「ちまき」大研究。地域によってこんなに違う! 端午の節句に食べるのはなぜ? 長年の疑問を一気に解決

端午の節句にちまきを食べる風習がありますが、地域によっては他のものを食べることがあります。使用する材料や包み方などは地域によって異なり、全国一律ではありません。端午の節句にちまきを食べる理由や、地域別の特徴・レシピなどを紹介します。

ちまきとは?

ちまきと聞いて何をイメージするかは、住んでいる地域によって異なります。どのような食べ物を指すのか、さっそく見ていきましょう。

もち米やもちを植物の葉で包んだ食べ物

ちまきは漢字で「粽」と書き、もち米や米粉で作ったもちを植物の葉や皮で包んだ食べ物です。地域によって中身や形状が異なりますが、笹の葉などで包んでイグサで縛ったものを、蒸したりゆでたりして作ります。古くから保存食や携帯食に利用されていました。

食事として食べる以外に、「飴粽(あんちまき)」という端午の節句に食べられる甘いちまきの原型となるものも生まれました。甘い味付けのちまきに、きなこや砂糖をまぶして食べる場合もあるなど、地方色が強い食べ物です。

新潟の三角ちまき。きなこをまぶして食べるのが一般的

ちまきの起源は中国

ちまきは日本以外にも、中国や台湾などで食べられています。日本に古くから存在していましたが、元々は中国から広まったという説が有力です。

中国のちまきはお米を竹の皮で巻き、火にかけて作ります。元々は茅(ち・ちがや)という植物の葉で巻いていたので、ちまきと呼ばれるようになりました。

中国で食べられるちまきは、炊き込みご飯のようなものをイメージすると分かりやすいでしょう。具材には味付け肉や塩漬け卵、シイタケ、ナツメ、栗などが入っているのが一般的です。

中華ちまき。竹皮の中は五目おこわが入っていて食べごたえあり

端午の節句にちまきを食べる理由

端午の節句では、ちまきを食べる地域もあれば、柏もちなどを食べる地域もあります。どのような理由でちまきが食べられるようになったのか、見ていきましょう。

中国で生まれた風習

5月5日の端午の節句にちまきを食べるようになったのは、中国の故事が元になっています。諸説ありますが、5月5日に亡くなった高名な詩人を供養するために、竹筒に米を入れたお供え物を川に投げたのが始まりといわれています。

この詩人は忠誠心が高く立派な人物だったので、多くの人から支持されていました。ちまきを食べる風習には、自分の子どもに立派な大人に育ってほしいという願いが込められているのです。

また、ちまきを巻くのに使用する茅の葉は、邪気や疫病を祓う神聖な葉とされており、邪気祓いの意味でもちまきが配られていました。

茅(かや)はイネ科やカヤツリグサ科の草の総称で、代表種としてススキが挙げられる

日本の各地でも広まる

日本のちまきは、平安時代からあったとされます。真菰(まこも)の葉で巻いたちまきが端午の節句の贈答品として伝わったほか、室町時代には京都の和菓子店が笹の葉で巻いたちまきを作り、御所に献上しました。

真菰(まこも)はイネ科マコモ属の多年草。古代の中国や日本では、種子を穀物として食した。別名ハナガツミ

御所に献上されたちまきは、現在でも京都の銘菓として知られています。京都を中心として、ちまきはさまざまな土地に広まっていくとともに、その土地の自然環境に合わせて変化していったようです。

さらに、日本のちまきは災厄疫病を逃れるという解釈があり、出陣する武士が携帯食として持っていったともされています。

地域によって異なるちまき

同じ「ちまき」でも、地域によって素材や形状が大きく異なります。地域ごとに親しまれているちまきの特徴を見ていきましょう。

東日本

端午の節句にちまきを食べる風習は西日本から広まったせいか、東日本にはあまり浸透していないようです。端午の節句には、ちまきではなく柏もちを用意する家庭が一般的です。

柏もちのほうが一般的?

