健やかな生活のために欠かせない入浴。
でも、入るのを嫌がったり、洗うときに泣いたりと子どもとの入浴はなかなか一筋縄ではいかず、苦労をしているママ、パパも多いのでは? 親子の「お風呂タイム」をもっと楽しくする、入浴にまつわるいろんな情報をお届けします。
お風呂は親子の大切なコミュニケーションタイム
一日の汚れをさっぱり洗い流してくれるお風呂。その効果は「体をキレイにする」だけではありません。入浴は、とても大切な「親子のコミュニケーションの時間」でもあります。
お風呂は視覚的にも聴覚的にも、余計なものがない閉ざされた空間です。そのような中では、親子で向き合って話したり遊んだりと、他の場所ではできない親密なコミュニケーションが可能になるのです。
裸のつきあいを大切に
お風呂に入るときには裸になりますが、人は服で体を覆わない、無防備な状態になると、ありのままの自分が出やすくなると言われています。
1・2・3歳ではまだ実感はわきにくいですが、今後、年齢が進むにつれて、普段じっくり話せなくなっても、お風呂ならその日あったことや素直な気持ちを話せることがあります。
親子入浴にはお互いに理解を深める効果があるので、子どもが小さい頃から大切にしていきたい習慣です。
「親子のお風呂タイム」の効果をアップ!
「親子入浴」の効果をさらに高めるために、次の3つのことを意識してみましょう
❶ 肌で触れ合う
素手で優しくさすってもらうと、脳は体から刺激を受け、「この人は守ってくれる人」だと認識して、親への愛着を形成していきます。1・2・3歳の時期は、肌で触れ合うことが一番のコミュニケーションです。
❷ 体で感じる
湯船に浸かると、全身の皮膚で水の動きを感じることができます。また、息を吸うと体が少し軽くなり、吐くと少し沈むなど、浮力を感じることもできます。体への刺激に敏感になる経験が、成長とともに自分の体をコントロールする能力を高めることにつながります。
❸ よく見る
幼児期になると、赤ちゃんの頃に比べて、知らないうちにケガをしていたりすることも多くなります。入浴で裸になったときに、傷、肌荒れなど、全身の状態を観察しましょう。
お風呂の効果を高める!快適な入り方
どのようにお風呂に入れば親子入浴の効果がより高まるのか、さまざまな角度からご紹介します。また、お風呂を嫌がる子どもに、ママ、パパたちが日ごろから工夫していることを集めてみました。
手順やコツでお風呂の時間が快適に
浴室に入ってすぐ体を洗うよりも、最初に湯船に浸かってから洗ったほうが、汚れが落ちやすくなります。とはいえ、あたたかいお湯の中にいきなり入ると血圧が急に上がってしまうので、手足、体の順でかけ湯をしてから湯船に入りましょう。
体を洗う際も、心と体の触れ合いを大切にするといいでしょう。たっぷりの泡で全身をなでるように洗いながら、「元気なおなかだね」「足大きくなったねぇ」「おててもぴっかぴかにしようね」など声をかけると、さらに楽しい時間になります。
お風呂上がりに湯冷めしないよう、バスタオルや着替え類は入る前に準備しておくこと。幼児用のバスローブを活用するのもいいですね。
お湯の温度は38~40℃を目安に、子どもの感覚に合わせて設定をしましょう。半分程度お湯がたまったら、残りはシャワーを使ってためると、浴室の温度が上がり、入浴時に寒くないのでおすすめです。
子どもの皮膚は大人よりも薄いので敏感です。また、体温調節の仕組みも未熟なため、熱を溜めやすい傾向があります。長い時間湯船に浸かっているとのぼせてしまうので注意しましょう。長くても10分程度が目安です。
夜にお風呂に入ることが多いなら、照明は白っぽいものよりオレンジ系のものがおすすめです。リラックス効果が高まり、快適な睡眠につながります。夜に白っぽい照明を浴びると脳が覚醒し、安眠の妨げになるのです。
● 水てっぽうを使って遊んでいます。息子と2人で入るときは壁に向かって打って、パパと3人で入るときは、私かパパのどちらかが怪獣役をします。息子は大喜びです!(2歳・男の子)
● 「ベビーブック」のふろくについていたシャワーバケツからお湯を流して遊んでいるうちに、顔にお湯がかかっても平気になりました。以前は頭を洗うといつも泣いていたので、とても助かっています。(2歳・男の子)
● お気に入りのキャラクターの指人形をお風呂専用にして、かくれんぼ遊びをしています。子どもが体の後ろに隠して、私は「もういいかい?」と探します。ばればれですがいつも楽しそうです。(2歳・女の子)
● 2歳の次女とはおもちゃで一緒に遊んでいます。4歳の長女は今日あった出来事を話したり、空想の話、しりとりで盛り上がっています。(4歳&2歳・女の子)
● 大声で歌うことにハマっています。声が響くので楽しいみたいです。(3歳・女の子)
● 最近背中を泡でごしごし洗ってくれるようになり、うれしいし気持ちいいです。息子もとてもうれしそう!(3歳・男の子)
● お風呂に入るのを嫌がるときは、大好きなアンパンマンのおもちゃを用意して「お風呂でアンパンマンと遊ぼうよ」と誘うと嫌がらずに入ってくれます!(2歳・男の子)
楽しく遊んでお風呂で知育!
