計算力は、小学3年生までの基礎力で決まる!「計算ミスが減らない」「計算が遅い」悩みを解決する方法は?暗算力がアップするおすすめ問題から、高学年の計算ミスの原因まで!【花まるグループ スクールFC松島先生に聞く】

算数の好き嫌いを大きく左右する計算力。スクールFCの松島伸浩先生は、「小学3年生までの基礎力が、その後の計算力に大きく影響する」と話します。3年生までのお子さんをお持ちのママ・パパは今からでも間に合いますし、高学年になって気づいた場合でも、まだ遅くはありません。松島先生が教えてくれた“計算ミスを減らすための具体的な解決策”を、さっそく実践してみましょう。

「簡単な問題」と侮るなかれ。計算力は、小学3年生までの基礎力で決まる

計算力を伸ばすための「基本のキ」は、何といっても日々の練習です。

ミスが多い場合、その主な原因は練習不足。計算問題は、十分な練習を積めば誰でもできるようになりますが、低学年で計算の基礎ができていないまま学年が上がってしまうと、どこかで必ずつまずいてしまいます。その結果、いくら時間をかけても計算ミスが増え、やがてやる気を失ってしまう悪循環に。

そうならないためには、とにかく、小学3年までの基礎計算を大切にすること。これがすべての土台になると言っても過言ではありません。

単元では、たし算とひき算のくり上がり・くり下がり、そして2年生で学ぶ九九です。苦手意識が強くなった高学年にやり直すのは大変なエネルギーが必要です。そうならないように、低学年では、これらをしっかりと練習する時間と量を確保してください。

小学1・2年生で四則演算の暗算力を鍛える

松島先生の著書『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』(KANEN)の「嫌いを好きにする暗算力アップのための問題」を完璧にすれば計算の達人になれる!
松島先生の著書『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』(KANEN)の「嫌いを好きにする暗算力アップのための問題」を完璧にすれば計算の達人になれる!

「暗算力」は、計算のスピードと正確さを向上させ、複雑な問題でもミスを減らすことができる、とても大切な力です。拙著、『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』内の、「嫌いを好きにする暗算力アップのための問題」(p.258-260)をご紹介します。

たして10になる数は計算の基礎になる(『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版 』より)

ひとつめは、「たして10になる数」の計算です。指を使わずにできるようにしましょう。

くり上がり・くり下がりの基本計算(『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版 』より)

次に、くり上がり・くり下がりです。暗記ではなく、2つの数に瞬時に分けて計算する反射神経を身につけます。たして10以外のすべてのくり上がり・くり下がりの練習ができます。

1年生では、このふたつができるようになることを目指しましょう。

2年生は九九を完璧にしよう

そして、2年生では何といっても九九。

「4×6はいくつ?」だけではなく、

「答えが24になる九九をすべて言ってみて」

にも瞬時に完答できるでしょうか?

どんな聞かれ方をしてもすぐに答えられる状態にするのには意外と時間がかかるもの。大人には簡単に思えるかもしれませんが、子どもがどの方向から質問されても正確に答えられるようになるまでには、コツコツと練習を重ねなければなりません。「九九」が完璧にできるようになるまでやってください。

九九を極めたら2ケタ×1ケタのかけ算へ

九九を極めたら、次のステップとして、2ケタ×1ケタのかけ算を暗算で解けるようになるのが理想です。

3年生以上向けの2ケタ×1ケタの計算(『算数嫌いな子が好きになる本』より一部の問題を抜粋)

これはわり算にもつながります。かけ算が頭の中でスラスラできていれば、4年生で3ケタ÷2ケタのわり算を学ぶ際、わり算の最初の位に何を立てるかがすぐにわかるからです。

同書P260の「2ケタ1ケタ」の問題は、さまざまなくり上がりのパターンを網羅した厳選の81題ですので、3年生までにこれが完璧にできるようになるとお子さんは計算の達人になれますよ。4〜6年生は、この基礎を使って計算を行うだけです。

4〜6年生の計算ミスとつまずきの原因とは

小数点を正しく動かしていない?計算力が足りない?

