「リビングvs子ども部屋論争」に終止符!? 子どものやる気・集中力がぐんぐん上がるベストな環境とは【教育専門家 石田勝紀さんに聞く】

「早く宿題しなさい!」と言っても、子どもがなかなか机に向かってくれない。やっと席についたと思ったら、今度はダラダラして全然集中していない様子…。毎日そんなわが子の姿を見てはイライラしてしまい、どっと疲れていませんか? 「うちの子、どうしてこんなにやる気がないのかしら」と、ため息をついてしまうこともありますよね。

教育専門家の石田勝紀さんによると、子どもが勉強に集中できないのは本人の怠けではなく、その子の特性に合った環境を用意できていないことも要因になり得るというのです。今回は、ガミガミ不要で子どものやる気・集中力がぐんぐん上がる家庭学習の環境について、石田さんにたっぷりお話を伺いました!

シングルタスク型orマルチタスク型? まずはわが子のタイプを知ろう!

――子どもを勉強に集中させるためには、何から見直せばよいのでしょうか。

石田さん やる気や集中力を削ぐケースはいろいろあるので一概には言えないのですが、いちばんに考えなければいけないのは、子どものタイプです。私は大きく分けて、一点集中型の「シングルタスク」と、周囲の情報を拾いやすい「マルチタスク」という2つのタイプがあると考えています。

シングルタスク型の子は、自分の興味があるものに入り込めば、どんな環境であろうとも没入するタイプ。一方でマルチタスク型の子は、周囲で音がしていたり、いろいろなものが視野に入ったりする空間だと、集中しにくい特性があります。

子どもに合った学習環境を用意するには、まずはわが子がどちらのタイプなのかという気質を見極めることが必要でしょう。

――わが子がどちらのタイプか、どうやって見分ければよいでしょうか。

石田さん 10歳くらいまではやや分かりづらい部分もあるのですが、簡単に言うと、好き嫌いをハッキリさせていく子がシングルタスク型です。逆に、周りに合わせたり、親の言うことをきっちり聞けたりするタイプはマルチタスク型ですね。

子どものタイプに応じたやる気、集中力の引き出し方

――タイプによって、勉強へのアプローチも変わってきますか?

石田さん 変わります。まずシングルタスク型の子は、自分のスイッチさえ入ればどんな環境でも集中しやすい反面、とにかく本人のやる気が起こらないと、周りが何と言っても絶対にやりません。ですから、まずは本人が今いちばんやりたい科目から始めていく、という手順をとるのがコツになります。

一方で、マルチタスク型の子は、周囲の情報を拾うことで集中力が散漫になりやすいので、なるべく情報を遮断すること。例えば、イヤーマフを使ったり、勉強スペースをパーテーションで区切ったり、机を壁に向かうように配置したりなどの工夫が効果的です。

それから、マルチタスク型は仕組みや仕掛けが大好きなんですよ。「何時から何時までこれをして、次にこれをする」というスケジュールや秩序を重んじるので、タイマーなどを使って全体的な仕組みを作ってあげると、その通りに気持ちよく動いてくれます。

道具は出しっぱなしでOK!「勉強ができる子」の家の意外な共通点とは?

――やる気や集中力を削ぐケースはいろいろ…とのことですが、家の中で少しでも勉強に向かいやすくするために、これだけは気を付けたいという点を教えてください。

石田さん やる気をアップさせるうえで、ぜひ覚えておきたいのは「ツーアクション(2動作)の法則」です。人間はツーアクションまでなら動けますが、スリーアクション以上になると、めんどくさくなって途端にやらなくなるという行動心理の法則があるんです。

例えば、辞書や図鑑が本棚にきれいに片付けられているとしましょう。子どもが調べようとしたとき、「1:立ち上がる」「2:本棚から引き出す」「3:席に戻って座る」「4:箱から出す」「5:ページを開く」…これだけで5アクションですよね。大人だってめんどくさくなってしまうのに、子どもが自らやるわけがない(笑)。

――たしかに、大人でも「後でいいや」となりそうです 。

石田さん そうなんです。だから、勉強ができる子たちの家では、辞書などの調べ物は全て手の届くところに置いてあります 。パッと取って開くだけのツーアクションで設定されているから、すぐに調べる習慣がつくんです。

そして大切なのは、いちいちしまわないということ。ノートも開きっぱなし、勉強道具もやりっぱなしでいいんです。下手に勉強道具をきれいに片付けちゃうと、次にやるときに出すのがめんどくさいからやらなくなってしまいます。机にパッと座ったら、1秒ですぐに取りかかれる環境にしておくことが重要です。

