ファイナンシャルプランナーが子育て中のパパママに必須な「お金」の話を、絵本を例にとりながらわかりやすく解説していくリレー連載。第10回は「めいちゃんの500円玉」という絵本を通して、使った後まで考えてどのようにお金を使うか、また価値とは何かについて考えます。子どもと一緒に絵本を読むことで、お金の原点を学ぶことができます。
使い方を考える中で価値感を育む
こんにちは。キッズ・マネー・ステーションの認定講師・ファイナンシャルプランナーの柴田千青です。今回ご紹介する「めいちゃんの500円玉」は1枚の500円玉を手にした女の子の話です。
「めいちゃんの500円玉」のあらすじ
いざ使ってみようとするとうまくいかなかったり、迷ったりいろいろなことが起きてきます。自分で考えて買うのって意外と難しい!何に使おうか考えながら、お金の使い方を知るだけでなく、大切なものもみつけた物語です。
作・絵/なかがわちひろ 1,400円+税(アリス館)
上手に使うってどういうことでしょう?
子どもに「上手にお金を使えるようになって欲しい」と親なら願うことだと思いますが、上手に使うってどういうことでしょう?
無駄遣いせず、必要なものだけ買うこと?
持っているおこづかいで足りなくならないよう、しっかり計算できること?
それともいつか使う時のために貯めていけること?
500円ってすごく大金というわけではないけれど、いろいろ買えそうな金額です。たまたま500円玉を手にいれた主人公のめいちゃんは、どう使おうかと考えていく中で様々な体験をしていきます。とても足りないよ、ということもあれば、値段を確認して足りると思ったのに税金がかかってびっくりしたり、500円全部使うとちょっと多すぎてしまうようなこともあるんだと気づいて使えなかったり・・・。
子ども向けのおこづかい講座やおこづかいゲームでも、まずは持っているお金で買いたいものが買えるかどうか・買うために足りなかったら少しずつ貯めていくといったことから教えていくことが多いです。だけど実際の買い物の時って、その場の金額が足りる・足りないだけじゃ決められない場合もあります。お金を上手に使っていくには、お金を払う時のことだけではなく、他にも考えていかなければならないこともあるのです。
お金を使った後のことも考える
ペットを買ったとしても、その後に飼うためには?
めいちゃんが買おうとするものの中にペットがありましたが、飼うには他にも買わなければならないものがあったり、買った後でも更にお金がかかったりしてきます。そのペットは500円で買えても、飼い育てていくにはもっとお金がかかってしまうのです。欲しいもの自体が買えても、その後どうなるか・どうしなければならないかも考えて使わなければなりませんね。お金を使った後のことまで考えるのも大切なことなのです。
安いペンと少し高いペン、どちらを買う?
値段が安くてもすぐ壊れてしまったり、維持費やメンテナンスにお金や手間がたくさんかかったりすることもあります。例えば講座中に使うペンですが、とりあえず安く本数揃えようと100均で買った本数の多いセットのインクはあっという間に出なくなり、書けませんと言われて慌てて買い直したことがありました。少し高かったけど使いやすさ吟味して買ったペンは先が乾くこともなく長いこと使い続けられています。
つい目先の金額につられてしまいがちですが、その場の金額が足りる・足りないだけじゃなく、使える期間の長さや買ったあとのことも考えて判断できる方がよりお金の使い方が上手ですよね。
お金では計れない価値もある
500円を払って買ったものではありませんが、めいちゃんが最終的に手にいれたものは、それがいくらか、その後どれくらいお金がかかるか、という点では計れない大切な存在でした。一連の出来事を通じて、それを手元におくのは大変だし、お金もかかることを知ってきましたが、いろいろと考えたうえで、そのときにもっと優先したいものを選んだのです。
そういった経験を通じて、物を手にいれて終わりではなく、今後どんな責任を持っていくのか、そして自分は何を大切にするのかといったことを考えることで、その人の価値観も形作られていくのではないでしょうか。
実体験を積むことで育もう!
めいちゃんはたった1回の500円玉の使い方で、多くの体験をし、たくさん考え、さまざまなことに気づきました。
実際の生活では1つのエピソードでこれほど多くのことを知ることはできないかもしれません。ですが、さまざまな場面でしっかり考え、1つ1つ決断していくことでお金の使い方も上手になるし、価値観を育んでいくことになります。
いろいろなパターンに出会い、そして考える機会を多く持てるよう、子どもにも実体験を積ませていけるといいと思います。
記事執筆
記事監修
「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。