4年生になると小数を扱う問題が出てきます。基礎的な計算力はしっかりあるのに、ミスが多い原因はただ一つ、小数点の移動の間違いです。

たし算、ひき算、かけ算で、小数点を正しくつけていなかったり、揃えていなかったりしていませんか? わり算の場合も同様で、小数点の移動がうまくできていないことがミスにつながることがあります。こうした場合は、繰り返し練習することで改善できます。焦らずに計算練習を積んでいきましょう。

4・5年生の計算ミスは、3年生までの基礎力不足

4年生や5年生で、「算数ができなくなってしまった」「計算ミスが減らない」というのであれば、3年生までの計算でつまずいている可能性があります。かけ算ではくり上がりのあるたし算わり算ではくり下がりのあるひき算を間違えているのかも。その場合は、前の学年に戻って基礎計算からやり直しましょう。4年生であっても1年生の計算から、自分のペースで取り組むので構いません。続けていれば必ず力がついてきます。

実は多い。計算でつまずいている中学受験生

中学受験の塾では、計算ができることを前提に授業が進みますが、実は計算でつまずいていたということもよくあります。難問が次々に出題される中学受験ですが、全ての基本は計算力。これが固まっていないと、他の問題にもスムーズに取り組むことができません。基礎的な計算力をしっかり固めることが受験成功の鍵となります。

ただし、受験の追い込み期では、ミスを気にし過ぎて自信をなくすよりも、ミス込みでもほかの問題や科目でカバーして合格点を目指すという考え方にシフトしたほうがいい場合もあります。受験までの時間が限られているため、完璧を目指すよりも、トータルで合格点を取る方が重要だからです。

もちろん、自分に合った見直しのやり方などを身につけて、ミスをゼロにするのではなく、少しずつ減らしていくという意識も大切です。

解決ステップ① 叱る前に、計算ミスの原因を見つけてあげよう

親はつい「どうしてまた計算ミスしてるの?」と問い詰めてしまうものですが、それよりも、どのあたりでつまずいたかをチェックすることが大切です。

どこで間違っているのかがわかれば、お子さんに合ったサポートができるようになります。そのために、テストの点数だけではなく、中身を丁寧に見てあげてください。くり上がりやくり下がりがきちんと理解できていなかったり、「15-8」や「13-5」のような特定の計算でつまずいたりしていないでしょうか。

子どもが算数でよくつまずく24コのチェックリスト(『算数嫌いな子が好きになる本』カイゼン刊より)

『算数嫌いな子が好きになる本』で紹介している「つまずきチェックリスト」を活用すれば、お子さんの計算ミスの原因が見つかるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください。

解決ステップ② 計算ミスが多い子の特徴を知ろう

計算ミスのいちばんの原因は?

計算ミスが多い、いちばんの原因は計算練習が足りていないことですが、彼らにはいくつかの共通する特徴があります。

・計算知識や計算技術が不足している

・計算が得意でスピードを優先してしまう

・ノートがぐちゃぐちゃで、字が汚くても気にしない

小さなつまずきを見逃さずに対処するためには、テストの答案やノートを見るだけで十分です。計算テストでのミスは、一時的な集中力不足かもしれませんし、基礎的な計算力が不足しているのかもしれません。

本当に理解できているかどうかを見極めるために、何回分かの計算テストを溜めておき、同じようなミスが続いていないかを確認してください。学校では時間的にも人数的にもそこまで細かく見るのは難しいと思うので、漢字と同様に、計算も親御さんがご家庭でサポートしてあげてほしいところです。

よくある計算ミスの具体例もチェック

引き算でまちがいやすいパターンとしては、くり下がりを忘れてそのまま計算してしまうこと。

〈図〉『小学校6年間分の計算がスッキリわかる本』より

 

また、割り算では、割る数を使ったかけ算をして商の見当をつけるとき、大きい数をためさずに小さい数できめつけてミスしてしまうパターンも多いです。

〈図〉『小学校6年間分の計算がスッキリわかる本』より

 

解決ステップ③ 基礎に戻ろう。その際の注意点も

前の学年に戻る時は子どものプライドを尊重して

4・5年生になってくり下がりがまだ十分に理解できていないと気づいた場合、子どものプライドもあり、基礎に戻ることを受け入れるのが難しいことがあります。そんな時には、自然に基礎を見直せる、次のような方法がおすすめです。