親子での入浴タイムは、子どもと向き合うことができるので、知育にぴったり。気軽にできるものから、楽しみながら取り入れてみましょう。
発達に合わせて お風呂タイムを活用しよう
お風呂では誘惑されるものがあまりないので、同じ遊びでもより集中して取り組むことができます。幼児期は遊ぶこと自体が脳の発達につながるので、お風呂タイムを活用して親子でたっぷり遊びましょう。
発達に合わせて遊び方を変化させていくことも大切です。0・1・2歳は愛着形成において重要な時期です。手遊びをしたり体に触れる遊びをしたり、抱っこして湯船に体を浮かべてあげるなど、親子の触れ合いを重視する遊びがいいでしょう。
3歳前後からは視覚情報も有効です。「ひらがな」「数字」などのお風呂ポスターを壁に貼ると、他に見るものがない環境なので、興味をもつきっかけになるでしょう
毎日、湯船から出る前に数を数えます。数の目安は「年齢×10」。毎日続けているとだんだん子どもも一緒に声を出すようになります。数を知り、興味をもつきっかけになるでしょう。
お風呂の壁に描けるおふろクレヨンを使うと、ダイナミックにお絵描きを楽しむことができるので、普段あまりお絵描きをしない子も楽しく取り組むことができます。年齢に合わせて、文字や数字を書いて遊ぶのもいいでしょう。
いろんな種類のおもちゃを湯船に入れて、浮かぶか沈むかを試したり、ペットボトルにお湯を入れて沈めてみるなど、水で遊ぶことで、楽しく「浮力」を体験できます。水の不思議を知ることが、物理の法則を学ぶ第一歩になるのです。
家の中で、お風呂は事故の起きやすい場所です。幼児の事故防止のため、日ごろから安全対策を心がけましょう。
目を離さない!
子どもは、一瞬の隙に、音を立てずに溺れてしまうことがあります。わずかな時間でも子どもから目を離さないように注意しましょう。親が髪を洗っている間は、子どもを湯船から出しておくこと。わずかな瞬間に大切なわが子を危険にさらさないよう、日ごろから注意しましょう。
残り湯に要注意!
気づかないうちに子どもが浴室に入ってしまい、浴槽をのぞき込もうとして転落して、溺れることがあります。入浴後は水を抜くように心がけましょう。子どもはわずか10センチの深さの水でも溺れる恐れがあります。災害対策で浴槽に水をためる場合は、浴室の扉に鍵を掛けましょう。
記事監修
下村 義弘
運動機能や光環境の基礎的研究、自動車関連や医療・福祉機器などの分野で研究を行う。主な著書に『人間科学の百科事典』(共著/丸善出版)
濱田 結子
東京ガスが生活者の立場から暮らしのあり方を考え、研究発信を行うために1986年に設立した社内シンクタンク「東京ガス株式会社 都市生活研究所」の主任研究員。
『ベビーブック』2020年1月号 別冊付録『café BB』 イラスト/オブチミホ デザイン/平野 晶 文/洪 愛舜 構成/童夢