目次
小3なのに一足飛びに小5の勉強。でも意外にできるもの
――オトクサさんの中学受験術は、「塾に行くための時間や費用をかけずに効率よく勉強」「徹底した先取りにより演習時間をたくさんとることで、苦手分野を克服する」というようなユニークなものでした。このやり方で見事開成に合格できたのは、ご長男がしっかり勉強されたからだと思うのです。
オトクサさん(以下:オトクサ):本当にその通りです。
よく「地頭」という言葉で片付ける人がいますが、まぁ兄弟を比べると確かにあると思います。でもその上で、誰よりも努力したあの子のがんばりがあってこその合格ですね。文句を言いながらも、よく僕を信用してやり切ったと思います。
オトクサさんのユニークすぎる中学受験術はこちら
――5年生の問題集をやるには、3年~4年の勉強が前提になると思うのですが、それはどう埋めたのでしょうか。
オトクサ:問題集(新演習)の内容が、復習をしながら新しく学ぶ構成だったので、あまり気になりませんでした。
次男三男は4年生のカリキュラムから勉強しましたが、算数の場合は、むしろ5年生で学ぶ比を早めに教えることで無駄な問題演習時間は削ることができると思います。例えば、速さや濃度の問題ではイメージがしやすいように面積図の解法を学ぶのですが、比を把握していると、この単元はまるっとやらずにすみます。
―他に中学受験では当たり前なのに、しなかったことってありますか?
オトクサ:問題集や過去問の2周目は、していません。間違えた問題をそのときやり直しするだけです。もちろん何度も解くことに意味はあるとは思いますが、限られた時間を考えると新しい問題集に取り組む方が断然成長すると考えています。あと、本番の環境にできるだけ近いようにと、過去問は実物大をコピーして解くのが当たり前かと思いますが、それも面倒だったのでやっていません。分厚い過去問題集を手で押さえながら、巻末にあるすごく小さい解答用紙を使っていましたね。
目指したのは「ほったらかし受験」
―ブログタイトルでもある「ほったらかし受験」とはどういう意味でしょう?
オトクサ:親の伴走が大変という中学受験ですが、5年生6年生では、ほったらかしていても自分で受験勉強しているという状態を目指しました。
そのために3年生・4年生の間は、勉強を教えるのと同時に「親に聞くのではなく、自分で解説を読んだり調べたりするスキル」「親がいちいち促さなくても自主的に勉強をする習慣」を叩き込みました。
――それができるなら苦労しませんけれど……。
オトクサ:うちは毎朝の勉強習慣のリズムを作ったんですよ。最初は僕が促していましたが、途中からは自分で6時に目覚ましをかけて、朝勉強するようになりました。毎朝6時~7時30分は勉強。内容もある程度固定していて、起きてすぐ計算と漢字・語句、終わり次第算数です。
6年生の夏休みからテスト前日まで約半年間は、毎朝6時30分から算数のテストをしました。難関校の過去問、メルカリでゲットした過去の主要塾の模試など、毎朝本気の60分テストです。そして、朝食を食べながら私が丸付け。間違えた問題は学校から帰ってきてやり直すといったルーティンでした。
「やったふり」「わかったふり」だけは妥協しない教育方針
――勉強のチェックはどのようにしていましたか?
オトクサ:横で見ているわけではないので、声掛けは意識しました。
例えばご飯の時に、「今日の理科と社会で勉強したこと教えて」って。そうすると「天体と鎌倉時代」みたいなことをいうわけですよ。
それについて質問してみて、全体の話から細かい部分にストーリーで話ができているときは理解していると判断しましたが、語句の説明に終始するときは理解していないと判断して、寝るまでにもう1回説明するようにと指示していました。
オトクサ:毎日じゃないけれど、国語や算数も抜き打ちで「ノート持って来て」ってやっていました。国語の記述も算数も手抜きはすぐにわかります。正しい解答を書き写して、自分の解答に足りなかった要素をきちんと文字で書く。算数は必ず、図や表を書く。「やったふり」「わかったふり」は見逃さずに叱りました。
大事なのはメリハリ。勉強が終わったら思い切りゲーム!