・計算アプリを使う

・計算を取り入れたパズルに挑戦する

・学年が入っていない進級式ドリルや単元別のドリル(たし算、ひき算、かけ算など)を使う

・6年間の算数をまとめた一冊の問題集に取り組む(時間に余裕がある夏休みに計算力を鍛えるのが効果的、薄めの問題集でOK)

・塾に通うのもおすすめ

ゲーム感覚で計算力を鍛えられるのがよいでしょう。また、買い物に一緒に行き、予算内ですき焼きの材料を買わせるなど、生活の中で自然に数字に触れる時間を作ることが大切。学年にとらわれず、自分のペースで進められるものを選べば、子どもも楽しみながら復習できます。

解決ステップ④ 1日5分、集中してやろう

イヤイヤ計算練習をやるのはNG

計算練習はダラダラやっても効果は上がらないので、短時間でも集中して取り組むことが重要です。トレーニングは1日3〜5分で十分です。花まる学習会の計算教材「サボテン」では、たとえば3分と決めて、その時間内に終わらなくても、前日と比べて進歩があれば良しとしています。

いちばん良くないのは集中していない状態でダラダラ計算を続けること。結果としてミスが増えて「やっぱりできない、計算が嫌い」となってしまうからです。計算嫌いは算数では致命的。絶対に避けなければなりません。逆に、計算が楽しくなれば自然と正確さとスピードが向上し、良い循環が生まれます。必ず時間を区切って毎日コツコツ行うようにしてください。

生活の軸とセットにして習慣化を

集中しやすい朝に計算や漢字に取り組むのが理想ですが、晩御飯の後やお風呂の後など、お子さんの続けやすいタイミングで構いません。生活習慣の中に組み込むのが続けるコツです。その子に合ったやり方で無理なく習慣化することが大切です。

小学校の基礎ができていないと、中学以降の数学でも苦手意識が継続し、そのうちに数学自体の学習を諦めてしまう可能性もあります。もし不安を感じたら、塾に通うのも一つの方法です。計算の習慣は、歯磨きと同じように毎日コツコツと続けることが大切。少しずつ積み重ねていけば、必ず力になりますので、今日からさっそくやってみましょう!

算数のつまずきをスッキリ解決!算数克服術がたっぷり詰まった1冊

「算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版」カンゼン刊/1980円

算数でのつまずきは、原因を明らかにすることが克服の第一歩。2023年4月に発売した『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版』では、「なぜ?」「どこで間違えた?」をしっかり振り返りながら、誤答例とあわせて、プロが算数克服術を伝授してくれます。今回、記事で紹介したチェックシートや暗算力アップの問題、つまずきやすいポイントも、こちらの本書から一部を紹介しています。

大人気の花まるグループ スクールFCの松島伸浩先生による、わかりやすい解決策を知ったら、お子さんも算数好きになるかも!

『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版』詳しくはこちら>>

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教えてくれたのは…

松島伸浩|
花まるグループ スクールF C代表

1963年生まれ。現在、スクールFC代表兼花まるグループ常務取締役。教員一家に育つも、私教育の世界に飛び込み、大手進学塾で経営幹部として活躍。36歳で自塾を立ち上げ、個人、組織の両面から、「社会に出てから必要とされる『生きる力』を、受験学習を通して鍛える方法はないか」を模索する。その後、花まる学習会創立時からの旧知であった高濱正伸と再会し、花まるグループに入社。のべ10,000件以上の受験相談や教育相談の実績は、保護者からの絶大な支持を得ている。『中学受験 親のかかわり方大全』『中学受験 物語ですらすら頭に入る よく出る漢字720』(実務教育出版)、『算数嫌いな子が好きになる本 小学校6年分のつまずきと教え方がわかる』(カンゼン)など著書多数。

*記事内の図や式は『算数嫌いな子が好きになる本 増補改訂版』(高濱正伸監修/松島伸浩著、カンゼン刊)を参考に掲載しているものです。

取材・文/黒澤真紀

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