最新の世論調査ではハリス氏が一歩リード
米大統領選まで残り3ヶ月となりましたが、ロイター通信などが公表した最新の世論調査によると、全米での支持率ではハリス氏が42%、トランプ氏が37%と、ハリス氏が5ポイントリードする展開となっています。
また、ネットメディア「クック・ポリティカル・リポート」によると、激戦7州のうち、ペンシルベニア州での支持率はハリス氏49%、トランプが48%、ミシガン州ではハリス49%氏、トランプ氏46%、アリゾナ州ではハリス48%、トランプ46%、ノースカロライナ州ではハリス48%、トランプ47%などとなっており、状況はハリス優勢になっています。(2024 年8月中旬時点)
2016年は国民からの獲得票数が少なかったトランプ氏が勝利
このままの状況が続けば、得票総数でハリス氏が勝利すると思うかも知れませんが、そうなるとは限りません。2016年の米大統領選挙ではトランプ氏とヒラリー・クリントン氏が戦いましたが、クリントン氏の得票数が6420万票、トランプ氏が6220万票と200万票あまり少なかったにも関わらず、選挙戦ではトランプ氏が勝利しました。
なぜ、トランプ氏が勝利したのでしょうか。私たちは米国大統領選挙の仕組みを理解する必要があります。
獲得票数が多いからと言って勝利するわけではない
米国大統領選挙では国民からの獲得票数が多いほうが勝つという純粋なやり方ではありません。
全米各州には人口比に応じて選挙人の数が決められており、たとえばカリフォルニア州の人口は3950万人あまりと米国で最も多く、選挙人の数は54人となっています。次いで人口2900万人あまりのテキサス州が40人、2150万人あまりのフロリダ州が30人などとなり、ハワイ州が3人、人口の少ない米中部の州などは選挙人の数が10人以下になります。選挙人の総数は538人であり、要は過半数になる270人以上を獲得したほうが勝利することになるのです。
有権者たちは支持する大統領候補者の名前を書くのですが、その選挙結果は州ごとに集約され、州の獲得票数で多かった候補者が“その州に割り当てされた全ての選挙を獲得できる”方式(勝者総取り)になっており、カリフォルニア州やテキサス州、フロリダ州など人口が多い州で勝利すると大きく有利になります。
たとえば、A候補とB候補が争っていても、カリフォルニア州でAがBより1票多かっただけでも、A候補はカリフォルニア州の選挙人54を全てもらうことになります。米大統領選では、各州に割り当てられた選挙人の数をどんどん上乗せして行く形で、270人に早く達したほうが勝利するのです。
8年前の選挙戦では、ヒラリー・クリントン氏が獲得票数ではトランプ氏を200万票あまり上回りました。しかし、クリントン氏は支持者の数では上回ったものの、州での選挙人勝ち取り競争では敗北し、トランプ氏が大統領になりました。8年前の選挙人勝ち取り競争では、トランプ氏が306人、クリントン氏が232人となり、大きな差が生じました。
今回の選挙戦ではハリス氏が支持率ではリードしていますが、3ヶ月後の結果がどうなるかはまだ分かりません。
この記事のPOINT
①米国大統領選は、最新の世論調査ではハリス氏が優勢
②アメリカの大統領選挙は、州の人口に合わせた選挙人の投票で、多かったほうの候補が割り当てられた全ての選挙を獲得できる方法
③8年前のクリントン氏も、獲得票数ではトランプ氏を上回ったものの、州での選挙人勝ち取り競争で敗北し、トランプ氏が大統領になった
あなたにはこちらもおすすめ
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。