「DAO」を小学生にも説明できる? 特徴やメリット・デメリットを知ろう【親子で学ぶ情報社会】

DAOは、最先端技術で実現する新たな組織形態です。投票で意思決定を行うため、フラットで民主的な組織運営が実現します。日本では、地域活性化やクリエーターの活躍の場としてDAOが活用されています。事例を挙げながら、DAOの特徴を解説します。

DAOの定義をわかりやすく言うと

インターネットやデジタル技術が進化を遂げる中、国内外で「DAO(ダオ)」が注目されています。法の整備がされれば、DAOが当たり前の社会になるかもしれません。DAOの意味や従来の組織との違いについて理解を深めましょう。

次世代の新たな組織形態のこと

DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の頭文字を取ったもので、日本語では「分散型自律組織」と訳されます。次世代の新たな組織形態の一つで、「フラット型組織」と呼ばれることもあります。

DAOとは、株式会社をはじめとする従来の組織のような、経営者や管理職を頂点とするピラミッド型ではなく、構成員が互いにつながって事業やプロジェクトを推進できる組織を指す言葉。

従来の組織は、経営者をトップとするピラミッド型です。役員の下には、部長や課長などの管理職がいて、仕事の指示は上から下に伝わります。

DAOの特徴は、特定の管理者がおらず、一人一人の意思決定によって組織が運営される点です。組織内に上下関係はなく、みんなで協力しながらプロジェクトを進めていきます。

DAOに注目が集まる理由

DAOの概念が注目されるようになったのは、2021年以降です。その背景には、インターネットの世界で技術革新が起こり、Web3.0の概念が浸透し始めたことが挙げられます。

Web3.0とは「分散型」と呼ばれる次世代のインターネットで、GoogleやX(旧Twitter)といった特定の管理者を介さず、個人同士が直接的につながれるのが特徴です。データの改ざんや情報漏えいのリスクも少なく、今後はあちこちで新たなデジタル経済圏が生まれていくと考えられています。

近年は、社会全体が多様性を重視する傾向があります。従来のピラミッド型の組織では、一人一人の個性や能力が存分に発揮されにくいため、DAOのような組織形態に注目が集まっているのです。

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DAOの3つの特徴

日本の大部分の学校や企業はピラミッド式の組織であるため、「分散型自律組織」と聞いてもピンとこない人は多いでしょう。DAOの三つの特徴を詳しく解説します。

ブロックチェーンを基盤とする

DAOの一つ目の特徴は、データ管理の仕組みに「ブロックチェーン」が採用されていることです。ブロック単位で取引記録を管理する技術で、新たな記録が追加されていくたびにブロックが増え、1本のチェーン(鎖)のようにつながった状態になります。

ブロックチェーンによる分散型データベース(左)と、これまでの中央管理型データベース(右)との比較イメージ

取引記録は、複数のコンピューターに保存されるため、メンバーであれば誰でも内容を確認できます。一部のコンピューターが停止しても、ほかのコンピューターが動いていれば、システムが完全に止まることはありません。記録の修正や消去は不可能に近く、透明性が高いのも特徴です。

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意思決定はメンバーの投票で行う

従来の組織では経営層が意思決定を行いますが、DAOではメンバーの投票によって方針が決まります。厳密には、DAO独自の暗号資産である「ガバナンストークン」を保有するメンバーに投票権が与えられる仕組みです。

ガバナンストークンを多く保有する人ほど影響力は大きくなりますが、一般的な会社のように、一部の経営層の意見だけで組織の方向性が決まることはありません。組織への提案は、一定のルールに基づいて行われます。

スマートコントラクトで運営される

DAOの運営には、「スマートコントラクト」という仕組みが使われます。ブロックチェーン上で実行されるプログラムの一種で、組織のルールや条件などを事前にプログラミングしておけば、自動的に操作や取引が実行されます。

以下はスマートコントラクトでできることの一例です。

●メンバーの貢献度に応じて報酬を設定する
●期日通りに指定した口座に送金する
●顧客から保険料を徴収し、事故発生時に保険金を支払う

スマートコントラクトを導入すれば、人の介入を最小限に抑えられます。ブロックチェーン上で実行されるため、情報の不正な改ざんはほぼ不可能といえるでしょう。

国内にはどんなDAOがある?

