赤ちゃんのミルクを作るときには、湯冷ましが最適です。
生後半年、または、離乳食を与える前の赤ちゃんには、母乳かミルク以外のものは与えなくても大丈夫ですが、それ以上の月齢の赤ちゃんには、母乳やミルクの量が極端に減らないようにすれば、湯冷ましを与えても問題ありません。
そこでこの記事では、湯冷ましを赤ちゃんに飲ませるとどのような作用があるのか、また、湯冷ましの作り方などをご紹介します。
目次
赤ちゃんの飲み物に湯冷ましを使う意味は?
湯冷ましとは、水を沸騰させたお湯を冷ましたもののことをいいます。赤ちゃんが飲むミルクに使ったり、生後半年以上の赤ちゃんの水分補給として、湯冷ましを与えるとどのような作用があるのか、解説しましょう。
赤ちゃんにとって湯冷ましを飲むことは、2つの作用があると考えられます。
一つ目は、赤ちゃんの水分補給としての役割です。
新生児の体は、体重の約75~80パーセントが水分でできており、汗をかくのも大人の3倍ともいわれています。
そのことから、十分な水分が補給できていないと、赤ちゃんは脱水症状を起こしやすくなってしまうので、湯冷ましが役立ちます。
しかし、特に1歳未満の赤ちゃんには、母乳やミルクの量が減らない程度に湯冷ましやお茶を与えることが大切です。
湯冷ましやお茶を与えすぎると、母乳やミルクの量が減ってしまうことがあり、栄養が不足してしまう可能性もありますので、注意しましょう。
二つ目は、湯冷ましで便秘を解消できる点です。
赤ちゃんは水分不足により、便秘することがあります。こまめに湯冷ましを与えれば、カチカチの便をやわらかくして排出する効果があります。
ただし、湯冷ましに使う水や温度に注意が必要です。次の項では、どのような水が赤ちゃんの湯冷ましに適しているのかをご紹介しましょう。
水道水
赤ちゃんに与える湯冷ましをつくるときは、水道水がおすすめです。
日本の水道水は、安心して飲めるようにきちんと浄水されています。また、ほとんどの地域の水道水は軟水なので、赤ちゃんにも安心です。
ただし、そのまま与えるのはNG。10分以上しっかり沸騰させ、冷ましてから飲ませてあげてくださいね。
ミネラルウォーター
ミネラルウォーターには、「硬水」と呼ばれるミネラルの多い水と、「軟水」と呼ばれるミネラルの少ない水があります。赤ちゃんが飲んでも問題ない水は、加熱殺菌済みの「軟水」です。
赤ちゃんにミネラルウォーターを与える際には、必ず、ラベルに表示されている硬度やミネラルの量をチェックしましょう。硬度100mg/l未満が軟水と言われています。
浄水器
浄水器はコスパもよく、便利なアイテムですが、残留塩素や不純物を完全に取り除けていない場合もあります。
湯冷ましに使う場合には、水道水同様、しっかりと沸騰させてから冷まして、赤ちゃんに与えるようにしてください。
湯冷ましの作り方
一般的な湯冷ましの作り方をご紹介しましょう。
- やかんに水を入れ、強火にかけて、10分以上沸騰させます。このとき、ふたをせず、開けた状態で火にかけてください。
- 沸騰したお湯を、35~37℃程度の人肌に冷ませば完成です。
湯冷ましの作り方には、難しい工程はありませんが、注意したいことがあります。
以下に、やかんや電気ケトル、電気ポットなどを使う際のポイントや注意点を、解説していきます。
やかん・鍋
やかんや鍋で湯冷ましを作るときのポイントと注意点を解説しましょう。
沸騰させる時間は10分以上に
やかんや鍋を使って湯冷ましを作る場合は、必ず10分以上沸騰させてください。
10分以上沸騰させることで、水に含まれる有害物質である「トリハロメタン」をある程度除去でき、赤ちゃんに安全に飲ませることができるとされています。
ふたを取って沸騰させる
水道水には塩素が含まれています。それを取り除くために、やかんや鍋のふたは取って沸騰させましょう。
再沸騰はNG
やかんや鍋で加熱したお湯を、冷めてしまったからといって再度沸騰させるのはやめましょう。再び加熱すると、空気中の不純物を水が取り込んでしまう可能性があるからです。
電気ケトル
電気ケトルは、ケトルに入れた水が設定された温度になると止まります。
この機能はとても便利ですが、10分以上沸騰させることができないため、電気ケトルで沸かしたお湯は、赤ちゃんのための湯冷ましには適していません。
電気ポット
電気ポットも赤ちゃんの湯冷ましを作るのには向いていません。これは、電気ケトル同様、10分以上継続して沸騰させることができないためです。
ウォーターサーバー
ウォーターサーバーの水は、製造過程で殺菌や除菌処理が済んでいるため、湯冷ましとして使うことは可能です。
ただし、ウォーターサーバーのボトルの差し込み口や注ぎ口、パイプなどが清潔に保たれている場合に限ります。ウォーターサーバーの水を使うときには、サーバー自体のメンテナンスをしっかり行うようにしてください。
湯冷ましの温度の適温は?
