お手伝いをするとおこづかいがもらえる
みなさん、こんにちは。
料理研究家の行正り香です。
新しい年が始まってしばらくたちましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回のお話は、「お手伝いとおこづかい」がテーマです。年末年始の冬休み、大掃除やお正月の準備など、おうちのお手伝いをがんばった子供たちも多いと思いますが、ちょっと変わった行正家のお手伝いシステムについてお話しましょう。
お手伝いをしたら100円が行正流
我が家の娘たちにも、小さい頃からお手伝いをしてもらっています。そして、我が家では、お手伝いをすると、それに対しておこづかいを与える仕組みにしています。今もその形は続いているのですが、娘たちが小さい頃は、部屋のお掃除をしたら100円、お皿を洗ったら100円、そんな具合にお手伝いをしてもらっていました(今は、娘たちも大きくなり払う金額も増えましたが…)。
きっと、読者の方のなかには、こういう形のお手伝いに抵抗を感じる人もいらっしゃると思います。お手伝いは無償で善意の心でやるものよ!そんな声も聞こえてきそうです。
お手伝いを報酬制にした理由
しかし、私は、おうちでのお手伝いを「仕事」だと捉え、娘たちが社会に出るための予行練習だと考えていました。18歳で独り立ちができるように、社会で生きていくために必要なスキルを身につけてほしくて。お家でのお手伝いは、仕事とはどういうものかを学ぶ「お仕事の勉強」だと娘たちにも話してきました。
だから娘たちには、決まったおこづかいを渡す習慣はありません。おこづかいが欲しかったら、自分で家の中でお手伝いを見つけて、仕事として稼がなければいけないのです。
お手伝い=仕事という意識を親子で共有
娘たちには、あらゆるお手伝いを小さい頃からやってもらいました。部屋の掃除、トイレ掃除、お風呂掃除、机の整理、買い物、お料理など、挙げればきりがありません。今は、娘たちも大きくなったので、私の仕事のリサーチや、イラストの制作、家族のアルバムづくりなんかまで、お手伝いしてもらっています。ほかにも、私がやっている英語教室でも先生役として手伝ってもらっていますし、英語アプリ「カラオケEnglish」を作るときは、アイデアもいっぱいもらいました。
仕事としてお願いするためのプライスリスト
こうしたお手伝いに対して、ひとつひとつプライスリストを作り、何をどれだけお手伝いしたのか、いくら稼いだのかが分かるようになっているのです。お手伝いには、掃除・片付けなどの整理整頓のお仕事、料理のようなクリエイティブな仕事、買い物などのメンテナンスのお仕事などいろいろありますが、その内容によってもおこづかいの金額は異なります。
「お掃除お願いできますか」と依頼する
もちろん、こうしたお手伝いは、行正家ではあくまでも“お仕事”なので、その出来栄えもちゃんと評価されます。言ってみれば、私が雇い主で、娘たちは従業員という関係。そんな感覚で、おうちのお手伝いをやってもらっています。だから、娘たちにお手伝いをしてほしいときも、「お掃除やって!」とか「お皿洗っておいて!」といった言い方はしません。あくまでも“お仕事”なのですから、親子でも「お掃除をお願いできますか?」と、ちゃんと依頼をするんですよ。
親が楽をしたいという発想はやめる
ちなみに、私が雇い主ですが、“自分が楽をしたい”という発想で、娘たちにお手伝いをお願いするは、やめようと決めています。そもそも、こんなお手伝いの仕組みをつくっているのも、私が楽をしたいのではなく、娘たちに社会で生きていく力を身につけたり、仕事とはどういうものかを知ってほしいから。そこは、忘れたくないなと思いながら、他にどんなお仕事をお願いしようかな?って考えています。
お手伝いで稼いだお金を使うことで、社会のしくみを知る
このような我が家のお手伝いの仕組みですが、娘たち、結構な金額を稼ぎます。といっても、我が家では洋服も、文房具も、お友達と遊びにいく時に必要なおこづかいも、必要なものはすべて、自分のおこづかいの中でやりくりする決まり。だから、“友達とディズニーランドに行きたい”と思ったら、かなり働かなければいけません(笑)。
買い物で失敗…それも必要な経験
こんな仕組みで、おこづかいを稼いできた娘たちですが、ある日、これを続けてきてよかったなと思えることがありました。
それは、娘たちが小学校高学年のとき。たまたま2人一緒に黒いTシャツを買ってきたのですが、すでに似たようなものを持っていたのです。それに気づいた彼女たちは、「しまった…」と思ったのでしょうね。娘たちは、返品しようかどうか迷っているときに、私のところに相談にきて、「レシートを持っていけば返品できるの?」と聞いてきたのです。
私は、それを聞いて、こういう経験こそ、子供のうちにやらせておきたいことだなと思いました。小学生がレシートを持って返品に行くのは、子ども自身も恥ずかしかったと思いますが、社会にそういう仕組みがあることを、体験として学んでおくことはとても大切です。
お手伝いをやる仕組みづくりを考えよう
お手伝いのあるべき姿としては、おこづかいをもらわず、自分から進んで誰かのために手伝えることが理想だと思います。
しかし、現実はどうでしょうか。多くの子供たちは、自分から進んで動ける子は少ないですし、親が「やりなさい」と言ったところで、やらない子が多いのではないでしょうか。だからこそ、親子で「お手伝いをやる仕組み」をつくることが、私は大事だと思ってきました(ちなみに、報酬制でスタートしたお手伝いですが、成長した娘たちは、仕事として家事を依頼しないときでも、体が自然に動くようにもなりました)。
お金や世の中の仕組みを知って欲しいという狙いもあり、私はお手伝いとおこづかいの組み合わせを選びました。まだ子供が小さいうちは、「お手伝いをしたら、見たい動画を1回見てもいいよ」というような形でもいいと思います。
子供たちは、いつか必ず大人になって、社会に出ていかなければなりません。その時に、どんなスキルを持っていてほしいのか、それを身につけるために、日々のお手伝いを考えてみるのも良いと思います。
記事執筆
料理研究家。福岡市出身。高校時代にアメリカに留学後、カリフォルニア大学バークレー校の政治学部を卒業。帰国して大手広告代理店に勤務しながら料理本を出版。退職後は「なるほど!エージェント」を立ち上げ、料理家としても、テレビや雑誌などで幅広く活躍中。現在は英話学習アプリ開発「カラオケEnglish」なども手がける。『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(ともに講談社)など、著書は50冊以上。また、献立づくりの悩みを解決するアプリ「今夜の献立、どうしよう?」でレシピ提案やコラムや料理のコツを動画で配信している。
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撮影/平林直己 取材・文/神谷加代