DAOは会社に代わる新たな組織として、国内外で注目されています。日本には地域の活性化を目的とする地域創生DAOや、アニメや漫画のクリエーターが活躍できるDAOなどがあり、画期的でユニークな取り組みが行われています。

山古志DAO

新潟県長岡市内の集落「山古志(やまこし)」で生まれたDAOです。かつての山古志には2,000人以上の人々が暮らしていましたが、時代とともに過疎化が進み、今では800人以下となりました。

山古志DAOは、山古志に関わる「デジタル村民」を1万人に増やす目標を掲げ、地域住民とデジタル住民による新たな自治圏をつくろうとしています。デジタル村民には、山古志が誇る錦鯉(にしきごい)をモチーフにした「Nishikigoi NFT(デジタル住民票NFT)」が付与されます。

NFTとは、ブロックチェーンを基盤にして作成したデジタルデータです。「非代替性トークン」とも呼ばれ、データが代替できない一点物であることを証明します。

出典:Nishikigoi NFT

美しい村DAO

村の地域資源を活用したサービスで「地域創生」を目指すDAOです。複数の自治体の連携によって運営されているのが特徴で、現時点では鳥取県智頭町(ちづちょう)と静岡県松崎町が主体です。

デジタル村民証となるNFTを購入した人は、美しい村DAOのメンバーとしてDAOで発行するコンテンツNFTの企画に関与できるほか、リアル村民と同じ「村民向けサービス」を享受できます。

出典:美しい村DAO

Ninja DAO

「Ninja DAO」は、「CryptoNinja(クリプトニンジャ) NFT」という作品のコミュニティーです。通常、キャラクターを模倣して商品化する行為は著作権侵害に当たりますが、CryptoNinjaはガイドラインを守りさえすれば、無許諾で制作・販売に利用できます。

CryptoNinjaを盛り上げようと、DAO内ではメタバースのゲーム開発や動画コンテンツの作成、アニメ化などのプロジェクトが進行しています。性別・年齢・国籍などの制約はなく、基本的に誰でも参加が可能です。

出典:Ninja DAO

DAOのメリットとデメリット

現時点において、DAOは発展途上の段階にあります。従来の組織にはないメリットを享受できる反面、解決しなければならない課題も残っています。代表的なメリット・デメリットを見ていきましょう。

透明性と公平性が確保されている

DAOのメリットは、組織としての透明性と公平性が確保されていることです。取引記録やデータは常にメンバーに公開されており、改ざんはほぼ不可能です。取引や契約は、スマートコントラクトによって自動的に処理されるため、不正が生じるリスクは極めて低いといえます。

中央集権的なピラミッド型の組織と違い、意思決定はメンバーの投票によって行われます。ガバナンストークンの分配に偏りがなければ、多様な意見を取り入れられるでしょう。誰もが運営に関与でき、自分の能力やアイデアを生かすチャンスに恵まれます。

意思決定に時間がかかる

DAOのデメリットは、組織の意思決定に時間がかかりやすい点です。

企業の場合、社長をはじめとする経営層が組織の方針や戦略を決め、それを部下に通達します。社員全員の意見を聞いて物事を進めるわけではないため、意思決定は比較的スピーディーであるといえるでしょう。

一方、DAOはメンバーの投票で物事が決まります。参加人数が多ければ多いほど意思決定に時間がかかり、プロジェクトがなかなか前に進まないケースも珍しくありません。トラブル発生時の対応が遅れると、大きな損失につながる可能性もあります。

DAOの将来性に期待しよう

DAOは、これまでのピラミッド型組織と正反対の性質を持つ「分散型自律組織」です。全体を取り仕切るリーダーはおらず、あらゆる物事がメンバーの投票によって決定されます。日本の会社にありがちな上下関係がないため、メンバーとは公平でフラットな関係性が築けるでしょう。

DAOには多くの魅力があるものの、デメリットが全くないわけではありません。組織としては発展途上段階にあり、法整備もそれほど進んでいないのが実情です。今後Web3.0が人々の間に浸透すれば、将来はあらゆる場所で多種多様なDAOが生まれる可能性があるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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