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学校単位ではない、フランスのサマーキャンプの仕組み

夏休みが2か月と長いフランスでは、多くの子どもたちがサマーキャンプに行きます。企業では従業員のために、地域では住民のために、それぞれの保養所(コロニー)を子ども向けに開放してくれるのです。
地域のコロニーは、地域の学校が集まって、一つの場所に行きます。年齢ごとに分かれており、3歳から6歳の未就学児、そして6歳から11歳の小学生グループ(フランスの小学校は5年生まで)でわかれ、行き先を選べる仕組みになっています。
今年、私は3人の子どもたちをこのコロニーに登録することにしました。
5歳の次女は幼稚園グループで4泊5日、長男と長女は10泊11日です。
次女の年齢層は選択肢がひとつだけでしたが、上のふたりには「海」「森」「山」といった選択肢がありました。「やっぱり夏は海がいいよね」と子どもたちと話し合い、申し込みの日を迎えました。
しかし、ここで私は大きなミスを犯してしまいます。
申し込み初日で満席に……予定表は「ナシ」

それは、申し込み開始の「翌日」に区役所へ行ったことでした。
「海のコースは、初日の段階で全員埋まりました」
窓口で淡々とそう告げられたのです。
いつもは登録期限や書類の締め切りなんて存在しないかのように、のんびり生きているフランス人。こういうときだけ、恐ろしいほどの初動の速さを見せるのか……。
結局、日程をずらして「森」に行くタイプに変更することを告げると、また驚くことが起きました。

登録後に渡されたのは、ペラペラの「持ち物リスト」一枚だけだったのです。
当日の予定表がありません。「当日のスケジュールはどうなっているのですか?」と尋ねると、担当者は驚いて目を上げました。
「そんなもの、決まっていませんよ」
そこで脳裏をよぎったのは、日本にいた頃に長男が参加したサッカーの夏合宿のことでした。
あのときは申し込みの前から、何時に何をやるのか、予定が決まっていました。持ち物も、予定に沿って必要なものが書かれていたと思います。
そうだ、持ち物リストを見よう。そこから予定がわかるはず。そう思って次女のを見てみると、4泊5日の滞在に対してTシャツや靴下の必要枚数が明らかに合っていません。
それらは、長男・長女のリストをコピー&ペーストして作られたものでした。
ハプニングだらけの国では「その場で決める方が合理的」

このようにフランスでは、直前にならないと、時には当日にならないと――何をやるのかわからないということがよくあります。
これは、子どもに限った話ではありません。以前、友人の家に数日間泊まったときもそうでした。
事前に何をやるかなど誰も決めず、当日の朝に起きてコーヒーを飲みながら「さて、今日は何をしようか」と話し合っていたのでした。
どうして、前もって決めておかないのか。それは怠慢というよりも、この国の決定的な事情(システム)が関係しているように思えます。
バスは前触れもなく運休し、電車や道路の工事は日本のように深夜ではなく日中に行われるため、いつもどこか乱れています。ストライキもあります。

公共交通機関だけではありません。友人たちと「船に乗ろうか」と朝に話して決まり、予約の電話を入れたときのこと。「船が急に壊れてしまい、2日間は乗れない」と返されました。
別に前もって決めておいた予定ではなかったので、「そっか、じゃあ何か別のことをしよう」という流れになりました。
不可抗力が多すぎて、そのときにならないと決められない。フランスではフレキシブルに予定を組む方が、むしろ合理的なのです。
日本の事前準備が、親にくれた「安心」

ただ、自分のことならともかく、子どもが現地で何をしているのかはやはり気になります。
その答えは、思いがけない形で知ることになりました。
サマーキャンプの期間中、毎日夕方に長男からスマートフォンに電話がかかってきたのです。
親と話す時間が設けられているらしく、彼から「明日はマルシェに行くらしい」「明日はプールらしい」と、予定を聞かされることになりました。
ママであることを忘れて過ごしたかったな……と思いつつも、とりあえず何をやっているか知ることができたので、ひと安心。ちなみに長女は友だちと遊ぶのに忙しく、「別にママと話す必要がない」とのことで、一度話したきりでした。

あらかじめ準備する日本と、当日に柔軟に決めていくフランス。
どちらが楽かといえば、負担の総量は同じなのだと思います。事前準備をがんばるか、土壇場で頭を回転させるかの違いでしかありません。
「まあ、当日決めればいいか」とゆったり構えられたら楽だろうと思いつつも、やっぱり事前の計画に守られていたいと感じてしまう。
日本のように「今子どもたちが何をやっているか」が可視化されている状態は、親に「安心感」を与えてくれていたのでしょう。
異国の風に吹かれながらも、私の深い部分には、しっかりと描かれた地図を必要とする日本人としての回路が残っているようでした。
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この記事を書いたのは
三菱UFJ銀行の法人営業、ユーザベースのセールス&マーケティングを経て独立。ビジネスやマネーの取材記事から、恋愛小説まで幅広く執筆。2025年よりフランスに拠点を移し、フランス企業の日本進出支援(ローカライズ)やフィクションの翻訳にも携わる。3児の母。
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