また東日本では、中華風のちまきである「おこわ」のようなものをイメージする人が少なくありません。関東甲信や北海道では、中華料理でもおなじみの、炒めたタケノコ、シイタケ、ニンジンなどが入っている三角形のちまきがよく食べられています。

西日本

5月5日にちまきを食べる中国の風習は、昔都があった奈良や京都などを中心に広がりました。このため西日本では、端午の節句にちまきを食べる風習があります。中国の故事にならって、子どもに立派な人になってほしいとの願いを込めて食べさせる家庭が少なくありません。

西日本では、笹の葉で巻いた白くて甘いちまきがよく食べられています。東日本のちまきとは形状も異なり、細長い円錐形です。本格的なものは笹の葉を巻く際に、5色の糸を使用します。

西日本のちまきは、細長い円錐形

九州の一部

九州南部の鹿児島や宮崎でちまきといえば、「灰汁巻き(あくまき)」を指します。灰汁巻きは、きなこや砂糖をまぶして食べる甘い味付けのもちです。地域によっては、砂糖しょうゆなどを付けて食べる場合もあります。

九州の灰汁巻き(あくまき)。そのまま食べても甘いが、さらにきなこをまぶして食べる

木や竹を燃やして作る灰汁に浸したもち米を竹の皮で包み、数時間煮込んで作ります。完成したもちは長方形で、べっこう色に変化していることが特徴です。

食べるときは、糸などを使用して、食べやすいサイズに切ります。灰汁を使用することで殺菌効果が高まり、長期間の保存が可能な上に腹持ちもよいので、古くから携行食として食べられていました。

京都には「食べられない」ちまきも

京都で7月に開催される「祇園祭」では、縁起物のちまきを配ります。見た目は西日本のちまきと似ていますが、中身も葉でできているので食べられません。厄よけのお守りとして、軒や玄関先などに飾ります。

祇園際の厄除けちまき

祇園祭で配られるちまきの起源は、スサノオノミコトの伝承に登場する、疫病を防ぐために身に付ける「茅の輪」です。説話では腰に付けますが、巨大な茅の輪を人がくぐって厄よけをする方法も知られています。

6月30日になると、浄化の儀式である「夏越の祓(なごしのはらえ)」をする各地の神社で、茅の輪くぐりが行われています。

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ちまきのレシピ

ちまきは家庭でも比較的簡単に作れる食べ物です。甘いちまきと中華風のちまき、それぞれの材料と作り方を紹介します。

和菓子のちまきのレシピ

西日本でよく食べられている、甘いちまきのレシピを見ていきましょう。

材料(5個分)

●上新粉:110g
●もち粉:15g
●上白糖:50g
●水:125g
●笹の葉:10枚
●イグサ:5本

作り方

1.笹の葉をよく洗って水けを切り、イグサは熱湯でさっとゆでておく

2.耐熱容器に上新粉・もち粉・上白糖を入れ、少しずつ水を足しながらよく混ぜる

3.2にラップをかけて600Wの電子レンジで3分加熱し、よく混ぜる

4.再び電子レンジで2分加熱し、透明になってつやが出てくるまでしっかりと混ぜる

5.ぬれ布巾をかけ粗熱が取れたら5等分にし、手水を付けながら円錐形にまとめる

6.笹の葉のつるつるとした面を上にして2枚ずらして重ね、枝の近くにもちを一つ置いて包む

7.葉先をまとめて折り曲げ、イグサを通して軽くねじって巻きつける

4の工程で粉っぽい場合は、電子レンジで少しずつ加熱して練る作業を繰り返しましょう。作り終えた後、しばらく置いてから食べると爽やかな笹の香りが移ったもちを堪能できます。

中華風のちまきのレシピ

五目おこわのような味わいの、中華風ちまきの作り方を紹介します。

材料(6個分)

●もち米:2合
●しょうゆ:小さじ2
●砂糖:大さじ1
●酒:大さじ2
●豚肉:100g
●タケノコ:100g
●シイタケ:3~4枚
●ニンジン:50g
●竹の皮:6枚
●たこ糸

作り方

1.もち米を7~8時間水につけておき、水を切る

2.豚肉・タケノコ・シイタケ・ニンジンを5mm角程度の大きさに切る

3.2をフライパンに入れて炒め合わせ、しょうゆ・砂糖・酒を加えて汁が半分になるまで煮る

4.深さのあるフライパンに1を入れて透明になるまで炒め、3を加えて混ぜる

5.6等分にした4を竹の皮で三角形になるように包み、たこ糸で縛る

6.蒸し器に入れて40~50分蒸す

具材は好みのものを入れてかまいません。干しエビや干しシイタケなどを入れてもおいしくなるでしょう。

ちまきを親子で味わってみよう

端午の節句は西日本を中心に、甘いちまきを食べる習慣があります。一方、東日本でちまきといえば、中華風のちまきを指すことが一般的です。地域によって、ちまきの特徴が異なる点を押さえておきましょう。

中国からちまきを食べる風習が伝わったことや、名前の由来も覚えておくとより理解が深まります。ちまきは家庭でも作れるので、親子で挑戦するのもおすすめです。笹の葉や竹の皮に包む作業であれば小さな子どもでも楽しく作れます。親子で一緒に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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