赤ちゃんが飲む湯冷ましには、適した温度があります。湯冷ましとして飲ませるとき、ミルク、お茶、それぞれの適温を解説します。
そのまま飲ませるとき
湯冷ましをそのまま飲ませる場合は、37℃程度の人肌が適温とされています。あまり冷たいものだと、赤ちゃんの胃腸に負担がかかってしまい、下痢や低体温を起こすことがあります。
また、反対に熱すぎるとやけどをしてしまうので、人肌の温度を守るようにしましょう。
ミルク
ミルクを作るときには、まず、沸騰して少し冷ましたお湯(70℃以上)を使って粉ミルクを溶かします。
このお湯の温度は、粉ミルクから検出されることもある極微量のサカザキ菌やサルモネラ菌を殺菌できるためです。
しかし、沸騰直後の熱すぎるお湯だと、ミルクの栄養成分を壊してしまう可能性があるため、一度沸騰して少し冷ましたお湯(70℃以上)を使用しましょう。
赤ちゃんに飲ませるときには、湯冷ましなどを足し、37℃くらいに冷まして飲ませてあげてくださいね。
お茶
赤ちゃんにお茶を飲ませる場合も、37℃程度の人肌が適温です。冷たいものだと、お腹をこわすこともあるので、湯冷ましで薄めて温度調節するとよいでしょう。
冷やすときに氷を直接入れないこと
湯冷ましを早く適温にするため、お湯に氷を直接入れればいいのでは、と考える人もいるかもしれません。しかし、それはしないようにしてください。
例えば、製氷機や、冷蔵庫の自動製氷機能で作られた氷は、冷蔵庫内の雑菌などが入っている可能性もあり、氷を作る水も、有害物質などが含まれている場合があるため、赤ちゃんには安全性が保証できません。
ただし、容器の外側から氷で冷やすのであればOKです。
湯冷まし入れ・容器の選び方と注意点
湯冷ましを入れる容器は、どのようなものがよいのでしょうか。選び方と注意したいポイントをご紹介します。
選び方
湯冷ましを入れる容器は、
・熱湯をそのまま入れられる
・シンプルな構造
・衛生的に使えるもの
がおすすめです。たとえば、魔法瓶や密閉できる耐熱ガラス瓶などがよいでしょう。また、外出先にも湯冷ましを持っていくのなら、携帯できるサイズのものを選ぶといいですね。
注意点
湯冷ましを入れる容器として、ペットボトルや飲み口にパッキンがついているものは避けたほうが無難です。
ペットボトルは、熱湯を入れると溶けてしまう可能性があります。また、飲み口にパッキンがついているボトルは、パッキン部分に汚れや菌がたまりやすく、洗うときに手間がかかるためです。
構造が単純なボトルを使えば、しっかり洗えて消毒もしやすく、清潔を保てますよ。
湯冷ましを使ったミルクの作り方
湯冷ましを使ったミルクの作り方をお教えしましょう。
用意するもの
・やかん
・水
・粉ミルク
・哺乳瓶
・湯冷まし
作り方
- 哺乳瓶に、粉ミルクを表示どおりに入れます。
- やかんに水を入れ、強火にかけ、10分以上沸騰させます。
- 沸騰させたお湯を70℃まで冷まし、哺乳瓶にできあがりの2/3の量まで注ぎます。
- 哺乳瓶にふたをつけて、軽く振りながら粉ミルクを溶かします。
- 粉ミルクが溶けたら、湯冷ましをできあがりの量まで加えます。
- 37℃程度に冷ましたらできあがりです。
ミルクを作るときには、哺乳瓶や乳首、計量スプーンなどの使う道具を消毒したものを使うようにしましょう。
湯冷ましを使ったお茶の作り方
湯冷ましを使ったお茶は、どのように作ればよいのでしょうか。ここでは、麦茶の作り方をご紹介します。
用意するもの
・やかん
・水
・煮出しタイプの麦茶パック
・湯冷まし
作り方
- やかんに水、煮出しタイプの麦茶パックを入れ、強火にかけ、10分以上沸騰させます。
- 沸騰したら、少し冷ましましょう。
- 作った麦茶を、湯冷ましで3倍に薄めれば完成です。
麦茶パックは、水出しタイプを使うのは避けてください。ベビー用の煮出しパックを使うと、味もマイルドなので赤ちゃんにも安心して使えますよ。
湯冷ましの保存法・保存期間
作った湯冷ましは、保存することができるのでしょうか。その方法や期間を解説します。
常温
湯冷ましを常温で保存するときには、涼しいところに置いておきましょう。保存期間は、1日以内です。湯冷ましは、塩素が除去され、雑菌が繁殖しやすいので、1日で使い切るようにしてください。
冷蔵庫
湯冷ましを冷蔵庫で保存する場合の保存期間は、2日〜3日といわれています。
しかしこれは、あくまでも目安としてください。衛生面のことも考え、赤ちゃんに与える場合は、できるだけ24時間以内のものを与えるようにしましょう。
湯冷ましを上手に活用しよう!
湯冷ましは、沸騰させることで殺菌や塩素が軽減し、赤ちゃんに安心して与えられます。赤ちゃんの水分補給や、ミルク、お茶作りなど、上手に湯冷ましを活用しましょう。
記事監修
河井恵美
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。
文・構成/HugKum編集部