――親としては“出しっぱなしはだらしがない”という固定観念があって、「ちゃんと片付けなさい!」と言いたくなりますが、やる気アップのためには逆効果だったのですね。

石田さん 図鑑や辞書だけでなく、筆記具も出しっぱなしが望ましいです。ですから、学校で使うものとは別に、家庭用の一式を揃えて、勉強する場所にセットしておきましょう。そうすれば、ランドセルからいちいち出すという工程をひとつ減らしてあげることができますから。

勉強など親が子どもにやらせたいことはなるべく手間(アクション数)を減らしてあげるのが鉄則です。逆に、ゲームなど親がやらせたくないものは、それをきっちり箱に片付けさせてアクション数を増やせばいい。出すのがめんどくさいから、自然とやる回数が減っていきます。

カフェのほうが仕事がはかどる理由と同じ! 子どもが勉強に集中できる環境は…

――勉強する場所について、昔から「リビングと子ども部屋、どちらが集中できる?」という論争があります。とくに、気が散りやすいマルチタスク型の子の場合、自室の学習机がいちばん集中できるのでしょうか?

石田さん そうとも言いきれないですね。実は「ホワイトノイズ効果」と言って、人間は無音状態よりも適度な雑音(ホワイトノイズ)があるほうが集中力が高まると言われています。大人でも、静まり返った書斎よりザワザワしているカフェのほうが仕事がはかどることってありますよね。

子ども部屋はシーンとしていて音がないから、子どもは寂しいし、勉強しようにも落ち着かない。だから、多くの小学生がリビングルームで勉強したがるのは非常に自然なことなんですよ。親が近くにいる安心感もありますしね。

――リビング学習は何歳くらいまでやるのが一般的なのでしょうか。

石田さん 自我が芽生えて、自分の世界に閉じこもりたがる思春期まではリビングで十分です 。女の子なら小学校高学年、男の子なら中学校2年生くらいが目安ですね 。小学生のうちは、いくら子ども部屋を与えても大抵は物置になってしまいがちですから、そこで勉強することを親は期待しないほうがいいかもしれません。

親の決め打ちはNG! 子どものリズムを見極める「1週間お試し調査」を

――では、子どもが自分から「自室で勉強したい」と言い出すまでは、基本的にはリビング学習がベターということでしょうか。

石田さん “リビングか子ども部屋か?”という問いの立て方自体がナンセンスかもしれません。そもそも、やる気や集中力は、場所だけでなく時間帯や科目によっても左右され、子どもにとってベストなリズムや集中できる環境は、一人ひとり異なります。だからこそ、まずは親子で「どの場所でどの時間帯に何の科目をやるのがいちばん集中できるか」を1週間ほどお試し調査してみてほしいんです。

――勉強の場所や時間、科目をいろいろお試ししてみる?

石田さん はい。時間帯に関して言えば、親は「学校から帰ったらおやつを食べる前にまず宿題をやりなさい」と言いがちですが、実は子どもによっては、帰宅直後は気分がのらず、朝の登校前がいちばん集中できるなんてケースもあるんです。ですから、早く早くとせかすのではなく、おやつの前よりも後がいいのか、夜ご飯の前、お風呂の後など、勉強するタイミングをいろいろ試す余地はあると思います。

科目に関しても、 国語の長文読解のように文章をじっくり読む科目は、音が気になりやすいので静かな子ども部屋。一方、算数はリビングで、お母さんが夕飯を作っている姿が視界に入る席の方が落ち着くなど、いろんなパターンがありますよ。

――勉強って決まった時間や場所でやるものだと思っていたのですが、そうではないのですね。

石田さん はい。大事なのは、その子が最もリラックスして集中できる「子どもオリジナルモデル」を見いだすことです。例えば、「勉強は机についてやるもの」というのも親の決め打ちで、教科書を読むだけならソファに寄りかかったり寝っ転がったりという姿勢のほうが内容が頭に入ってきやすいという子もいます。「だらしがない」などと叱ったりせず、どうすればパフォーマンスが上がるのか、柔軟な視点で探ってみるのがベストではないでしょうか。

調査期間中は、いろいろ試しているうちに自然と勉強しているわけですし、もし集中できなくても「あ、この場所や時間帯は合わないんだね。じゃあ次は変えようか」と、親もイライラせずに修正していけますよね。「勉強とはこうあるべき」という価値観に縛られず、子どもの「ここが落ち着く」という感覚を第一優先にして、ガイド役に徹しましょう。

