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そもそも子どもにはモチベーションなんてない? 子どものいいところを見て!
Q:行き渋りまでは行かないまでも、朝の支度がダラダラしていたり、忘れ物が多かったり…。久々にノートを見たら、ちゃんと授業を聞いているのかわからないような書き方で、うちの子「中だるみ」しているんじゃないかって心配です。どうしたらいいでしょうか。
石田先生:そもそも子どもには、そのようなことに対して自主的に行動するモチベーションはないことが多いですね。
もしかしたら中だるみはお母さんのほうかもしれません。学年の初めのほうは、お子さんのことをしっかり見てあげなきゃ!ってがんばるけど、そのうち疲れてしまうのではないですかね? それで子どもをふと見たら…宿題やってないとか、ダラダラしているように見えるとか…。それで先々のことを考えて不安になってしまっているのかもしれません。
だから実は、最初から子どもはそのようなことにモチベーションはなかったということです(笑)。
もちろん、モチベーションを持ってやってくれるほうがいいに越したことはないけども、お母さんが自分が子どもの頃を思い出してみるとどうでしたか? モチベーション高くやっていたでしょうか。意外とそうでもなかったかもしれませんね。
モチベーションというのは、何か具体的な目標が見えてきた時に上がってくるものなのです。
石田先生:また、子どもががんばっているところを親が見ていないケースも多いです。家でダラダラしているからずっとダラダラしているように見えてしまいますが、子どもは学校や塾ではがんばっていたりします。子どもの家にいる時だけの姿で判断しないようにしましょう。
子どもを心配している親御さんのほとんどは、神経質になりすぎてしまっているところがあります。気持ちはわかりますが、細かいことまで見てしまって、マイナスしか見えないという傾向がありますから、そういう時こそ子どものいい面を探すようにしてください。
Q:具体的に親が心配したほうがいい成績の目安はありますか?
石田先生:学校の勉強が面白くないとか、やる気が出ないとか言っていても、学校のカラーテスト(※1)で平均して7〜8割以上とれていたら心配しなくて大丈夫です。基礎はできています。
※1)小学校で単元終了後に行われるテスト
また、チェックするのは国語と算数の成績のみ。そのほかの教科はだいたい後からでも間に合いますが、国語と算数は今の学年がわからないと次の学年がしんどくなっちゃいますし、中学に上がってからの成績にも響いてしまうので。
学校のカラーテストで平均して70点以下の成績の場合は、どこからわからなくなってしまっているのかを確認する必要があります。
また、ケアレスミスで丸がついていない問題は気にする必要はありません。わかっていて間違っているので、それは丸と思って判断してください。
焦って塾に入れるのはNG!やる気のない子を塾に入れても解決しません
Q:そもそも勉強する気がまったくない!という子どもにはどう対処したらよいのでしょうか。
石田先生:やらない・やりたくない原因はそれぞれ状況によって違いますから、なんでしないのか、やりたくないのかという原因をまずは探ってください。
最初はやっていたのにやらなくなってしまったのか、どのタイミングでやらなくなったのか、勉強の他に興味があることは何なのか、そして、学校での成績はどれくらいなのか。学校での成績が取れていたら、心配する必要はないですよ。
Q:「うちの子遅れているな」と判明した場合、追いつくために適切な対処法というのはあるのでしょうか?
石田先生:一番やっちゃいけないのが塾に入れること! やる気のない子を塾に入れたって、塾から「お宅のお子さんやる気がありません」って言われるだけでしょ。本来やる気にさせるのが塾の仕事でもあるけど、そういう塾に出会えるかどうかもわからないですよね。
通信教育なんてもってのほかです。どんどんテキストがたまっていくだけで、やるわけがないですから。
子どもの心が動かないと何をやらせてもダメなんですよね。そもそも勉強嫌いにさせられちゃっている場合もあるし。
たとえば、学校の先生がイヤだから勉強がイヤとか、親が押しつけてくるからイヤとか。精神年齢が幼くて、ゲームとか楽しいところにエネルギーを全部注いで使い果たしてしまっているとか。様々な状況が考えられますよね。
一般的には、親から押しつけられたから嫌いになったっているパターンが多いですよ。でも、押しつけなかったら勉強をやるのかって言うとそうでもない…。
勉強嫌いにさせてしまったらまずは雑談。子どもの“やる”タイミングを待つ
Q:親が押しつけて勉強嫌いにさせてしまった時の対処法はありますか?
石田先生:勉強嫌いにはいろんな理由がありますが、親がずっと子どもに与え続けて、親にやらされ続けて来た場合は、子どもの中で「親から言われるものは全部イヤなもの」と言う刷り込みが入っている場合があります。
そういう場合には、信頼関係を築くことから始めないといけません。雑談をして、勉強以外の話で信頼関係を作るステップを踏まないと、そのうち話も聞いてくれなくなってしまいます。
もし、少しでも子どもに干渉しすぎているかな?押しつけているかな?と思ったら、対応をちょっと変えてみるだけでいいんですよ。
基本的には育て方に良い悪いはなくて、愛情があればなんでもOK。もしうまくいかなくなってきた時は、何か原因があるだろうから、ちょっとやり方を変えてみればいいんです。
遅れを取り戻すのは簡単!小学校の学習内容は3ヶ月あれば大丈夫
Q:学年後半になって、できないこと・わからない単元が判明した場合、リカバーはできますか?