オトクサ:ただ、塾に行っていない分時間は多くあるので、勉強以外の時間も多くありました。ゲームは6年生の11月まで毎晩していましたが、放課後に遊びに行った日は夜のゲームはしないなど、自分で管理していたのはえらいと思います。
自由度があるのが自宅学習のいいところですね。毎日オンラインゲームに顔を出すし、友達と遊びにも行くし、学校で塾の話をするわけでもないし、直前まで受験をすることすら知らない友人も多くいたようです(笑)。
オトクサ:学校も、楽しく行っていましたよ。長男は、委員会の活動や運動会も全力でやるタイプで、リレーの朝練のために朝の勉強をしない時期もありました。
学校の先生にも恵まれていて、授業で早く問題を解き終わったときは、ちょっと難しい算数の問題をわざわざ作ってくれたり、夏休みの宿題等も普段自宅で勉強しているノートの提出でOKにしてくれたり、本当にありがたかったです。
大事なのはメリハリだと思うんですよ。「決められた時間はしっかり勉強して、心置きなくゲームしよう」、「朝は6時から勉強、終わらなくても22時には絶対寝る」みたいな。息抜きもちゃんとできていたから、続けられたと思いますね。
親への態度や思いもメリハリをつけて…
オトクサ:僕に対しても、勉強のときとそれ以外のときとでは、ぜんぜん態度が違います。勉強のときは叱られて涙を流していたくせに、勉強が終わったら、「ジジィのさっきの怒り方はうざかったなあ」と兄弟同士で悪口言ってますね(笑)。
「今日は飲み会だから遅い」って言うと、兄弟みんなで「ッシャー!!」って、祭りです。
――ちなみにオトクサさんの奥様は、受験に対しては……。
オトクサ:基本的にはノータッチで、全て任せてくれました。何の勉強をしているか、今週のテストは何時にどこか、みたいなことも全く把握していませんでしたね。でも1番の応援者で、心と健康のケアに全力投球してくれました。受験直前期は、長男だけじゃなく、頑張ってる受験生を見るだけで「ここまでよく頑張ってきたね」って泣いてました(笑)
オトクサ:父親と母親の役割が違っていたのも、メリハリとしてよかったんじゃないかなと思います。
すでに次男、三男、四男の「ほったらかし受験」が始まった!
――さて、ご長男が開成合格後、今のオトクサさんの目標は……。
オトクサ:次男と三男と四男がそれぞれ小学校5年、4年、2年なんで、3人とも受験シフトになっています。
――2年生から受験準備ですか……。
オトクサ:準備というよりも、長男を見てきているので勉強するのが当たり前になっているだけです。
長男はスマホももらえたし自分の部屋ももらえたし、何より中学で楽しそうにやっているのを近くで見ているので小5になった次男はヤル気になっていますね。長男同様、既に社会の公民以外は全範囲を終えて問題集にはいっているので、1日5分も勉強の会話はしていません。ただ、次男もスピード重視で一通り範囲を終えた段階なので、模試の成績は良くないです。
三男、四男は、冒頭にもお話した通り、いわゆる地頭が違ってそうで苦労しています。同じことを言っても反応が全然違うので。四男に関してはまだ勉強の習慣をつけているところなので、起きても遊んでしまっていることもあります。ただ、それぞれ個性があるので、その個性に合わせて色々工夫をしたいと思います。
――何人も私立の中学に入学すると、いくら準備にお金をかけなくても学費が大変なのでは……。
オトクサ:超大変です。家族10人なので食事などの生活費でもとんでもなくお金がかかりますからね。ただ、夫婦そろって何とかなるさタイプなので、お金が無くなったら考えよっか程度しか考えていませんでした。そんな時に、東京都の高校授業料実質無償化、中学校も助成金10万円の制限撤廃といった話が出てきて「おお、何とかなりそうだな」と(笑)。
――なんともユニークな中学受験! でも、「塾に行かなければ勉強できないと思い込むな、自宅でも勉強できる」「勉強は自分でヤル気になるもの」という考え方にはドキッとさせられます。塾頼みになりすぎていないか、一度立ち止まることも大切かもしれません。それに、「しっかり勉強したら遊びも十分に」。こういうメリハリも、オトクサさんに学びたいですね!
こちらの記事もおすすめ
お話を伺ったのは・・・
取材・文/三輪泉