ダレる前に強制終了! 勉強は「ページ」ではなく「時間」で区切る

――子どもが机についてはいるけれど、心ここにあらず…という状態のとき、親はどんな声かけをすればいいでしょうか。

石田さん 親はよく「このページが終わるまでやりなさい。終わったら遊んでいいよ」という言い方をしますよね。でも、やる気がない子どもにとって「終わるまで」という終わりの見えないゴールは苦痛でしかありません。そこで使ってほしいのが、勉強をページではなく時間で区切るテクニックです。

その子の集中力がどれくらいもつか、親ならだいたい分かりますよね 。もし10分しか持たない子なら、あえて「10分たったら途中で強制終了」にするんです。子どものその日の体調や気分によって、10分すらキープするのが難しそうであれば、その日は1分に設定してもいい。それでストップウォッチで時間を計って1分たったら、たとえキリが悪くても「はい、おしまい! 休憩」と親が強制的にやめさせます。

――えっ! 途中でやめさせてしまっていいんですか?

石田さん いいんです。さすがに1分や10分じゃキリがよく終わらないから、子どもは「もうちょっとやりたいな」と思いますよね 。そこであえて切ることで、心理的に「もっとやりたい」という気持ちが引き出され、結果的に集中力が伸びていくんです。

考えてみてください 。ゲームや動画のとき、親は「1日30分まで」と時間で制限しますよね。「このステージをクリアするまでやっていいよ」とはあまり言わないはずです。なのに、なぜ勉強になるといきなり「このページをクリアするまでダメ」と分量のルールに変えてしまうのか。逆なんですよ。勉強に集中させたいなら、ゲームと同じように時間で区切って、ダレる前に気持ちよく終わらせるのがよいでしょう。

親は選択肢を出すだけ! 最も大切なルールは子どもが「自己決定」すること

――お話を伺っていると、子どものやる気や集中力の引き出し方には正解はなく、個性に応じた親の関わり方こそが大事なんだな、と実感します。

石田さん そうですね。そして、最も大切なルールは、子どもに自己決定権をもたせるということです。親が「これが正しい勉強のやり方だ」と決めたモデルを押しつけると、もしうまくいかなかったとき、子どもは「お母さんが決めた場所だから集中できないんだ」などと、親のせいにできてしまいます。言い訳ができる設定にしてはダメなんです。

勉強時間を計るためのタイマーだって、単に親が与えるのではなく、子供と一緒に買いに行って選ばせるほうが断然いい。そのほうが勉強などが長続きするという研究データがあるほど、自分で選ぶ、決定することの効用は大きいのです。勉強方法に限らず、服を選ぶのもそう。習い事や進学先を選ぶのもそう。あらゆる場面において、あくまでも決定するのは子どもというスタンスを貫いてほしいと思います。

――小学校低学年の小さな子どもでも、自分で決めさせて大丈夫でしょうか。

石田さん もちろんです。年齢が幼かったり、性格が控えめだったりして、「自分はこうしたい」という自己主張があまりない子の場合は、「AパターンとBパターン、どっちを試してみたい?」など、親が選択肢を用意して、子ども自身に「こっちにする」と選ばせましょう。あくまで決めるのは子ども。親はそのガイド役やナビゲーターに徹するのがよいかとと思います。

***

子どものやる気や集中力が出ないのは、必ずしも本人の気合が足りないからではありません。「家庭学習はこうあるべし」という大人の固定観念を一度手放し、「今日はいつどこで何の勉強をしようか?」とゲーム感覚でベストな環境を親子で一緒に探していくのがよいのではないでしょうか。

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お話を聞いたのは

石田勝紀 教育専門家

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。20歳で学習塾を始め、これまで4500人以上の生徒に対し、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱に指導。東洋経済オンラインの「ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?」は長期人気連載となり、累計1.2億PVを突破している。2016年からママを対象に「カフェスタイル勉強会〜Mama Cafe」を全国で主宰。年130回以上実施し、累計1.8万人のママから対面での相談を受けてきた。毎日配信している音声配信Voicyでは「Mama Cafeラジオ」を配信しフォロワーは2万人。
NHK『あさイチ』、フジテレビ『めざましテレビ』、日本テレビ『ZIP!』、TBS『あさチャン!』、『ガイアの夜明け』等、メディア出演多数。書籍は33冊出版。

この記事を書いたのは

中田綾美 ライター

成人までの人生を受験勉強にささげた結果、東京大学文学部卒業。その後なぜか弁護士になりたくて司法試験に挑戦するも、合格に至らないまま撤退。紆余曲折の末、2010年よりフリーライターの看板を掲げています。

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