石田先生:もちろん! 小学校の勉強なんてたいしたことありません。3ヶ月あれば一年分の学習はできます。
まずは、子どもに「このくらいの遅れはたいしたことない」と思わせてあげること。そして具体的な対策や学習ツールを挙げて「こうすると短期間で勉強ができるようになるんだけど、どうする?」って聞いてあげてください。
押しつけたらダメですよ。その時「やらない」って答えても、一生やりたくないと言っているわけじゃないから、またタイミングをみて聞けばいいんです。子どもの気持ちは毎日変わりますからね。
つまずきに気づいた時にやるドリルでおすすめなのが、新興出版社から出ている「カスタムアイスタディ」です。1cmくらいの厚さで、5教科の1年分が全部おさらいできます。教科書会社が作っているから、エッセンスが全部集約されていて簡単に終わります。
まずはつまずいている学年の、前の学年のものから始めるといいと思います。そこから積み上げると早いわけです。
以前相談に来た方も、2学年分くらいの学習単元の遅れがあったんですが、このドリルですぐに遅れていた部分を取り戻して、今では「100点連発しています」という報告を受けています。
子どもがやるって言っていないのに、勝手に親がやらせようとするとうまくいきません。子どもが「やる!」と言ったら、簡単で薄い問題集からガンガンさせて成功体験を重ねれば、やればできるという刷り込みができますから。
ほとんどの子の場合、できない原因はやる気がないことですからね。
子どもがやるべきことを自発的にやる仕組みがあります!
Q:日本全国の親御さんが、子どもが自分からやるべきことをやってくれるようになったら・・・と願っていますが、そんな魔法のようなことはできますか?
石田先生:ありますよ。やる気のない子を言葉で説得しようとしても無理! 親子関係っていうだけで無理なんです。
でも、子どもは全員できるようになりたいと思ってます。「できる状態とできない状態、どっちがいい?」って聞くと100%「できるほうがいい」って答えますよ。だけど、今までそこへ到達するやり方が間違ってしまっていただけなんです。
たとえば、漢字も書いて覚えちゃダメ! 音読も、どんな効果があるか説明されないままやらされているでしょ。だからみんなやっつけ仕事になっちゃってるんです。
勉強って、何か一つやったところで、できるようになった感覚ってないでしょう。ゲームみたいに「レベルが上がりました」って“見える化“されてない。自分の成長を見えるようにするのが『子ども手帳』です。
手帳じゃなくても、グラフとかノートなどなんでもいいから、漢字を10個覚えたら10ポイントとか、自分のやったことがポイントになって、それが目に見えて成長していると感じられればいいわけです。
バトルゲームでも、ただ出てくる敵をバンバン倒していくだけじゃそのうち飽きるでしょう。数値化されてレベルがアップしたり、ステージが上がっていったりするからやる気が起こってくる。
勉強して頭が良くなっていることを数字で見せてあげるようにしてみてください。仕組み作りのポイントは、やらせることばかり考えずに、どうしたら子どもがやりたくなるかを考えることです。
ゲーム感覚で勉強ができるドリルって、今たくさんありますよね。『ポケモンずかんドリル』もそう。やればやるほどポケモンが集まって最後に図鑑が完成する。
文章問題だったら、太郎くんと花子さんじゃなくて、鬼滅の刃の炭治郎と禰豆子に変えてもいいし、鉄道が好きな子だったら、京浜東北線と東海道線がどうとかやったら目がキラキラしちゃうよね。
子どもがハマる要素はゲーム、クイズ、なぞなぞ! 頭がいい子たちって、勉強をゲームだと思っているからね。この要素を取り入れてみてください。
先取り学習は賛否両論!学習は復習が基本です
Q:逆に、子どもの精神年齢が高く、勉強が簡単で退屈してしまう子には、先取りをさせてもよいのでしょうか。
石田先生:基本的には、先取り学習をしてもいいのは半年先までです。それ以上はやっても忘れるし、早すぎると考えています。
小学校のうちは、次に授業で習うものを少しお家でやっておく程度の予習があってもいいとは思います。そうすると子どもの心にゆとりが生まれるでしょう。親がちょっとアドバイスするくらいでもできるようなドリルを使って、半年先くらいまでやっておくだけでも、かなりのアドバンテージがありますから。
また、学校の授業のペースについていけない子の場合も、予習すると授業が復習になっていいと思います。一度わからなくなってしまうと、思い込みで「できない」とシャッターを下ろしてしまうことがありますので、そういう子は、先に学習しておくと授業の受け方が変わるので予習が有効です。
とはいえ、学習の基本は予習よりも復習です。復習中心のほうが伸びますよ!
子どもに本来そなわっている力を信じて、引き出して
ここまで石田先生のお話を伺ってきましたが、先生のこんな言葉が印象的でした。
「ゲームに中だるみってありますか? ないでしょ。ゲームは楽しいからなんですよ。それと同じで、やりたくなるような方法を考えてあげればいいだけなんです。人間は生まれながらにやり抜く力“非認知能力”を備えています。だから楽しいことは頑張れるし、やり続けられる。それを勉強にも入れてあげること。子どもは本来、学ぶことが好きですよ」
我々大人が、「やり方を間違えている」「やらせようとしている」「押し付けている」・・・そんなところから変わらなければいけませんね。
子どもの表面的な行動を見るのではなく、「どうやったらうちの子のやる気が出るのか」と心の状態を観察し、楽しくなる工夫を日頃から考えていきたいと思いました。
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石田先生の著書はこちら
子どもの「読解力」がすぐ伸びる魔法の声かけ
お話を伺ったのは
NHKあさイチ、フジテレビ「めざましテレビ」、日テレ「ZIP!」、TBS「あさチャン!」、「ガイアの夜明け」等、メディア出演多数。書籍は25冊出版。
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石田勝紀先生の公式HPは>こちら
文・構成/鬼石有紀