の作り方とレシピ

瀬戸内海沿岸地域に古くから伝わる、いかなごのくぎ煮の作り方をみていきましょう。

いかなごのくぎ煮

地元では、小中学校に出向いての出張講習会などが開催された時期もあったそうですよ。年齢を問わず、愛される味です。

・材料

いかなご 1kg

【A】
しょうゆ 180ml
ザラメ(砂糖でも) 200g
みりん 100ml
酒 50ml

しょうが 30〜80g

(小さいいかなごの場合、酒は入れず、みりんを150mlに。)

・作り方

【1】いかなごを流水で洗い、ザルに上げて自然に水を落とします。しょうがは皮をむいて千切りにします。

【2】大きめの鍋に【A】の材料を入れて煮立たせます。

【3】沸騰を止めないよう保ちながら、いかなごと千切りしょうがを振り入れます。くっつかないよう、少しずつバラバラと入れるのがコツ。

【4】落し蓋をして、中火程度の火加減で煮てください。沸騰状態は保ったまま。ただし、いかなごの姿が崩れるため、箸などでかき混ぜたりはしません。

【5】煮汁が少なくなって、大きな泡が出てきたら、両手で鍋を持ち上げ、手早く鍋返しを行います。2〜3回行うと全体に煮汁が絡まるので、火を止めてください。

【6】ザルに上げて、うちわや扇風機を使い、風を送りながら急冷します。

・アレンジ

しょうが、煎りごま、実山椒、鷹の爪、くるみを加える場合もある他、ゆずの皮を使うなど、さまざまな種類があります。

いかなごのくぎ煮、お取り寄せ情報

昭和10年に書かれた風土記には、「漁夫の手製のくぎ煮を求めるようにせねば、肉の引き締まった、底味のある本当のくぎ煮は得られない」という意味の記述があります。それくらい鮮度が重視されるいかなごですが、現在は鮮度管理の技術が向上し、お取り寄せでの入手ができるようになりました。

【ふるさと納税】淡路島高栄水産、いかなごくぎ煮2点セット 600g

加工場の目の前にある漁港から、捕れたてのいかなごが運ばれ、職人さんの手により炊きあげられるくぎ煮。お弁当にひとつまみ添えても、喜ばれます。

佃煮2種セット いかなご釘煮120g+ちりめん山椒 120g

贈答用にも使える、化粧箱入りの商品もあります。佃煮専門店より、無添加で炊かれたくぎ煮が、冷凍で届きます。

いかなごについて

いかなごはアジアやヨーロッパの他、アラスカまで、世界中に分布している魚です。日本でも瀬戸内海のみならず、北海道北部や宮城県、茨城県の沿岸に多く生息し、1000年以上前から漁が続いてきました。

名前と大きさ

かますに似ていることから「かますご」と呼ばれることもあるいかなご。宮城地方では「めろうど(女郎人)」、関東では「こうなご(少女子)」、九州では「かなぎ」とも呼ばれ親しまれています。

1月頃に孵化し、2月末頃までには体長4cmほどの「新子」に成長します。8cmくらいになると「いかなご」と呼ばれ、最大20cmほどに成長します。

また、今年生まれた稚魚を「新子」と呼ぶのに対し、生後1年以上の成魚は「古背(ふるせ)」と呼びます。

水揚げの時期

いかなごの新子漁は毎年2月末から3月初めに解禁を迎えます。漁期は短く、4月までの短い期間のみ。解禁の日に伴い、兵庫県内のスーパーなどでは、販売コーナーが設けられ、この日を楽しみにしていた多くの人々の手に渡ります。

漁獲量の状況

この数年で明石産の新子は値段が4倍以上に高騰。これに伴い、くぎ煮も手に入りづらい食品となりました。

それというのも、兵庫県における漁獲量は激減しており、20年前までは多い年で3万トンを超えていましたが、近年ではわずか147トンという年も。資源を守るため、やむなく禁漁の決定を下す港もあるほどです。

原因は海水の栄養バランスが崩れたことが挙げられ、地元自治体による資源回復への試みが取り組まれている現状です。

春の味わい、いかなご

細長い身を新鮮なまま入手できるいかなごの季節は、漁師町では待ち遠しい春の合図でもあります。そのままで食す贅沢を味わったあとは、日持ちのするくぎ煮にして、長く楽しみます。今では手に入りづらい魚ですが、出会えた場合はぜひ手に入れたいものですね。

こちらの記事もおすすめ

「つくし」って食べられる? 子どもたちの好奇心に寄り添う、季節の〝ほろにがレシピ〟
土手や畑だけでなく、公園の隅っこでもたくましく生えているつくし。春の芽吹きを感じますね。本記事では、収穫の楽しみや料理方法などを中心にみてい...

構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディア)

編集部おすすめ

関連記事