両親がそろっている家庭ばかりじゃない。保護者会での経験から思う「多様性の時代」に大切なこと【シングルファーザーのひとりごと】

HugKumの好評連載【シングルファーザー奮闘記】のライターが紡ぐ、父と子のひだまり日常エッセイ。今回は学校行事や保護者会などで経験した出来事から感じたことを、当事者の視点で綴ります。
(執筆/ひまわりひであき)

妻が癌と分かってから1ヶ月で他界。突然のことに戸惑い、先が見えない状態でしたが、いろんな方が支えてくれたおかげで娘は順調に成長し、無事に義務教育を終えることが出来ました。その学校生活の中で、たくさんの楽しい思い出ができたようです。

その過程には保護者が参加するイベントなどがあり、僕自身もいろいろな思い出ができました。今回はそれらの中で、子どもと一緒ではなく、保護者のみで実施される懇親会や勉強会などの場で、僕が気にしていたことや印象に残っている出来事について、お話させてください。

保護者の集まりで、いつも気にしていたこと

子どもの学校生活の中で、保護者のみで集まる場はいろいろありますが、いくつか例を挙げると、授業参観後の保護者会、部活の保護者会、保護者のための勉強会、イベントの準備や運営のための話し合いなどがありますよね。

こんな場になると盛り上がるのが、各家庭の子どもさんや旦那さん/奥さんであるパートナーの話題。子どもやパートナーがそばで聞いていない場だからこそ、多くの方が自分の家庭のことを面白おかしく話したり、愚痴を言ったりしながら盛り上がっていきます。

実は、そのような場で僕がいつも気にしていたことがあります。それは、「シングルファーザー」ということを他の方に気づかれないように話すことでした。

そんなことを気にするのはおかしいと思われた方もいらっしゃるかもしれませんし、僕自身もシングルファーザーということを知られることは、普段なら全く嫌ではありません。

でも、周りの方が奥さんや旦那さんのことを楽しく話しながら盛り上がっている場で、シングルファーザーということを知られると、僕に気を遣う方がいて、その場が盛り下がると申し訳ない・・・と考えてしまうのです。

さらに、妻と死別したことでシングルファーザーになった経緯を知られたら、その場がしんみりしてしまうのではないか・・・と懸念していました。

「シングルファーザー」ということを気づかれないようにするが・・・

そのため、「家事や子育てをパートナーとどのように役割分担しているか?」といったことをグループワークで話し合うとき、僕はなるべく発言しないようにしていました。今だから言えますが、その話題が始まったらトイレに逃げたこともありました。(笑)

それでも、周りの方が「~さんところの奥さんはいかがでしょうか?」などと、僕へダイレクトに質問を投げかけられると、なにか返答しなければなりません。

本当なら「皆さんが話してくださった内容と、だいたい同じですね・・・」とかわしたいところですが、こんな場で質問を投げかけてくれる方は親切な方が多く、グループで発言をしていない僕のことを気にかけてくれ、質問を投げてくれているんですよね。

だからこそ、返答に葛藤しながらも「うちは父子家庭で僕一人なので」と、そんな親切心に感謝しながら正直に答えていました。その結果、周りの反応は・・・

「大変ですね・・・」「お父さん一人で子育てされて尊敬します」「うちも旦那いなんで、同じですねー」などとさまざまですが、たとえ場が盛り下がらなかったとしても、僕の発言から話題が僕のことに向いたり、その場の雰囲気がなんとなく変わったりすることを申し訳なく感じていました。

憤りを感じながら、シングルファーザーであることを開示

でも、それを気にすることを誰かから強制されたわけではなく、自らしていたことなので、そんな場面はたいした苦ではなかったのですが、とある出来事で僕は憤りを感じながら、シングルファーザーであることを大勢の前で開示したことがあります。

それは保護者の懇親会。参加者は50人以上で、僕の地域では参加人数が割と多い会でした。このときは夫婦で参加している家庭が多くいましたが、僕は当然ひとりで参加をしていました。

会が始まると参加者全員が順番に自己紹介をしていき、僕にその順番が回ってきた時です。

僕が「~です。よろしくお願いします」と自己紹介をすると、会の司会者が「奥さんはどこにいますか?」と聞いてきました。僕は苦笑いをしながら「今日はいません」と返答すると、司会者は「あなたじゃなくて奥さんが来なきゃ。次は奥さんを連れてきてくださいね」と・・・・・・。

僕は表情や声のボリュームは変えませんでしたが(おそらく・・・笑)、

「娘が3歳のときに死んでしまったので、今後も連れてこられないです。私だけなら参加しないほうが良いですか?」と、内心は深く憤りを感じながら言いました。司会者は焦った表情でしどろもどろになり、その場は何とも言えない気まずい雰囲気に変わってしまいました。

また、学校のクラス役員を決める会議でも似たようなことがありました。

たまたま教室のいちばん前に座っていた僕に、進行役が「やっぱりくじ引きで決めるより立候補がよいので、お父さん、やってみませんか?」と聞いてきたので、僕は苦笑いしながら「いやぁ、ちょっと・・・」と返すと、「勝手に引き受けると、奥さんに怒られるからダメですかね?」と更に問いかけてきました。

僕はこの時も内心は腹が立っていましたが、そこは上記の懇親会で気まずい雰囲気になった経験を思い出して、妻のことには触れずに苦笑いしたままでやり過ごしました。

多様性の時代といわれる今だからこそ

このときの司会者や進行役の方に悪気がなかったことは理解できますし、場の雰囲気が気まずくなったのは、僕の言い方がよくなかったからかもしれません。

でも、両性の親ふたりが揃っている家庭だけではないことや、それぞれの家庭によって家族のあり方や状況が違うことを少しでも考えたり、想像したりしてほしいと感じた出来事でした。

特に多くの人が集まる場では、一般的な多数派を中心にした方向へ、話題や議論が進んでしまう傾向になりやすいと思うので、その場で目の前にいる相手の背景を想像しながら話をすることは、非常に大切だと思います。

また、多様性の時代といわれる今だからこそ、そんなことを意識することがますます重要になってくるでしょうし、それが思いやりで溢れる、みんなが生きやすい世の中へ繋がっていくような気がします。

単なる僕の経験から、なんだかスケールの大きい話になってしましましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

すべての親子が幸せでありますように!

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文・構成/ひまわりひであき

※写真はイメージです。

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