乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「甘える子ども」の対応についてお話を伺いました。
Q:娘は、自分でできる着替えなどを「やって!」と言うことが。つい手伝ってしまうのですが、甘やかさないほうがいいのでしょうか?
A:「甘えられる」のはよいこと!丸ごと受け止めましょう
「自分でやりたい」という気持ちは、人が生まれながらにもっているもの。親の過干渉などで「やりたい」という芽をつまれない限り、多くのことに挑戦し、少しずつできるようになっていきます。親の役割は、子どもがやりたがっているとき、心のゆとりをもって応援すること。そして、子どもが「ちょっと甘えたいな」と思ったときは、その気持ちに応えていくことです。
「やって!」には喜んで応えてあげて
「自立」という言葉には「なんでも自分ひとりでできる」というイメージがあります。でも、「一度できるようになったことは、次から全部ひとりでやりなさい!」ということが自立を促すわけではありません。
子どもが「やりたい」と思っていることを、親が先回りしてするのはよくありません。子どもが自分の力で考えたり試してみたりする機会を奪うことになるからです。これを繰り返すと、なんでも与えられるのが当然になってしまい、子どもは「自分でやりたい」という意欲をなくしてしまいます。
でも、本当はできることを「やって!」というのは、「やりたい意欲」をなくしたからではありません。今日は疲れたからやりたくない、ちょっとおかあさんに構ってほしい……。子どもなりに、いろいろな理由があるのです。
ときには、子ども自身ではなく親に原因がある場合もあります。親が元気のない様子だったり上の空だったりすると、子どもはなんとかして親をケアしたいと思います。でも、まだ十分な言葉を持ち合わせていないため、「私のほうを見て!」という行動に出ることがあるのです。親に甘えることも、そういった行動のひとつです。
子どもが甘えて「やって!」と言ってきたときは、してあげて大丈夫です。それどころか、「喜んでやってあげます!」「これだけでいいの? もっと着たいものはない?」というくらいのつもりで対応してみてください(笑)。人は、求めているものを与えられると満足し、自立したくなります。甘えたとき、予想以上に応えてもらえれば、子どもは「もう十分……」と思い、次からは自分でやりたくなるはずです。
子どもを丸ごと受け止めることが自立につながる
つらいことや苦しいことがあったときに頑張れるのは、厳しく育てられた子ではありません。家であるがままの自分を受け止めてもらえている子のほうが、いざというときに打たれ強さや頑張る力を発揮できる、と心理学的にもいわれています。
「できる子」「頑張る子」だから愛されるのではなく、「ありのままの私」でも愛される。苦手なことがあっても、失敗しても、嫌われたりしない。こうした信頼感が、自立心のベースになります。だから、「やって!」と言われたことをやってあげるのは、自立の妨げにはなりません。むしろ、子どもの自立を助けることになるのです。
甘えることができるのは、相手を信頼しているから。子どもが甘えたい気持ちを表現できるのは、とてもよいことです。子どもにだって、いろいろあります。外で頑張っているときは、家で赤ちゃんにもどってもいい。親が甘えをしっかり受け止めてくれれば、子どもは、また頑張れるのです。
記事監修
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
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『めばえ』2月号 別冊and イラスト/小泉直子 構成/野口久美子
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